表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君、僕の事好きかい?

作者: U

「君、僕の事好きかい?」

なんて言って僕は、寝ている君に話しかける。花の上に寝転んでいる君は、チラリとこちらに目を向けると、尻尾をプイッと一振りして、大きなあくびをした。

またそれですか、そう言っているように思えて、思わず頬が緩んだ。


君が家に来た日から、10年くらい経つかな。思えば僕は、君にはちゃんと名前をつけたのに、君のことをいつも「君」と呼んでいたね。


僕は毎日のように、君に聞いたよね。


「君、僕の事好きかい?」


返事をしてくれる事もある。

無視される事もある。

しつこすぎてはたかれた事もある。

いつも僕は君にたずねて、そして言うんだ。


「僕は、君のことが好きだよ」


君と出会ったのは、僕が一人暮らしを始めたばかりの頃だったね。まだ大人になってなかった君は、僕の住むアパートの下で、雨をしのいでいた。

見つけた途端、コンビニへ走ったよ、貢物を買いにね。猫缶を開けて君にあげると、美味しそうに食べてくれたんだ。

それから毎日、僕はそこに猫缶を置いた。君がいても、いなくても。

そんな日々をしばらく過ごして、ある君と居合わせた日。僕が猫缶を置こうとすると、君はいきなり肩に乗ってきたんだ。


それから君は、うちに来た。

「名前は、どうしようかな……三毛猫だから、ミケってどう?」

僕がそうたずねると、君は寝転んだまま尻尾をプイッとふった。

今思えば君は眠っていて、僕の声を聞いてなかったんだね。

でも僕には、いいんじゃない?って言ってるように思えて。

「じゃ、ミケで決まりだね」

勝手にそう決めちゃったから、君、多分この名前が気に入らなかったんだね。


もし、君が僕の事を好きになってくれたら、この名前を気に入ってくれるかな。

いつか、君のことを名前で呼べるかな。


だから僕は聞くんだ、僕の事が好きになってくれたかなって。

いっつも聞くんだ。


10年間、僕のそばにいてくれた。一緒にお風呂に入って、一緒に寝て。

散歩にもよく行ったね。賢い君は、リードなんかしなくても、僕と一緒に歩いてくれた。


そしてそのまま、いってしまった。


もう、君とは、この夢の中でしか会えないんだね。


もうそろそろ、僕の事を好きになってくれたかも。


「ミケ」


そう呼ぶと、君は、返事をしてくれたんだ。

思わず涙がでて、うれしくて、うれしくて。


「僕のこと、好きかい?」


また僕は、そうたずねた。


目を覚ますと、枕元に置いてある君の写真が目に映る。


君は僕のことを、好きになってくれたんだね、ミケ。


また、逢えるかな。












一度書いてみたかった、猫と人間との絆のお話でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