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私、この世界を征服します。  作者: イイコワルイコ
プロローグ
1/83

第1話「少女の旅立ち」




《さて、どうするか決めてもらおう。我とこの世界を二つに分けるのか…それとも戦うか》






「えっと…どうしよ…」




普通、返事は決まってる。



なのに答えに迷ってるこの大馬鹿が私の父。





「えーーっと…うーーん…」




「準備は出来ているぞ!」


「回復魔法なら任せて」


「俺達なら、勝てる…!」




とっくに覚悟を決めた旅の仲間達が背中を押してくれたのに。






「……………じゃあ、世界をハーフ&ハーフで…!」





世界で初めて魔王の提案に乗って屈した勇者。




それが私の父、"人類の恥"ことマクシミリアン・ストーン。





それから20年後。







「痛いっ!」




「ちっ!肩だから3点かー」



「俺の番な!おりゃっ…よっしゃあ!顔に命中!10点!」




「うっ」



町で遭遇した同年代の男の子達に石を投げつけられてるのが私、キャロライン・ストーン。



頭から血を垂れ流してるけど、これでも"国王"の娘…



ううん、嫌でも国王の娘だ。







/////////////now loading......








「いよいよ身に危険を感じてきた…」



普通の町娘に変装出来ていたはず。


それでも顔でバレてこんな痛い思いをさせられて。




町から森へ逃げ込んだ。



森には動物とか魔物がいるけど私専用の安全な道がある。



10歳で森に迷い込んだ時からこの5年くらい…1人で開拓した細道だ。



この森を抜けると憎き我が家がある。




「誰にもこの城は落とせない?外壁の一部が子供の私にも崩せるのに。」




城は立派。魔王からの贈り物なんだって。



正面から城に入るには城門を3つも越える必要があって、それぞれに専属の兵隊さんが24時間休まずに待機してる。



パッと見では確かに守りは万全。





私は城の裏手の外壁に空けた穴から出入りしてるけど。





「おかえりなさいま…ひ、姫様!?」



「ただいま…」




外壁を抜けると大きな庭が広がってる。



ちょうど執事長のブラウンが木々の手入れをしてた。




私の服は血で汚れててボロボロ、髪は葉や枝が付いててボサボサ。



立場を考えれば…ありえない格好で帰ってきたのは理解してるつもり。




「アイツには言わないで」



「し、しかし…マクシミリアン王は…」



「何度でも言うけどアイツとは血が繋がってるだけ。ブラウンの方がよっぽど私のお父さ」



「それ以上はっ…!」



私に何か起きた時にブラウンとは毎回このやりとりをする。


ブラウンのことは父親として認識してる。



そしてこの決まったやりとりをする度に、ブラウンは途中で話を遮って泣きそうになる。




「では、キャロラ」



「ん!」



「ゴホン。…キャル。中で治療とお着替えを」



この城でストーン一族に仕えてる人達は私のことをキャロライン様とか姫様とか呼ぶけど、ブラウンにだけはこう呼ばせてる。



だって…他に本音で話せる人がいないから…。






/////////////now loading......







「ブラウン〜」



「………」



「ブラウン〜酒も〜」



「………」



「ブラ」



「うるさい!食事くらい自分でしたら!?」




随分と見慣れた光景だ。



マクシミリアン王がブラウンに何から何までやらせる食事の時間。



魚が出ればほぐすように言うし、肉が出れば一口サイズに切り分けろと言う。



サラダは拒絶して召使いに食べさせて"俺が食わせてやってる"と勘違いしてる。



自分じゃまず動かない。




今日、それがついに我慢出来なくなった。




「なんだよいつも静かに食べてるのに。珍しいもんだな」




「珍しい!?周り見てみろ!!お母さんはとっくの昔に死んで!"ストーン一族"はもう私とアンタだけ!…偉そうに…自分の力で歩かないし食事も若い女に食べさせてもらって!」



