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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
2章「独りの幸せ」
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第3話「呪いの正体」



無人。無人。野良犬も野良猫も鳥も虫も、何の生き物の気配も感じられない。



そんなことを考えながら細い道を風のように駆け抜けるのはカヒリだ。


「礼拝堂を飛び出してからノープランで来ちゃったな…帰り道に自信が無い…」


人やペットを探す際に対象の名を呼び続けるのはよく見られる行為だが彼はそうしなかった。

声が広がるよりも速く移動しているからだ。

もしキャロラインが声を拾ったとしても、反応する頃にはとっくにカヒリはそこを通り過ぎて遠くまで行っている。


「超・手間!だけどこれなら確実なんだよ…。あ、ちょっ」


カヒリが急停止すると、砂を巻き上げた風の衝撃波が発生した。


「…だよな、だよな。どの家も鍵がかかってる。だからキャロラインは外を探してれば絶対見つかる。よし。」


もし建物の中も調べなければならないとしたら。


という、ふと気づいた疑問を解決してカヒリはまた走り出す。


「礼拝堂の裏から真っ直ぐ直進、端に着いたら道を1本ズラして礼拝堂に戻るってのを時計回りにすれば賢いか…!?いや、でも手間どころか馬鹿だよな…でも帰り道も確保出来るし…あ、そうか、すでに帰り道がっ…くそぉ…」




/////////////now loading......




