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異世界でモンスター学博士(美少女)の助手になりました  作者: 高橋グリム
第1章 ドラゴンタートルの首元
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第2話 偉そうな女の子

 俺は思わず、自分の握り拳を見る。

 たしかに手ごたえは感じた。

 けれど痛くもなんともない。

 傷がある様子もない。

 あれだけの勢いで、あれだけの大きさのものがぶつかったら、骨の一本くらい折れそうなものだが……。


 モンスターは木々を押し倒しながら盛大に地面に転がると、すぐに起き上がった。

 しかし俺たちのほうには目もくれず、一目散に走り去っていった。


 なんだかよくわからないが、とりあえず、危機は脱したらしい。

 と、


「○×※△~!!」


 後ろで何かがわめいていた。

 振り返ると、女の子が、顔を真っ赤にして、何やらまくし立てている。

 だが残念ながら、何を言っているのかまったくわからない。

 当たり前だ。

 ここは俺のいる世界じゃない。日本語で話してくれるわけがないじゃないか。


「えーっと……」


 俺はしどろもどろになる。

 どう答えたらいいんだ。

 何か日本語で言ってみるか?

 そしたら言葉が通じてないって、なんとなく向こうもわかってくれるんじゃ……。


「Hey, you!!」


 だが女の子は俺の声を遮るようにして、自分の言いたいことをわめいている。


「Are you listening to me!?」


 ん?

 なんか聞き覚えのある音が……ってこれ、英語か?


「おい、聞いてるのか、おい!?」


 英語だとわかると、なんとなく意味が理解できるようになった。

 もちろん、完璧じゃない。

 ところどころ聞き取れないところも多い。

 それでも、彼女の表情や仕草なんかから、何が言いたいのかくらいはわかった。

 最近、受験勉強は英語に力を入れていたから、それがよかったのかもしれない。


「悪い、何て言っているのかわからなくて」


 俺は頭をかきながら言った。英語で。

 すると、女の子は盛大に顔をしかめ、


「何だって?」


 と言って鼻を鳴らす。

 うわ、俺の英語が下手すぎて、通じないんだ……。


「聞き取れなかったんだ。俺、あんまりこの言葉、得意じゃないから」

「ああ、なるほどな。この地方の人間じゃないのか」


 女の子は両手を組んで、うんうんうなずいた。


「それにしても酷い訛りアクセントだな? いったいどこから来たんだ?」


 眉をひそめてそんなことを訊いてくる。


「えーっと、遠く?」


 嘘は、ついてないと思う。


「だろうな。いや、まあそれよりありがとう。助かった。死ぬかと思った」


 女の子はそう言って頭を下げる。だが、お礼を言っているくせに態度が偉そうで、俺はちょっと笑ってしまう。

 しかも女の子は、すぐに俺からは興味をなくし、少し離れたところにいる亀に走り寄っていった。

 そしてまた、にらむようにして亀を見つめる。


 俺は改めて彼女の容姿を観察した。

 年齢は、たぶん俺より少し下くらいだろう。

 髪の色は金、瞳の色は青。

 色は白く、背は低い。

 きなり色のシャツに、草木染されたグリーンのジャンパースカートといった服装だ。

 足には皮のブーツ。

 典型的な、ファンタジー世界から出てきたような格好という感じ。

 容貌は非常に整っている。

 美人というよりは、かわいい系だ。


 と、見とれていて一瞬忘れてしまったが、ここに長居するのはまずいのだ。

 さっきのようなモンスターがまた現れるかもしれない。


「ここから離れないか?」


 俺は女の子に近づくと、言った。


「安全なところに移動しよう」

「うーむ、やはり頭は上げられないように見えるが……」


 女の子はブツブツ何かをつぶやいている。

 俺の話なんてまるで聞いていない。


「なあ……」

「そうだ」


 女の子は突如、俺のほうを向き直ると、


「ちょうどいい。君、わたしを肩車してくれたまえ」

「は? 肩車?」

「君のパワーだったら朝飯前なんだからいいだろ」

「いや、そういうことじゃなくて」


 肩車って、つまり、俺の首を君の両足で挟むってことだろ?

 それはちょっと、年頃の男女がやるのは問題があるような……。

 だがこの微妙なニュアンスを俺は英語で説明できず、ただ、


「むー」


 と唸ることしかできなかった。


「面倒なんだったら報酬を払うぞ。それでいいだろ」


 まあ彼女が気にしないんだったら、別にいいか、と思い、俺はその場にしゃがみこんだ。

 直後、温かくて柔らかいものが、俺の首を包みこんだ。

 ぞくっと、背筋を電気のようなものが流れ、全身に鳥肌が立つ。

 心地よい鳥肌っていうのも、なんだか不思議だ。


「よーし、いいぞ、立ち上がれ――っておい、気をつけろ、ちゃんと太ももを押さえてくれ。落ちてしまうだろう」

「あ、ああ……」


 恐る恐る俺は、スカートがはだけてむき出しになった太ももを、両手でつかんだ。

 やっぱり柔らかかった。

 ドッドッと、俺の心臓は大きく脈打っている。

 彼女に聞こえていないか不安だ。


「オーケイ。じゃあそのモンスターの頭の近くに移動してくれ」


 俺は黙って、言われるままにした。


「よし、そこでいい。しばし、待て」


 女の子はそう言って、亀のモンスターの口元に、草の束を近づけた。

 モンスターは草を追って、頭を上げる。

 女の子は草を上へゆっくり、持ち上げた。

 モンスターは顔を一生懸命上げて草を食べようとするが、頭が地面と水平くらいまでしか上がらず、結局草までは届かなかった。


「やっぱりだ! やっぱり本土のドラゴンタートルは頭が高く上がらないんだ!」


 何やら頭の上で、女の子が興奮している。


「ドラゴンタートル?」


 聞きなれない単語に、俺は疑問符を投げる。竜亀って何だ?


「このモンスターの名前だよ。何? ドラゴンタートルを知らないって? 本当に、いったいどこから来たんだ君は……まあいい。降ろしてくれ」


 言われるままに降ろす。


「さて、報酬だが、そうだな、金貨……」


 ぐうぅう。

 俺の腹の虫が鳴いた。


「何だ、おなかがすいてるのか。よし、市場に行って食事にしよう! 報酬も一緒に払う!」

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