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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
2章「独りの幸せ」
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第1話「信仰国アグリアス」




真夜中にライヴァンを飛び出して、朝を迎えた。


アグリアス霊道は前回とは違って不気味さが減ったように感じる。

人数が多いからかな。

代わり映えしない、ちょっと気温が低いだけの退屈な一本道になってしまった。



「肌寒いわね…」


ギーナが呟くとカヒリが肩を抱いて体を擦る。


「ふふ。いいのよ、えいっ。」


「すごい…」


ソフィーがギーナの魔法を見てため息混じりにそう漏らした。

手から炎の小鳥が数羽生まれた。

小鳥達は鳴くことはないけど、彼女を親のように扱って周りをパタパタと飛び回った。

すると私達全員が変化に気づいた。


「不思議なもんで温かくなってきたねぃ」


「不思議…。どうして?どうやったらこんな魔法が使えるの?」


「…この鳥、触れても熱くない。………」


確かに不思議だ。



「そりゃあお前過去最強ヒロインだし多少は特別な…あ、黙ります。はい。」


得意気に語り出すカヒリがギーナの視線で口を閉じた。


「私は炎の魔法を極めたの。ソフィー、あなたもその内に得意な魔法系統を理解して立派な魔法が使えるようになるわ。」


「得意な魔法系統?」


「ええ。身の回りの様々なもの…火、水、土、風、雷…果てには時や空間も。魔法はその言葉の妖しさ以上に多くのものに干渉出来るの。」


「……っても俺達と概念違うんじゃないか?」


「同じよ。誰でも手にしていい力じゃないもの…分かるでしょう?」


「………まあ、まあね?」


「そういえば、2人はどこの出身なのかねぃ?それだけ強ければある程度有名でもおかしくはないと…詮索されたくないんだったねぃ。失礼」


「ギーナ…師匠!」


「ちょっ!お前土下座っ!?」


立ち止まったソフィーが地面に頭をつけてギーナを…師匠と呼んだ。


「私に魔法を教えてください!!」


「あら…」


「マジかよ…この世界に土下座が存在するなんて…」


「そこなの?私は"書き換え"を心配してるのだけど。」


「それは俺も…」


「ソフィー。手取り足取り…というわけにはいかないの。ごめんなさい。」


「どうして?」


「まず立てよ…な。」


カヒリに立たせてもらったソフィー。

動きやすさを重視して選んだ新しい服は所々が黒く汚れていた。

アグリアス霊道の土が黒いって今更気づいた。


「お前はほら、女神と同じ名前だしその…」


「カヒリ。そこは問題ないわ。」


「そうだっけ?まあそのなんだ、こうして旅してればお前もバカみたいに強くなれるから。な?」


カヒリとギーナの会話は、2人だけの内密な話も割と聞こえるように話してしまっている気がするけど、なんでかそれを深く知りたいと思わない。

興味がないわけじゃないのに。



やんわりと断られて残念そうに歩き出すソフィー。

チャドがそんな彼女の頭を撫でた。


「………」


それは私にも見慣れた光景。

父親が子供にする行為。


よくやったな、とか。気にするな、とか。大丈夫だ、とか。今日はご馳走にしよう、とか。さすが俺の息子だ、とか。


いい子だ、とか。


お前は私の誇りだ、とか。



私はそれを、遠くから何度も見ていた。



私には無縁の、目に見えて分かる親子の親愛関係。



「お母さん…」


私が知らないだけで、私が生まれる前、お腹にいる私を同じように撫でてくれたのかな?

私が縋りたいのはお母さんだけ…。



寂しいと思う気持ちが強くなって、視界が乱れてきた。

今にも泣いてしまいそうで涙が世界を歪ませてる。


いい加減それが耐えきれそうにないと察したのかペンダントが冷たくなって


また、私から見える世界は"白と黒と赤"に染まった。




「おお…?もしかしてあれはアグリアス礼拝堂なのかぃ?あんなに大きいのにずっと気づかなかったとは…」


「ようやく抜けられそうだなー…何事もなくリアルに6時間くらいか?」


「"裏技"でもこれだけ大変なのね…。」


「キャル。ほら、アグリアスだよ!」


「……うん」



あっという間とはいかなかったけど、永遠に続くと思えるくらい長かったアグリアス霊道が終わって。


"生"を全く感じられない、信仰国アグリアスにたどり着いた。




/////////////now loading......