礼拝堂で待機している予定のチャド、ソフィー、ギーナ。


チャドは退屈ながらも大人しく待つことは出来る。

ソフィーは時々痺れを切らすものの、待てないことはない。


しかしギーナはというと一切待機することはなく、礼拝堂の中を歩き回り国民の様子を見守りながら外への警戒も忘れない。


いつの間にか彼女のおかげで民から漏れ出ていた絶望感が薄れ、静寂も解かれた。


静かではあるが会話する声が聞こえるようになった。



「チャド?チャドー?おーい」


ソフィーが無反応のチャドの前に出て手を振る。



「ん、どうしたんだぃ?」


「何見てるの?」


「ギーナを…」


変わらず彼女は黒い布によって全身のほとんどを隠している。

しかし、時折見え隠れする口元…それだけで彼女の感情やら何やらがチャドには分かるような気がしていた。


そうしてギーナが魔法で怖がる子供を元気にしているのを見ていると。


「ギーナが好きなの…!」


「………いや、誤解だねぃ」


「好きなんだ…!!」


ソフィーが目をキラキラと輝かせてチャドを見ている。

チャドの中で彼女の印象は初対面の頃から短い間で大きく変わった。

最初はチャドに対して"故郷を守ってくれなかった"と恨みに近いものを感じていたというのに。

闇と怒りを心に抱える"村娘"と思っていたが、今では実年齢より少し幼いくらいの"女の子"だ。


記憶を辿ってみれば、ミフィーリアには子供がそう多くなかった。

恐らくソフィーは周りの大人達に大切に"甘やかされていた"のだろう。


歳が近いであろうキャロラインと比較するとその差は大きく、



「うふふ。ごめんなさい。私にはカヒリがいるの。」


「え、」


いつの間にか考えこんでいた。

目の前にはソフィーとギーナがいて、どうやらソフィーが勘違いしたまま告げ口したらしい。


「いや、あ、」


カヒリとギーナは自分達の素性を知られることを警戒している。

誤解を解くには素直に話さなければならないが、そうするとギーナに何と思われてしまうか。

万が一、敵対し戦うことになったら…そこまで考えたところで


「ギーナ嬢、確かに見つめてはいたが…考え事をしていたんだよねぃ」


「あら、何かしら。」


「オイラも国王に会いたいねぃ。これでも少しは名を知られてる兵士だから、色々と聞けると思うんだよねぃ」


「………そうね。その発想はなかったわ。行きましょうか。」


3人は礼拝堂の地下へ向かうことにした。


階段へ降りていく直前、ギーナはもう一度魔法を使う。


「気の弱い女の子がいたの。うさぎのぬいぐるみを抱いて1人で…本当は一緒にいてあげたいくらい。」


弱々しくも白の濃い煙が発生した。

その煙は徐々に"形"を主張し、本物そっくりなうさぎになった。

そして煙のうさぎはギーナが心配していた女の子の元へ。




「魔法は何でも叶えられる。ただ使い手次第で人が栄えるためのエネルギーになるか、私利私欲という名の兵器になってしまうか…。ソフィー、あなたは魔法をどう使いたい?」


暗い階段を小さな火の魔法で照らしながらギーナが問う。


「オイラは誰かを守るために使ってるねぃ。でも見方によっては…」


「私は…」



ソフィーが答えを考えている間に階段を下りきった。



「またお前か」「今度は何の用だ」


鉄の扉を守る2人の兵士。

ギーナの再来に警戒し決して立派ではないボロボロの武器を3人に向ける。


「国王に会わせてもらいたいんだよねぃ」


ギーナに少し遅れて兵士達の前に現れたチャドを見て兵士達が一歩引く。


「大将軍、チャド・サンダーバーグ…!」「どうしてここに!」


「それも含めて、国王と話をさせてもらえるかぃ?」


「…どうぞ」「頭にお気をつけください」


「あら。簡単に通してくれるのね。私達の時はうるさいって国王が自分から出てきたくらいなのに。」


すんなりと国王のいる部屋に案内される3人。


今度は兵士が部屋の外で待機する…先のカヒリの暴走を気にしてだろうか。



「ヒンマ国王。」


「…………………………」


こちらに背を向け、国章に向かってぶつぶつと聞き取れないほどの声で祈りを捧げる国王。

ギーナの呼びかけに反応せずしばらく祈りを続行し、恐らく一段落というところで


「おぉ…お前はゴルゴラの大将軍ではないか。会合以来か」


「そうですねぃ」


「初めましてじゃないのね。知らなかったわ。」


「ライヴァンとアグリアスの国王が親交を深める機会があったんだよねぃ。その時に護衛を少し」


話に入れずソフィーは部屋を見回す。

急ごしらえな国王の部屋。

特に面白そうな物は置いていないが、逆に考えると特に何も置いていなかった。

王様ともあれば、何かしら貴重品があってもいいのではないか。

それこそ、王族に伝わる国宝のような命に等しいほど大切な物が…


「あ」


ソフィーが何かを思いつくが、雰囲気的に発言を躊躇う。

そして話はアグリアスにかけられた"呪い"の話題へ。


「恐らくは魔王によるものだろう。どこぞの人間が"あれ"と世界を分け合った。魔王はその人間以外には変わらぬ態度ということだ。少しずつ人間を滅ぼすために力を強めて確実に世界を侵食している」


「侵食ですかぃ…その通りかもしれませんねぃ。ゴルゴラは陥落したと聞きましたから」


「自分の国のことなのに他人事のような口ぶり…どういうことだ」


「オイラはその時、ゴルゴラを離れていたんですよねぃ…ここにいるソフィーはその時ゴルゴラに滞在を」


「あの。女神の十字架はどこにあるんですか?」


チャドに話を振られたタイミングで思っていたことを我慢出来ずにぶちまけたソフィー。

一瞬場が凍るがギーナがそれに乗っかる。


「そういえば、信仰国アグリアスには"女神アラビタの十字架"が国宝として存在するわね。まさかアレを逃げる時に置いてきたなんてことはないわよね?首にかけられるくらいの大きさのはずだし。」



「……………」



沈黙する国王。

首を傾げるチャド。


ギーナはそれとなくソフィーに歩み寄り、守るような体勢。



「信仰こそ力…人々を守り、国を栄えさせ、信じる者を更なる高みへ導く」



「チャド。」


ギーナの一声でソフィーは彼女の黒い布の端を掴んだ。

チャドはまだ彼女の伝えたい事を察することが出来ずその場を見守る。


「アグリアスを貧困国と言う愚者がいる…この国で食糧難になったことなどはないというのに。アグリアスを魔王の下僕の国と言う者がいる…魔物は入ってこられないというのに」


