伝説のおいちゃん3
おいちゃんの存在が残酷描写…
といいたいけれど、今回は彼の行動が残酷…ww
ちょっとパンチが足りなかったですが
いつものように残念すぎるおいちゃんの物語パート3デス
今回はイナミ様から頂いたイラストから発案♪
イメージは人それぞれですのでこういうのもありと思ってください。
えぇ…イラストにしてはいけない人ですからね…
皆様が見られるように、イナミ様頑張ってくださいましたよ。
ありがとうございます!
大国ガルヴァントには昔から一つの伝説がある。
それは、この地で危機に陥った時、伝説の「あの人」が現れるという伝説。
伝説の伝説ってなんだとなんだと思うかもしれないが、まぁ、「あの人」が現れるといういわば都市伝説のようなものだ。(やはり伝説の連発)
「あの人」
そう、彼はかつて魔王を倒し、世界を救ったとも、かつて人々を苦しめる魔獣に一人で打ち勝ったとも言われる幻の人。
その名も
伝説のおいちゃん
馬鹿にしてるのか! と殴り込みにあいそうな話ではあるが、本人が言うのだから間違いない。
そして今日も、彼は人々の危機に駆けつけるのだ。
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「というわけで、下着泥棒を捕まえるのに手を貸して欲しんだけど・・・・。おじさん、何その姿」
さらさらとした金の髪に、青い瞳、世の女性に王子様のようと言われる甘いフェイス、今を時めく騎士見習いカイ・ラウンドは、町の警備や兵士、さらに騎士を動員しても捕まらない下着泥棒を捕まえるため、かつての勇者であり、自国の元軍事顧問であった己の伯父に声をかけに来たのだが…。
目の前には、長椅子にだらりと横たわり…いや、長椅子から上半身が落ちかけている男がいる。
前髪がかなり後退した丸顔、腹がぼよんと出て背が低く、ちょっと残念な風貌の男である。
黄色い歯を見せてにやぁりと微笑まれると、ぜひとも回れ右をしていきたくなるような気持ち悪さを持っている。
(顔だけ見れば…犯罪者だよな)
顏のみならず、性格や…いや、存在そのものが犯罪に近いが、そこは身内であるせいか、カイは気が付いていない。
そんな男の姿は、最近彼のトレードマークになっている白シャツにステテコ、腹巻姿なのは変わっていないのだが、一つだけ変わったものがあった。
「これは流行だよぉ、カイくぅん」
姿勢は正してから言ってほしいものだが、そこは目を瞑ってカイは首を傾げた。
「流行? 見たことないけど」
「今、おいちゃんで見たよねぇ」
「そういうことじゃないだろっ! ていうか、ちっさくなってるだけじゃ?」
本日のおいちゃんは小さくなっていた。
いつもと変わらない姿だが、いつもよりも小さく、そして、気持ち悪さが少し和らいでいる。
「これこそがぁ、3等身マジックだよカイくぅん。可愛いでしょうぅ?」
3等身マジック。
どんなものも3等身にしてしまえばなんとなく可愛く見えてくるというあれである。
「そう言われると…て、そんな話じゃなくて! 下着泥棒だよ!」
兵士から騎士見習いまで昇格して、まだそんな仕事をしているのかと言われそうだが、今回は特殊なのだ。
何しろ、敵は王妃様の下着まで盗んでいったのだから!
