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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
2章「独りの幸せ」
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第7話「一夜限りの戯れ」




娯楽大国メドルーナ。


お祭りでもあるのかなってくらい賑わってる。

建物としては宿屋が多くて、国の中心ほど娯楽?のお店が目に付くようになる。


夜なのにここはきっと昼よりも明るくて、なんか幻想的で。


ソフィーは小さな子供みたいにはしゃいで走っていってしまう。



「はいいらっしゃい!いらっしゃい!!今夜の見せ物は豪華だよー!」

「そこのお兄さん!ウチで食べいきなよ!メドルーナで一番安いよ!」

「お嬢さーん甘い物いかがぁ?」


1本の道を歩くだけで両脇からぜひうちの店にと声をかけられる。



「チャド。ソフィーが1人でどこか行っちゃう」


「1人で歩かせるにはちょっと不安だねぃ…」


チャドも初めて来たから、周りをキョロキョロと見回してる。

ワクワクというよりはソフィーを探してくれてる。


「見つけた。甘味に釣られたみたいだねぃ」


チャドの指さした方向へ行くと



「ライヴァンの雲飴~!ライヴァンの雲飴はいかが~!ゴルゴラの騎士剣クッキーもあるよ~!」


「すっごい…全部欲しくなっちゃうよ!」


「だめ。勝手に先行かないで」


「あ、キャル!見てよこれ!」


ソフィーが目を輝かせて私に見るよう促したのは陳列されたお菓子の数々。


ライヴァンの雨を飴に…白い綿菓子に水色の飴がたくさんくっ付いてる…謎のお菓子。

ゴルゴラの騎士剣…?でもゴルゴラといえばで剣が思いつくのは分かる。生地の色を使い分けて焼かれた大きなクッキー。


他にはハートの…


「失礼。この店のお菓子全部買わせていただこうかしら。包んで頂戴」


「ほ、本当ですかぁっ!?毎度ありぃ!!」


私の視界を塞ぐように目の前に立ったのは…巨大な…


「ドレスだった」


「あらぁお嬢さんお菓子選んでたのぉ?ごめんなさいねぇこんな1つ6ゴールド程度のお菓子、どれかと言わず好きなだけ買えばいいのに…オーッホッホッホ!」


下半身部分の膨らみが大きすぎる変なドレス。

色は黄色…歩きにくそう。

そして声の主は


「何かしらぁ?恨むんならお金を持たない貧乏な生まれの自分を恨みなさいよねぇ」


厚化粧が過ぎるおばさんだった。

首を境に肌の色がハッキリと分かれてる。


「肌が白くて珍しいなと思ったんです」


「そう?そうよねぇ。美しいわよねぇ」


「そうかもしれませんね。頭がお饅頭みたいで」


「今なんて!?」


買い占めおばさんの声が変わった。

裏声で気取ってたものが、素の低い声に。

そこにやってきたのは


「ママぁ早くしてよぉ~もおおおおおおお!」


ゴルゴラの戦場で聞いたような、大人の男の低い声。

貴族を思わせる服装に包まれた巨大な飴玉…みたいな男。

どうやったらこんな風に太れるんだろう。

背中まで丸くて、顔は腫れてるように見える。

膨らんだ頬に圧迫されて目は小さくて、鼻息は台風のよう。

…………涼しいくらいなのになんで汗だくなの?