「メイドだろ…聞こえが悪い」



「これ、見なよ」



私は肩の痣を見せた。


町で石をぶつけられて出来たやつを。


服が擦れるだけでも辛いのに私はこの痣を隠した…コイツに現実を見せるために。



「キャロライン様…!!」



「ブラウン!黙って!」



「お前それ…誰に…」



「知るはずないよね!そりゃそうだよ!アンタはこの城から1歩も出ない引きこもりの王様なんだから!私は外に出る度にどんな人にも冷たい目で見られて!今日は町の男の子達に的当ての的にされた!腹に当たれば5点、腕や足に当たれば3点、"まな板"に当たれば7点!頭なら10点!!」



場の空気が凍った。



私以外開いた口が塞がらないらしい。




「知らないでしょ?誰にも言ってないもん」



「キャロライン様…ま、まさかこれまでのお怪我も…」



「そうだけど?」



ブラウンの顔が青ざめてく。



私は今まで何度怪我をしただろう。



自分のせいで体に傷をつけたことなんて一度もない。



全部、マクシミリアン王が治める国の民によって…



「始まりは6歳!2年前に老衰で死んだ洗濯係のセルタおばあさんが私の足に熱湯をかけた!」



「……え、…え?」



「それから!妻と隣国のライヴァンに移り住むと言って辞めていった執事のカルナ!あいつは私の食事に針を仕込んだ!」



「おい…」



「今はこの城の中に私を傷つける人間はいない。でも外には大勢いるし、今までもこれからも私が死ぬ可能性は誰よりも高い!」



「何を言って」








「事実だよ!人類の恥!よく聞け!!私はここを出ていく!!」







「………おま…」



「キャロライン様…」





「もう決めた!どうせ死ぬなら自分で死に方決める!」





「おい待てよ!ちょ…」



「追いかけます」





部屋を出てすぐブラウンの足音が聞こえる。




正直、さっきのは荒れた感情が言わせた言葉。



出ていこうなんて考えたことない。



あの"人類の恥"と同じように城の中で人生のほとんどを過ごせば安全だもん。



「だから嫌なんだ…」




ドレスでも走れるようになった。



10歳の時に城の外で自分がどう思われてるか知って、大人達に追いかけ回されたおかげ。




「この浴室に」



隠れるのが上手くなった。


商人に凶暴な犬を差し向けられて、必死に逃げ隠れしていたおかげ。





「キャロライン様!キャロライン様!」



部屋の外から聞こえる。


ブラウンの声が遠くなったところで私は浴室の隠し通路に逃げ込んだ。



この城には隠し通路や隠し部屋がかなり多く存在する。



それを知ってるのは私…だけ。






/////////////now loading......






「ここなら見つからない」




城の敷地内には果樹園がある。


その中でもリンゴの木は特別大事にされてる。




「もう少しまともな道具隠しておくんだった…」



リンゴの木に近づけるのは国王とブラウンだけ。



だから私は木の上に色々と隠しておいた…




「裁縫道具、発光石それから…」



◆裁縫道具


針、糸、小さなハサミ…どれも普通の物に見えるけど、糸がしまってある箱やハサミには紋章がある。



◆発光石


私の部屋…ベッド横に飾ってある大きな家族写真に写る、赤ん坊の私を抱くお母さんの胸元のペンダントに埋め込まれてた。


親指と人差し指をくっつけて円を作ったくらいの大きさ。


息を吹きかけると黄緑色に光る。



◆ペンダント


家族写真でお母さんが身に着けていたもの。


発光石はこのペンダントから。


アイツの寝室から盗んでここに隠しておいたのはだいぶ前の事…でも気づかれてない。




「お母さん…!…どうして私…会いたいよ…」





夜明けまでここに隠れることにした。



辛くなって一晩中声を殺して泣いた。






/////////////now loading......






