交渉
金色に光る大きなシャンデリアが天井から下がる王との謁見の間に敷き詰められた赤い絨毯の上に俺らは膝をついた。繊細な彫刻の施された椅子に座る王は先ほど会った時のローブとは違い真っ赤なローブを羽織り王冠を被った彼はそう変わったようには見えないがまるで別人のような王の威厳のようなものがに滲み出ていた。
「まあ、そうかしこまらないで下さい」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます!」
その言葉に促されるままにミシェが立ち上がる。
壁の両側に立っていた『魔道剣士』たちが腰に帯剣していた剣に一斉に手を当てた。王の隣に立っていたアリアナも少し眉を潜める。
「貴様!王の御前で失礼である!」
今にもこちらに切りかかってきそうな彼らに喉を鳴らした俺の背に冷たい汗が落ちる。ミシェは大丈夫かもしれないが俺は彼ら魔道剣士たちの魔法が籠った剣での攻撃を受けたらひとたまりもない。
そんな俺の考えを読んだのか王はクスリと笑った。
「私が許したのです。別にかまいません」
王の一声で彼らはしぶしぶ剣の柄から手を放す。
「悪かったね。初めまして、私がこの国の国王であるシャス・ヘンリー・エインズワースです」
はじめてあったようにニコリと笑った彼はアリアナを見た。
「こっちはアリアナ・ハクスリー、王宮尚書を務めている。報告をしに来てくれたんですよね?彼女は今回それの記録を取ってくれます」
彼女は少しだけ頭下げる。
いきなり話を振られ俺は慌てて隣に立つミシェを見た。ミシェは俺の視線を受けまっすぐに陛下を見た。
「そうです、報告に参りました。ですが、報告を始める前に人払いをしてもらいたいので」
突然の申し入れにまた剣士たちがまたしても腰の剣に手を当てる。デジャヴュなこの展開に今回は陛下の助け舟は入らなかった。
「どういうつもりですか?」
問われた彼女は怪しくなってきた雲行きも吹き飛ばすように明るく言い放つ。
「彼からの報告は聞かれても大丈夫かもしれませんが、私からのお話は彼らに聞かれては王家のほうがまずいと思いまして」
陛下はその言葉に何かを感じ取ったらしく、数秒の沈黙の後彼は退室の命を出した。
「で、ですが王、このようなどこのものかも分からぬ者たちと同じ部屋に護衛も付けず残るなど…」
「大丈夫です。退室をよろしくお願いします」
反対の声が出る中有無を言わせぬ口調に剣士たちは引き下がり、退室した。
「ありがとうございました。じゃあまずハク君のほうの報告からよろしくお願いします」
ミシェが隣にまだ跪いていた俺を立ち上がらせた。
「じゃあ、ハク、報告するんでしょ?」
恐怖で完全に思考を停止していた俺は彼女の声で我に返った。下を向いていた視線をゆっくりと上に向ける。と、そこで部屋に入ってから一言も話していなかったアリアナが話し出した。
「『記憶の書』の、注意事項。記憶の書は国の軌跡の記録。口調、態度、気を付けて」
言い終わるとすぐにアリアナは手を広げて前に出し呪文を唱えて魔方陣を発動させた。記憶の書の魔方陣は光をまき散らしながら中から一冊の本を吐き出した。金の装飾のされた本を開くと彼女俺に始めろ、というように頷いた。
「国王陛下、人国魔力持ち(サウマタジスト)第38期編成部隊のハクラ・マクファーレンです。報告に参りました」
柔らかい光を放ちながら映像を記憶していく記憶の書を前にそこまで言った俺はあることに気づき動きを止めた。俺は報告の夫仕方を知らないという重大な事実に気が付いたのだ。
急に固まった俺を見てミシェがそのことに気が付いたのか彼女が残りを引き継いでくれた。
「彼の契約者のミシェラです、彼の主人として参りました。先日の一斉契約の日、彼と私は自然の意志によって契約を交わしました。契約者として私は彼に一つだけ望みを叶えてもらう権利があります」
慣れたように報告をする彼女がそこで笑みを浮かべた。
「私は彼と契約を交わしたため彼に一つだけ望みを叶えてもらう権利があります。私、ミシェラは彼にこの浮国の浮力を戻すために『星の欠片』を集める手伝いをしてもらおうと思っています」
俺が隣に立つミシェを見るのと同時に王とアリアナが小さく息を飲んだのが聞こえた。ミシェは彼らに何かを言われる前にもう一つ付け加えた。
「ですが、契約をしたからとはいえ望まぬ者に無理強いはなるべくさせたくありません。私に協力してくれるかしてくれないのかは彼の気持ち次第です」
コメントを頂いたのですが何処に返信するのか、そもそも返信してもいいのかわからないのでこの場をお借りします。(/・ω・)/
コメントありがとうございました!
始めてもらったコメントで凄い嬉しかったです!!
これからもよろしくお願いします!