「ごめんなさいごめんなさい!ちゃんとお菓子いっぱい買ったから…ね!」


「待たせたんだから向こうの屋台で串焼きも買ってよもおおおおお!」


どう見ても癇癪を起こす子供みたい…でも多分この人は大人。

なんだか気味が悪い。


「ん!なんだお前!ボクをジロジロとぉ…ブスのクセに!」


「そうよ!可愛いガンボちゃんをそんな目で見ないで頂戴!いやらしい貧乏娘!」


何をしたわけでもないのに、この言われよう。

キングエルを思い出した。


「うちのキャル嬢に何か用かぃ?」


「ひっ!?マ、ママママママママ…こいつ、兵士連れてる…!」


「なっ何もないわよ!行きましょうガンボちゃん!!」


チャドを見て慌てて逃げていった2人。

ガンボちゃんとかいう男の人は歩くのが遅すぎる。



「へ、へへっ。お嬢さんが兵士さん連れてるだなんて。光栄だなぁ…」


お菓子屋の店主まで態度が変わった。


「キャル嬢、大丈夫かぃ?」


目の前でお菓子を買い占められてしょんぼりしてるソフィーを宥めるチャド。


「この様子だとオイラもお菓子を買わないといけないねぃ…なかなか機嫌をなおしてくれなくて…。割って入るのが遅れたのは謝らないとねぃ」


「いいよ別に。慣れてるし。それよりも」



「あは、あはは…」


ちょうど売る物がなくなったことだし、お菓子屋の店主にメドルーナについて話を聞くことにした。



娯楽大国メドルーナ。


ここは金持ちが集まる国。

ここは疲れた人間が集まる国。


金持ちは死ぬまでここで贅沢に暮らし、疲れた人間はここで心身を癒す。


なので、一儲けしたい商人と大金を持った人間と戦いに疲れた兵士や戦士がこの国に集まる…。


この国では金と力が何より優先されて、それらを持つ人間は好きなだけ楽をして暮らせるんだとか。


そしてこの国に集まった大金の一部がゴルゴラやハートで戦う人達の武器のために使われる…。



「とまぁ、こっちは物売るだけだから兵士さんと喧嘩にならないようにだけ気をつければ楽園みたいなもんですよ。どんなに変なものを売りに出してもお祭り気分で浮かれた金持ちがさっきみたいに根こそぎ買っていくんですから」



「でも、さっきの見てるとお金持ってる人よりチャドみたいに強い人間の方が」


「待遇はいいですね。そりゃあそうですよ。怒らせて殺されたら終わりなんですから。だけど金持ちのほとんどは用心棒を雇うもんです。さっきの2人は小金持ちってとこですかね」


店主によると、ここまででたくさん見かけた宿屋はほとんど全部部屋が埋まってるらしい。

でも


「チャドがいれば宿も問題ないのかも」


「よく分からないけど頼りにしてもらえてるなら嬉しいねぃ」




ソフィーのために道中でお菓子を買って宿を確保しよう。

そう決めてお菓子屋から離れようとした時、


「あぁ、兵士さん!ちょっと待って」


「何かまだあるのかぃ?」


「これをお嬢さんに」


平たい焼き菓子に飴が並んでる。

これはなんだろう。


「ミフィーリアの伝統工芸品を真似た鏡型クッキーさ。サクサクポリポリでウチの人気商品!買えなくて残念がってくれてたから残しておいたんだ。これで元気出してもらいたいと思って」


