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「シロップ。」  作者: 毛利
1/2

1.始まり

 正直これが記憶なのか妄想なのかわからない。オチもないけど話させて欲しい。しかも途中で話は終わる、全て覚えていない。


 僕たちは屋上にいた。一緒にいたのは小さな女の子だった。

 「ごめんね。」

 女の子はそう言ってぼろぼろと涙をこぼしていた。涙には太陽が反射していて、とてもこの悲しげな状況には合っていなかった。僕にはもちろん謝られる心当たりはなかった、女の子を泣かせるような人生は送ってないはずだ。

 「ごめんね。」

 女の子は繰り返した。そのことに僕ははらわたが煮えくりかえるほどの怒りを感じていた。泣いていることではない、彼女を泣かせる原因について。場違いな太陽にさえ怒りを燃やしていたかもしれない。

 その時僕自身も泣いてたらしい、女の子は泣きながら少しだけ微笑んで…僕の頰の涙を手で拭いた。


 記憶はここで途切れている。視界にぼかしが入り、色彩が強くなったのちにシーンの照明は落とされた。



 ここまでが僕のしたかった話だ。ここから先は僕の今の日々の話をしようと思う。突然変な話をして悪かった。


 僕は名古屋に住む高校生、名前は鈴木俊彦という。至って普通の名前からわかるように、至って普通の人生を送って来た。普通よりは少し地味目かもしれないけど。二年生になり季節は秋になった。枯葉は掃いても掃いても全然片付いた気がしなくて、放っておいて気がついたらもう無かった。

 放課後はいつもの友達とお喋りをしながら帰る。付き合いきれないようなデマとか下らない話ばかりだったが、こういうものから遠ざかると羨ましく感じることだと知っているから友達とよく帰宅している。実際その時間は楽しい。今日もそんな時間を過ごしていた。

 今日は「不思議なシロップ」についての話を彼らはしていた。僕は話半分に受け止めていたけど、内容としては「小指ほどの不思議な小瓶を飲むと一気に強くなれる」というもの。曖昧な話だ、面白みもない。

 「面白いと思わないのか?」

 その内の友人Aである高木はそう自分に話を振ってきた。雑な振りだけど自分が黙っているのを気にかけてくれたのかもしれない。僕は適当に返す。

 「君たちは本当に噂話が好きだな、白井はいつもどっから仕入れてくるんだ。」

 高木は苦笑いしながら返す。

 「白井は友達の友達から聞くんだってよ。」

 「作り話じゃないからね!!!」

 白井は食い気味に返す。さらに続けてこう言った。

 「そのシロップは危ないの、飲んじゃいけない!強くなるのは人生を削るという代償があるらしいの。」

 「詳しくて良いことだ、そんなのに遭遇することないから大丈夫だよ。今までも白井の話が現実になったことは無かったじゃないか。」

 高木の反論に白井は頰を膨らませながら

 「私が忠告したからじゃん!!私が噂を流したおかげなんだよ!」

 と返す。肩まである黒髪に整った少女のような幼い顔でそう返すと中々可愛げがある。地味目と言った自分の人生だがこの一幕は比較的輝くものかもしれない。

 そんな感じでいつもの道で別れ、それぞれの帰路につく。高木と白井、それが自分の友人の名前だ。高木は中学生の頃からの男友達で、ほどほどに仲は良い。


 僕は家に着いて、食事を済ませ眠った。後から知ったことなのだが、その時ポストにはある内容についての注意喚起のための手紙が入っていたらしい。もちろん私は”今”そのことを知らない。


 それが何を意味するのか。


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