「よし」



裁縫道具を使ってドレスを切った。


あまり上手くないけど、派手さは無くなったし動きやすくなった。


切って余った生地はこのまま持っていこう。




「城門から出られるわけないし、やっぱり…」



「キャル」



「はぁ…」



城壁の穴から出るつもりだったけど、その近くにブラウンが隠れてた。




「髪を結んだのですね、ポニーテールがとてもお似合いです…ナタリア様にそっくりで」



「………」



ナタリアは私のお母さんの名前。


ブラウンはストーン一族に最初に雇われた執事で、お母さんとも親しかった。



そう聞いた。



「眩い金の髪に落ちる一筋の黒髪。それもまた」



「時間稼ぎしてるつもり?」



「目の色も…」



「気持ち悪い」



「……昨夜のお食事でのお話、とてもショックでした」



「………」



「私はまた、守れなかった」





「向こうだ!ブラウンといるぞ!」





「やっぱり時間稼ぎだった」



私を探す時でさえ、アイツは自分で動かなかった。



「あぁ…同じだ…」



「ブラウン、多分もう会えないかも。…今までありがとう」




様子が変だった。


捕まえることもせず、その場から動かずに私に手を伸ばすだけ。





「ブラウン!なぜ捕まえなかった!マクシミリアン王が何と」



「………これでいい。これで」



「ブラウン…?」






/////////////now loading......






城下町…はどんな格好でもすぐにバレてひどい目に遭う。


森を抜けた先の町でもバレてしまったから、次はもう少し離れた町を目指す必要がある。




そのために、何度も通った森の道をわざと外れて知らない方向へ向かう。




「ガサガサうるさいし、鳴き声するし…」



動物ならまだいい。


でも、魔物だったら




「ひっ」




《おやおや…女の子が森で1人、不用心だとは思わないのかなぁ?》




目の前に現れたのは人間の言葉を話す狼人間。


つまりは魔物だ。


賢い種族で、人間に雇われて殺しをすることもある…って本で読んだ。




《綺麗な目だね…ピンクが鮮やかで…吸いつきたい》




「………」




裁縫道具のハサミしか抵抗できそうな物を持っていない。


逃げるにも方向が…それに相手は狼人間、すぐに捕まる。




《そう、それでいい。どうせ食われるのだから無駄な抵抗はしないこと…珍しくご馳走にありつけそうだ》



怖くて声が出ないだけだ。


それに、足も動かない。


さらに言うと漏らしそうだったりする。




《感謝しよう、人間。腹が満たせることに…!》



牙を剥いて、爪を立てて、息を荒くして。



今まさに襲おうとしてる。





「………」



私の…人生…酷すぎる…。





((ファストブレード))




「っ……」






「お怪我はありませんか?」



「……え?ひぃっ!?」



地面には狼人間の生首が転がっていた。



残りの胴体が遅れて地面に倒れて、改めてパニックになった。




「落ち着いてください。見ての通り魔物は死にました。僕が守りますから、町まで」



「い、いや。いや!町は…」



「どうしてです?ハイドシークの森は危険だ。ここに残るよりは」



「ダメ…私はこ、こっちだから…」




偶然通りかかった男性に救われた。



深緑色の髪は目立たず馴染んでいて、自然な微笑みが優しい人。




「………ついてこないで」



「そうはいきません。女性1人を森に残していくなんて、勇者がそんなこと」



「勇者…?」



「見え…ませんよね。旅の途中で盗賊に…防具と所持金を奪われてしまいまして」



たしかに、服装は町人と変わらない。


スラリと伸びる長剣が1本。


それだけが彼の持ち物だった。




「申し遅れました。魔国エンヅォルト」



「エンヅォルトって魔王が治める国でしょ!?」



「…の隣国、ハート出身。名はリーファンと」



「リーファン…」



「リーファン・ハート。王子でもあります」



「………ぇえ!?」



「……僕から離れないように。どうやら仲間がいたようだ」





《やってくれたなあ人間》



《2人か、八つ裂きにして食ってやる》



《女の方は繁殖に使おう》





3体の狼人間に囲まれた。



それでも、怖くなかった。



この人がいるだけで気持ちが安らぐ。







/////////////To be continued...









どうもどうも、作者のイイコワルイコです。

生活に物足りなさを感じてしまい、またしてもお話を書こうと懲りずにカムバックさせていただきました!笑

"あなたの本命の作品が更新されるまでの繋ぎ"として書かれた「俺達が魔法を使う理由」では毎日更新をしていましたが、今作では"忘れた頃にやってくる"…そんなペースで更新を予定しています。


話が長くなるかどうか…パッと1話書いただけで何も考えていないので分かりませんが…一緒に楽しい時間を過ごせたらと思います!


よろしくお願いします!

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