「…わぁ…ありがとう!」


ソフィー。単純でいい子。


「それから…」


店主がチャドに耳打ち。


「大丈夫。でも忠告に感謝だねぃ」



今度ははぐれないようにソフィーと手を繋いだ。

食べるのが勿体ないと言いつつ満面の笑みでお菓子を食べる彼女が可愛い。


「チャド。さっきなんて言われたの?」


「別になんとも。汚い大人に気をつけろってことだねぃ」


「そう…」



それから、華やかな街並みを散歩する感覚で宿屋の厳選が始まった。

これはチャドの提案で、なかなか決まらなくてソフィーが疲れて歩く速度が遅くなってく。


「いや…あれも違うねぃ…」


「チャド。そろそろ休まないとソフィーが」


「…申し訳ない。でも安全のためなんだよねぃ」


「さっきのお菓子屋の店主に何言われたの?」



「それが…宿屋の入口付近に女がいるようなのはやめとけって…ほら、あれ」


チャドが指さす。


"夜明けの蝶々"と書かれた看板。

宿の入口付近…確かに女性が立ってる。


「客を厳選してるらしいんだよねぃ。まぁ2人はまだ大人じゃないから説明は省くけど、色々と問題を抱えてる宿だと思ってくれれば」


「それって…」


見回せば大体の宿屋の入口付近に女の人が数人立ってることに気づいた。


「どこも入れないよそれじゃあ」


「ソフィー嬢、もう少し…おや」


ソフィーは立ったまま半分寝てた。

彼女の荷物を私が持って、チャドが抱き抱える。


宿屋自体は存在するし、チャドがいれば部屋もとれるはず。

それなのに路頭に迷ってしまった私達。




歩き回ってさすがに私も疲れてきた頃、声を張って客寄せする店の群れの中から私を手招きするのが見えた。


「チャド、ちょっと」


なぜか興味が湧いて、立ち寄ることにした。



「占い…キャル嬢も女の子だねぃ」


「そういうわけじゃ」



「いらっしゃい」



若いお姉さんだ。


紫色の薄手の布で顔を半分隠して、全身もほとんどが紫を基調とした衣装。


「私を呼んだ…よね」



「ええ。そこに座って」



"店"という形ではなくて。

道の端に小さな机と椅子があるだけ。

机の上には水晶玉がある。


言われるままに椅子に座ると、向かいに座るお姉さんが私の手を優しく取った。


「あなた、思った通り。他の人とは違う特別な運命を背負ってる」


「………」


子供の頃、ブラウンと兵士数人に守られながらキングエルのお祭りに行ったことがある。

そこでも占いをしてもらった。

その時、ブラウンに占い師に何を聞かれても返事をしてはいけないと聞いた。

質問の答えを誘導し、得た情報から言葉巧みに客を信じさせる偽者がいるからだとか。



「あなた自身がよく分かってるはず。なぜ私が?と」


「………」


辛い思い出を語らせるつもりだ。

そこで話の中で自然と口からこぼれた情報を元にあなたはいつ親を亡くしただの何だのと言い当てる。

つまりこのお姉さんは偽者。



「出身はキングエル。…うふふ。良い生まれのお嬢さんなのね」


「………」


少し動揺してチャドを見ると、まだ近くを見回して宿を探してるみたいだった。



「母親とは記憶を持つ前に別れてしまった。そして父親も今は病気に苦しんでいる…」


「…え」


「あなたはきっと、もっと幸せになれるはずだった。たくさんの人に愛されるべき存在だった」


偽者じゃない。

はっきりとは言わないけど、私のことを言い当ててる。


…違う。違う。


私のことを知ってるんだ。


この人は、ストーン一族に仕えてる。

まさかブラウンがこんな所にまで手を回していたなんて。


また連れ戻される前にチャドに伝えて逃げ出さないと



「あなたのために、助言をしましょう。水晶に手を当てて…」


「………私を連れ戻す気なんでしょ?」


「今は私の言葉を信じるかどうかだけ、考えてください。これはあなたのためですから」


触れた水晶玉が赤くなった。


「あなたの未来を救うため…私は占いであなたをおもてなしする…そしていつか、私の言葉にあなたは…」


水晶玉の上で妖しく動いていたお姉さんの手が止まった。




「"世界を守る"には3つ、"世界を壊す"には4つ、"世界を変える"にはそれらを全て、集めなければならない」




とても早口だった。


「え。も、もう一回…」


「あなたは聞いた。忘れはしないでしょう。必要な時に必ず思い出します」


「そんな…」


「ちょっといいかぃ?占い師さん。もしあなたが本物ならオイラ達が安全に泊まれる宿を占いで探してくれると助かるんだよねぃ」



「…おや、ゴルゴラの大将軍様は宿を探していましたか」


「なっ!どうしてそれを」


チャドの場合は有名なだけだと思う。




占い師のお姉さんは宿屋ではなく、屋敷を紹介してくれた。

そこには老夫婦と雇われた召使いが数人、それと用心棒が2人。


チャドが理由を話すと老夫婦は快く受け入れてくれた。


なんでも、屋敷の所有者であるお爺さんは昔ゴルゴラがあった場所で暮らしていたとか。

そう。"人類の恥"が魔王と世界を分け合う前のこと。


その場所を、故郷を守る立場であるチャドと気が合ったらしく、大歓迎してくれた。



温かい食事に、お風呂、贅沢な寝具。


……私もキングエルでは当たり前だった。

当たり前すぎて、いまさら有り難みが分かる。



私もソフィーも、ふわふわなベッドに少しだけはしゃいで。

気がついたら夢の中だった。




/////////////now loading......