ヒンマ国王は壁にかけられた国旗を撫でる。

大切…というより、飼い猫を宥めるように。


「アグリアスはどの国よりも尊いのだ。武器を持たずとも魔王の侵食を許さない…信仰の力をこれ程まで見せつけて知らしめているというのに」


「そこまでよ。国王。魔力を練り上げる時間稼ぎは止めなさい。」


ギーナが話を遮る。


「どういうことだぃ?」


「察しのいい女だ」


ヒンマ王はギーナに手を向け、茶色い魔法弾を放った。

ギーナはソフィーの頭を押さえながらそれを回避。


が、魔法弾が放たれた真の目的はその奥…


「出入口が塞がれた!?」


カヒリによって破壊され無くなってしまった扉だったが、魔法弾は土壁になって出入口を塞いでしまった。


「大将軍よ」


驚くチャドを呼ぶ王の手には次の魔法弾。

しかし、魔法はあまり得意ではないのか1発目より二回りは小さい。


「野球ボールからスーパーボールくらいね。」


「時には悪魔を鎮めるために生け贄を差し出す。それが自然だ。成り行きで死ぬか何者かの意図によって死ぬかは知らぬが、」


「まさか。そんなので"悪魔"が満足するとでも?内心馬鹿な人間だってお腹抱えて笑ってるわよ。」


「ならばそこの大将軍を捧げればよい。生け贄として質は保証されるだろう。その次はそこの処女を捧げよう」


「私の知ってる人とはまるで別人。…呪いは嘘なのね?皆を1ヶ所に集めてその悪魔とやらの生け贄にするつもり…!あなたが信仰してるのは神じゃなくて悪魔なの!?」


「信仰こそ力…」


「チャド!ソフィーと逃げなさい!ブレイズ・ショット!!」


ギーナの右手が塞がれた出入口に向けられる…が、手ぶれだろうか。

右手から放たれた虹色の炎弾は土壁ではなくそのすぐ横の通常の壁を燃やし溶かした。


「我が魔法には及ばぬか」


「いいえ。簡単に自慢の魔法を突破されたらプライド傷つけちゃうでしょう?」


「…所詮昔の人間がそこらにあった石と土を混ぜただけのこと、耐久性はこの程度か」


ソフィーを連れてチャドが部屋から脱出すると、ギーナが素早く両手に虹色の炎を発生させる。


「この世界じゃ私に魔法で勝てるやつなんていないわ。そう、魔王でさえもね。」


「眩しい…!」



階段を駆け上がるチャド。

ソフィーは途中からそのスピードに追いつかず、チャドに抱き抱えられる。


そして背後から大きな爆発。

衝撃で揺れ、爆煙が暗い階段をさらに暗く染める。


視界を失ったチャドは壁に手をつき立ち止まる。


声もまともに届かない中、



「急いで。」



ギーナがチャド達に追いつき、爆煙を風を起こして晴らし階段を照らす。


「すぐに礼拝堂の外に出るわよ!」



階段を上がると、何事かと国民達がこちらを注目していた。


「あの爆発はギーナ嬢かぃ?衝撃が強くて少し耳も聞こえなくなってた…」


「ゴホッゴホッ…なに…?」


チャドとソフィーが異変に気づく。


何となく、国民達の目が違うのだ。

怯え、恐怖していた目をギーナが変えてやった。

少しだけ希望を取り戻して温かい目をしていたはずだ。


今はどちらでもない。


「信仰こそ」「信仰こそ力」「信仰こそ宝」



「あ」


階段を下りる前にギーナが魔法で作り出した煙のうさぎ。

それは1人の少女のために作り出された…が、今この瞬間、その少女によって踏み潰された。

それを目撃したソフィー。



「信仰こそ宝…」「信仰こそ…」



「ギーナ嬢」


「……分かってるわ。…これは私でも想定外。」




/////////////now loading......




「私を守れ!妖精!」


私はなるべく大きな声でそう叫んで飛び出した。

咄嗟に隠れた台所の床下から。


出口は右方向。

私を探しに来た何かは左方向にいる。


物音とかでなんとなく、左方向だと思う。


《マテェッ!!》


ズンとお腹に響いてきた。

不快な低い声が背後からして、でも振り返る暇もない気がして。


《ジャマスルナ!!》


そう聞こえて振り返った。


妖精がそれを抑えてた。


「っ!?」


人間だけど人間じゃない。

きっと魔物…でも魔物でもないのかも。


妖精とそれが掴み合いになって部屋中で暴れてる。


私は逃げることを優先した。


外に出て、何も考えずにただ走る。


「だめだ、まっすぐだけじゃ」


たまに曲がって、見つからないように。


何でだろう、いつもならもっと早く走れてるはずなのに思ったように体が動いてない気がする。


「誰か…誰か…誰か誰か誰でもいいから誰かいないの!?」


皆から離れたのは私だ。

自己責任。

でもどの建物にも誰もいないなんておかしいでしょ。

きっと鍵を閉めてアレから隠れてるんだ。


「とにかく走って…ええ…っと…右、右、左?」


ギーナが道順を口に出してた。

覚えておこうと思ってたのに、肝心な時に思い出せない。


「ああもう!左!えー…右!」




《ゴガァァア!!》




アレが吠えた。

妖精を殺したのかな。


あっという間に追いつかれそうな予感がして、手当り次第に目につくドアを開けようとする。


「もぉ…!開けてよ!ああああああ!!」

「伏せろ。」


上から強く押さえつけられて地面に顎をぶつけた。

……痛い。



《………》


「なんだお前気持ちわるっ!人間のパーツだけど魔物っていうか…。というかなんで頭5個あんの?」


「カヒリ…」


「お前は若干離れてろ。戦闘に巻き込まれて怪我とか…あ!?お前顎から血出てるじゃんか!誰にやられた!ってコイツしかいねぇよな!こんのやろぉ…!」


………言えない。カヒリのせいだって、とても言えない。


「この世界で出てきていいフォルムじゃねえよな。…足は3本でカメラの三脚みたい。腹が透けてて内蔵が見えてる。腕は左が2本でさらに2本千切られた跡、右は3本でこっちは無傷。胸には左右に人間の頭が1個ずつと、両肩にも頭が1個ずつ。ベースは人間だけど人間には程遠いな…」


《クサイ…》


「お前に言われるとなんか本気でヘコむんだけど!」


《ウマソウ》


「どの頭が言ったんだ切り落としてやる。」



カヒリはどうやって私を見つけたんだろう。

でも、すごく嬉しかった。

もうダメだって思った時に来てくれて、いつも通りの彼が見られて。


「キャロライン。目を閉じて10数えろ。いいか、絶対に目…開けるなよ。」


今思ったのを無かったことにしたい。

カヒリは普通の声で言ったけど、私にはとても重かった。

怖いのとは違う何か。

恐れてしまって、体が動かなくて、でも言う事はきける。


目だけは閉じれる。



「世界を救う…英雄に!!」


数えなきゃ。



「いーち…にー…さーん…」




/////////////To be continued...


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