「うげ…ゴーストタウンってこういう事を言うんだよな…」


「あなたが怖がるの?もっと怖い体験してるはずよね?」


「俺のは怖いっていうより単純なグロじゃんほとんど。」



信仰国アグリアス。


入国する際に目にする大きな石門には模様が描かれている。

門番はいなくて、門は開きっぱなしだった。


門を抜けてすぐ、村であるミフィーリアが丸々収まるほどの大きさの広場があって、そこからは四方八方に建物の間に生まれた細い道が存在する。


その細い道はさらに枝分かれしていて…まるで大木の木の枝を歩いてるみたい。

全員で適当に道を決めながら進んでいると、すぐに来た道が分からなくなり道に迷ってしまった。



「建造物こんだけあるのに人の気配が全くしないとか…しかも迷子になるしさぁ。天からの目線て偉大だな。」


「……そうよ、良いアイデアだわ。さすがねカヒリ。」


ソフィーは入国してからずっと怯えている。

自分達の足音や呼吸、服の擦れる音の他には何も聞こえないからだ。

知っている国とは随分と印象が違うみたい。

チャドはそんなソフィーに付きっきりで、なんだかソフィーのための護衛に見えてきてしまうほど。


カヒリとギーナ。チャドとソフィー。


………。



「"上"から見てくるから皆ここで待ってて。」


ギーナの足下から圧を感じた。

次の瞬間、柔らかな突風が吹いて彼女はそのまま真上に飛んでいった。


「あれも魔法…?」


「まあな。なんなら翼生やして飛ぶことも出来たりするけどな!!」


「すごい…っ!!」


ソフィーはギーナの魔法を目にする度に感動している。

今も怯えていたはずなのに、いつの間にか憧れを秘めた目を輝かせて空高くまで飛んでいったギーナを見上げてる。


それからすぐにギーナがゆっくりと降りてきた。


「マジで天使降臨だなこれ。どうだった?」


「そうね。礼拝堂までの道順もなかなか…大丈夫。覚えてるわ。」


「はぁ…にしても、週末限定の大売出しとか絶対やらないよなこの感じ。本当なら612ゴールドでオーバーセイバー買えたり、1430ゴールドでプラネタリアス売ってたりとかすんのに。」


「カヒリ。今のはダメ。」


「ごめんなさい。」


「その口ぶり、2人ともアグリアスには詳しいみたいだねぃ。来たことあるのかぃ?」


「………。」


今度は怒られないようにとカヒリは無言でギーナを見た。


「そうね、何度かは。まずは礼拝堂に行きましょうか。」


ギーナが歩き出すと全員がそれについて行った。


彼女はくり返しくり返し何かを呟いてる。


「右、右、斜め右、右、斜め左、直進、左、斜め右…」


「道が三叉に分かれてるねぃ」


「右よ。」



私は最後尾でついて行くだけ。

退屈さ"とか"を感じて、ふと目についたドアに手をかけてみた。


「…っ。開かない」


「キャル嬢。はぐれないようにねぃ」


「分かってる」




/////////////now loading......




日は昇り昼時。

ライヴァンでキャロライン一行を取り逃がしたブラウンは足早にキングエルに帰国し、マクシミリアン王に報告した。



「黒い布…」


「はい。その男は綿のように身軽で兵士達を弄び、ついには魔物よりも素早く逃げ去ってしまいまして…申し訳ございません」


「………」


大きすぎるベッドの真ん中、赤子よりも過保護に世話を受ける王は青ざめた顔で咳をこらえる。


「しかし、各国に人手を広げておりますのですぐに行方は分かります。その時はすぐに」


「境界線だ…あれだけは越えさせるな。別に連れ戻せなくてもいい」


「……しかし」


「境界線の中でなら好きに旅をさせてやればいい…ッゴホ!!」


話の途中で咳込む。

咳をする度に、ベッドに鮮血が散る。

痛々しく見守るブラウンを王は退室するように手で促した。


寝室から出ると、ブラウンは護衛兵に指示を出す。


「兵士長を広間に。王から"全指揮権"を委ねられた。これからは私に従いなさい」


「はっ!」



「マクシミリアン王…あなたは分かっていない。キャロライン様に近づく不穏な存在の危険さを…」




/////////////now loading......




「やっとかあ…!礼拝堂!…こんな大きな建物よく作れたよな。ゴルゴラの城とかもそうだけどさ。人間の仕業とは思えないオーバーテクノロジー感じちゃう。」


「でも誰かいる感じしないよ?もしかしてアグリアスには誰もいないの?」


「私達にも分からない。でもねソフィー、怖がることないのよ。こういう時って大体は"危険な何か"を恐れて隠れてるっていう風に相場が決まってるの。」


「礼拝堂は地下ダンジョ…地下があるしな。」



迷宮とも思えるほどの細い道を突き進み、ようやく信仰国アグリアスの主要建造物である礼拝堂に到着した一行。


礼拝堂前には緩やかで広い階段があり、それを上がった先に大きな木の扉がある。


見上げた印象は、誰もが礼拝堂とは思わないだろう。

そびえ立つ3つの塔…の方が適切かもしれない。

霊道から目立っていたのは3つのうち右側の一番高い塔で、見上げる限りでは天まで続いていそうなほど高い。



人の気配がなく、静寂だけが一行を歓迎していた理由をギーナが体験談を語るように推測すると、ソフィーは怯えなくなり元気に階段を駆け上がった。


「でも危険な何かってなに?私達も危ないってことだよね…」


先を歩いていたギーナを追い越したあたりでソフィーはまた不安になる。


「大丈夫よ。私もカヒリも、チャドもいるんだから」


「2人がいなくても、元々オイラはソフィー嬢とキャル嬢を………待ってほしいんだよねぃ!!」


チャドが全員を静止させる。



「…キャル嬢がいない!」




/////////////To be continued...


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