王宮へ
「ついた~!」
私が『飛翔』の術を解き王宮の前に降り立つと衛兵たちが集まってきた。
「何者だ!」
ドレスに身を包んだ少女とその12歳程に見える彼女にお姫様抱っこされて空から降りてきた少年が異質であることはだれの目から見ても明らかだった。
今にももっている銃で攻撃してきそうな彼らをひとまず落ち着かせるために私はハクをいったん地に降ろした。
「私、『魔力持ち(サウマタジスト)』の彼の契約者よ。彼は国王様に報告に来たの。」
― さぁ、どうしようかしら。
一向に警戒の解けない彼らに変わらず笑いかけながら心の奥底で冷静に次の手を考える。魔力を使用して入ることはできるが王宮には魔術使いがおり入ったとたんに攻撃される可能性がある。
ミシェにとしてはそれでも絶対に負けるわけがないがここは平和的に解決したかった。
「お兄さんたちそれ怖いからどけて?私たち王様に会いに来たの」
― さすがにダメ、か。
ウインクして彼らを見るがさすがに色仕掛けは無理があったようだった。そもそも今の私の姿は昔に使った術の影響で美女よりは幼女に近い。次の手を考える前に、銃を構える彼らの後ろから長い純白の髪の少女が城内から現れた。
「銃、下して。その人達、王が、呼んでる。」
彼女が言葉少なに用件を伝えると衛兵たちは慌てて銃を降ろし敬礼した。
「ア、アリアナ様!失礼をいたしました!」
敬礼した彼らを横目にアリアナと呼ばれた少女は私とハクの前に立つ。桃色の瞳で彼女はハクを見、私を見たところで小さく息を飲んだ。
「あなた…」
何かを言いかけたが首を振って踵を返し城内に入ってゆく。私も何も言わずそのあとを追った。
「あああの?」
ハクが何も言わず歩き始めた私と彼女の後を慌てて追った。