Ⅱ.異変
翌日、いつもと同じように学校に向かう。高木と白井は違うクラスの同級生で、登校すれば会えるとは限らないがサボる勇気もない。普通の高校生と言ったのはそういうことだ、こんなのどこにでもいる。それをコンプレックスに思うこともない。
登校して担任の気怠げなホームルームでされたのは「最近危ないから気をつけて」という話だった。どうやら通り魔が出たらしい。全く怖い話だ、社会が悪いのかねえ、と僕は独り言を(もちろん脳内で)言った。いきなり思い出の話をするくらいには独り言が激しいことは今更だけどまあ、許して欲しい。
授業は全て退屈ながら終わった。通り魔の話をする教師が三人ほどいた。高木と白井は運動部に入っていて、今日はその活動があるらしく一人寂しく帰ることになった。
帰り道は特に面白いこともなく帰宅、就寝した…と書きたいところだが残念ながらそんなことはなかった。残念ながら、というのは面白いことは無かったが厄介ごとに絡まれてしまったのだ。
僕は退屈さを感じながら一人ぼんやりと歩いた。説明し損ねたが通学のための電車から降りると少しだけ歩いて、歩いた先の駐輪場から自転車に乗って帰るというのが自分の帰宅のためのルートだ。そのため今ぼんやりと歩いているのは電車降りてからの駐輪場までの間だ。
ビル群は変わりなく、静かな灰色の数々は見飽きるほどいつも通りだった。いつも通り…のはずだった。帰り道、一つの立体駐車場の辺りでいつも通りではない違和感を感じた。人の声がしたのだ。何も自分が人の声をいつも通りと思っているわけではない…それが”悲鳴に近い声”で”白井の声に似ていたから”違和感を感じたのだ。
厄介ごとには近づきたくなかった。せっかく今まで平和な学生生活だった訳だし、このまま変わりなく終わりたい…そんなことを思いながらその立体駐車場の中に足を踏み入れる。様子だけ見よう。