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風の伝令  作者: ヴァリエール
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プロローグ 転校

 学校、おそらくこの言葉は全世界の人が一度は必ず聞いたことのある言葉ではないだろうか。

定義的には一定の場所に、生徒を集め教師が計画的に継続的に教育を行う場所のことである。



「天壌学園生徒会だ、校則違反の疑いがあるたえクラス全員の所持品を改めさせてもらう」

銀縁の四角い眼鏡の男と取り巻き二人が険しい態度で、教壇を陣取り豪語している、まるで時代劇で代官が民になにか取り締まりを行っている、そんな雰囲気に近いものだった。

生徒たちは俯いた表情のまま、言われるがままに従い、誰一人として反抗しようとする者もその欠片すらなかった。

ここ天壌学園はこの国で一番大きな教育機関であると同時にそのレベルは世界トップとされている。

首都の少し南に天壌区という街があります、そこは外界と隔てるように赤いレンガ造りの土台の上に黒い鉄のフェンスがさらにそびえ立っています。

その街の住人は教育者、指導者と教育される側とその関係者で構成されており、部外者の立ち入りは厳重に禁止されている。

この学園が人気の理由は、最新鋭の設備、世界トップの教育プログラム、そして卒業後の希望の進路の実現率は99.9%なのである、つまり官僚になりたいと思えば卒業後はほぼ全ての人間が官僚になっているのである。

こんな学園に人々は憧れ、互いに鎬を削るのである。


 やはりあいつらで間違いない。

「今朝がたの密告は間違いありませんでした。会長、これが例の盗撮写真です」先ほどクラスで怒鳴っていた男が物腰柔らかに報告する。

「こんな物が出回れば、さぞ教職連は困るでしょうね、ご苦労様、あとは私が預かるわ」

「よ、よろしければ私も立ち会わせてはいただけないでしょうか?」

「君は卒業後は医者になりたいんだってね、ちゃんと話をしておくわ」

そういう会長にそれ以上何も言わず、満足した表情で部屋を出て行った。



 天壌学園本部では定例理事会が行われていた。

「では賛成多数で桐生常務理事を解任とします。」理事会の進行役らしき男が話す中、

「よろしいですね?理事長」会議机を囲む理事たちの中では二番目に偉そうな男が若干圧をかけて理事長に問いかける。

「無論だ。皆が決めたことだ」そう一言だけいい理事長は再び静寂に帰った。

桐生常務理事はそのまますぐに部屋を退室した。

それを見るや否やに「あの男は変わり者だった」等とかつては桐生派だった理事たちも含め、生き生きと陰口を述べるのである。

通常の区には区役所や、区議会議員からなる区議会などが区の行政を取り仕切るが天壌区だけは特別で、天壌学園の理事会が行政業務を代行して行うことになっているのである。

そのため、理事たちは相応の権限と影響力を持っており、世界トップの学園の経営組織でもあることから、実質世界の教育の最高権力を握っていると言っても過言ではない。



 天壌区の国際会議場ではこの日天壌学園風紀委員会選挙が行われていた。

天壌区は理事会、教職連、天壌学園生徒会、天壌学園風紀委員会とこの四つの組織が区政に関して重要な権限を持っている。

風紀員会も生徒会役員の選定も同会議場で大々的に行われ、その様子には世界中が注目しているのである。

ここ数年は生徒会長綺羅嘉代子によって風紀委員会の委員長の選定に圧力がかけられており、風紀委員いじめもその一部である。

現風紀委員たちもそれを理解しており、波風立てず下を向いて表情一つ変えず舞台横に並んで下を向いていた。

通常風紀委員長は立候補者が出なければ生徒会長の指名で決定するため、嫌がらせを行い、立候補させない環境を作ることで、支配し、生徒会としての権力をより高め、均衡した勢力バランスを支配しているのである。

その様子を生徒たちもどうせ今年も結果は見えてる、とただ茫然とその様子を眺めていた。

選挙管理委員会がマイクで話し始める「締め切りに移りたいと考えます。改めて立候補者はおりませんか?」と形式上問いかける。

当然立候補者などいるはずもない。

そして、選挙管理委員が閉め切ろうとしたその時、舞台側の扉から男が出てきた。

「遅れて申し訳ない、総会時間の情報を悪意のある知人に捏造されまして、二年桐生華斗華斗(はると)次期風紀委員長に立候補いたします。」

絶対いないと思われた中、一人の立候補者の登場に一同は愕然としていた。

「立候補者一名により、次期風紀委員長を桐生華斗とします。前へどうぞ」といい進行役からマイクが渡された。

「連れてこい」と言うと、黒いスーツにサングラスの男二人が一人の教員を連れてきた。

その教員はかなり激しく抵抗していた。

「天壌学園高校二年団非常勤講師、山岸誠司、彼は転校初日の私をさも偶然通りかかった、いい教師を演じ待ち伏せ、生徒総会の開始時刻の誤った情報を悪意的に認識させた。風紀委員長として山岸講師の学徒審議会の懲戒尋問を要求する。以上だ」と言いそのまま毅然として席に着いた。


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