真夜中、メドルーナはまだ眠らない。

到着直後と変わらない賑やかな世界観の中、鎧を脱いで楽な格好をして1人。



「お兄さんお兄さん。どうだい私と」



「私が好み…違う?」



「あんたなら安くするよ…さあほら」



「どれも違うねぃ…」


宿屋の前に立ち、彼に声をかけ誘う女達。


胸の大きな女、足の長い女、顔だけはいい女、体だけはいい女…



数時間前に宿屋を探していた時とは違い、落ち着いて女を選ぶ。



長い時間をかけてようやく。

他とは違う1人の女に目をつけた。


着ている服はシワが目立ち、特別そそるような体でもない。

寝癖だろうか…髪はほんの少しだけ乱れ、化粧はほとんどしていないのか他の女より印象が薄い。



「……あの…私を…買っていただけないでしょうか」


目の前まで近づくと、彼女はようやく小さな声で弱々しく誘う。



「あぁ、そうする。雇い主のとこまで案内してくれるかぃ?」


「え…?は、はい…」



案内されるのは小さくて薄暗い宿屋の一室…の先、管理人の部屋。

関係者以外立ち入り禁止と書かれた紙を剥がして扉を開く。



「ああ?モナか。客が付いたなら部屋まで案内しろ。俺んとこじゃなく。そいつはお前と」


「ち、違うんです…」


「雇い主はお前さんかぃ?」


「だったらなん…っ!?」


雇い主とされる男。

前歯が全て金歯である彼は、椅子にもたれ机に足を乗せている。


その足の横に、机の木材が割れんばかりの大きな音を立てながら布袋が置かれた。

袋の口からはゴールドが溢れている。



「大体5000ゴールド。後で数えて確かめてほしいねぃ」


「5000!?…そ、そうかい。良かったなモナ…、いい客と巡り会えたみたいで」


「このまま買取りたい」


「え…」「はあ?」


女と雇い主が同時に反応する。



「十分足りると思うけどねぃ…」


「は、はは!金は十分持ってるみたいだが?こっちも商売なんだよ。商品のモナは、1晩100ゴールド。他より間違いなく安い。分かってんだろ?」


「納得出来ないなら、」


首を傾けて鳴らす。

それが"力"による交渉だと分かった雇い主は


「馬鹿め。こっちには20人以上の元兵士がいる。ちょっと体が大きいくらいで」



「大軍国ゴルゴラ、大将軍…チャド・サンダーバーグ」



「…チャ、チャド…サンダーバーグぅ…!?お、お前がか!?なんでそんな…メドルーナまで何しに来た!?」



「だから、この女性を…モナ嬢を買取りたい」



「………」


雇い主の男は、モナと呼ばれる女とチャドを目で往復する。

そして


「分かった…勝手に連れてけ」


「ありがとう。そうさせてもらう」



5000ゴールド。交渉は成立した。



宿屋を出てすぐ、近くの店でモナに服を買う。


「あ、あの…」


「薄着じゃ風邪をひくからねぃ」



その後、チャドの帰り際に不意打ちを狙った雇い主が元兵士の用心棒もろともチャドに返り討ちにあい、チャドは改めてモナを手に入れた。





モナを連れて別の宿屋へ行き、そしてついに2人きりに。



部屋に鍵をかけるチャド。


モナは服を脱ぎながらベッドに向かう。



まだ、メドルーナは眠らない。



/////////////To be continued...


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