「というわけでおじさんっ、手伝って!」
「うえぇ~?」
次の瞬間、おいちゃんがおいちゃんの殻を破り、まるで蝶の蛹の様に3等身からいつもの…といっても身長的には3等身より気持ち高いくらいしかないような小柄なおいちゃんが現れた。
もちろん殻は殻のまま残っている…。
「おじさん…ついに人間やめたんだ…」
思わずカイが、真顔で言ってしまったのは仕方がない。
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結局、いつものように「おじさん、よろしく!」と捨て台詞の様に叫んでおじさんの家を後にしたカイだったが、ちょっと早まったかな…と3日後の夜、遠い目をして目の前の光景を見つめていた。
「ふははははっ、間抜けな兵士どもめっ! 私は捕まえられまい!」
叫ぶ男は坂道の上、ばさぁ! と白いマントを肩に跳ね上げ、仁王立ちして笑う。
その男は、筋肉でできた見事な肉体を見せつけ、頭には盗んだらしきパンツを被り、着ているモノといえば体にぴったりとした白いブリーフを身につけているだけの…いわゆる変態だった。
(コレとおいちゃんが会ったら現場がカオスになるよな…絶対)
避けたい事態である。
そのためには余計な悲鳴が上がる前に変態を捕まえればいいのだが、敵の筋力とスタミナは果てしなく、町中を追い掛け回すことになった。
「あいつ! 魔法を使うぞ!」
ここぞという時になぜか兵士も騎士も男に触れられず、するりと躱されてしまい、体力が尽きた者達がまだ平気な者達を送り出す状況に…。
「頑張れ、勇者の子孫…俺の分まで…がくぅっ」
「なんでもがくって言えば許されると思うなよ!」
疲労で戦闘放棄する仲間達に文句を言いながらも、まだスタミナが続きそうなカイは走る。
周りに残っているモノは数名で、すでに筋肉が悲鳴を上げているような状態だ。もう少ししたら先程と同じセリフで倒れること間違いなしである。
「変な魔法さえなければ!」
ちなみにその魔法がどんなものかもよくわからない。ただ、触れようとすると触れられないのだ。
(無意識にあの裸を避けてる…てことはないよな)
ない、と思いたいがありそうなのが怖い。
「そろそろ夜も更けた! 君達との鬼ごっこにも飽きたしな! ここでおさらばといこうではないか!」
男は叫ぶと、マントをばさりと再び肩に跳ね上げ、肉体披露をする。
(腹立つっ! けど、やばい! 逃げられる!)
今回の捕り物はかなりの数の兵士、騎士を導入したいわば兵士や騎士の名誉をかけた戦いでもあったのだ。これでは国民の信頼がガタ落ちになるのは必至!
絶体絶命!
そう思った瞬間、ふわふわと金色の粉が皆の元へと舞い落ち、見上げれば、月明かりに照らされ、七色の羽を輝かせて舞う…
「見ろ! 妖精!…だ?」
のはずはなく…
ぶいーんっぶいーんっと鱗粉をまき散らして飛ぶ一度見てしまったらハエにしか見えないという、白シャツ腹巻、ステテコ姿をしたぽっこりお腹の残念なおいちゃんが空を舞っていた。
その姿を見てしまった男達の気力ゲージが一気に減ったと言ってもいいだろう。
がくぅっと倒れるモノ続出である。
「おじさん!」
「カイくぅん、目が覚めたぁ?」
ベションッと変な音がした後、スタッと地上に降りたおいちゃんの背中の七色の羽はその瞬間に消える。
「目なら覚めてるけど…ん?」
ふと周りを見回せば、そこは本日最初に変態が仁王立ちして笑っていた坂道の中間付近である。
町中を走り回っていたのにこれはどういうことかと考え、はっとして叫んだ。
「幻覚!?」
「そぉぉう。ず~っと坂道を行ったり来たりぃしてたねぇ~」
「行ったり来たり…て、早く助けろよ!」
叫べば、おいちゃんはその表情の線を濃くする。
「カイ君…」
「な、なに?」
眉も太くなり、大昔のアニメのごとく顏の線が濃くなるおいちゃんの迫力にたじろぐと、おいちゃんは顔を近づけて真剣に告げる。
「男は助けたくないのだよ」
「真剣に言うことかー!」
カイは勢いよくおいちゃんをアッパーカット!
「ぐはぁ!」
空へ舞いあがったおいちゃんは地面にどさりと落ち、鼻血をだらだらと流しながら親指を立て、その黄色い歯を鼻血で染めながらにやぁりと笑みを浮かべた。
「ナ~イスパンチ…がくぅっ」
「て、またこのパターンか! 戦場放棄すんな!」
ガクガクと揺さぶりおいちゃんを叩き起こすと、おいちゃんは再びにやぁ~っと赤く染めた歯を見せて微笑む。
「威嚇すんなっ」
おいちゃんの気持ち悪い微笑み威嚇にはすっかり慣れてしまった甥っ子に、「つまんな~い」とぶつくさ文句を言いながらおいちゃんは立ち上がる。
「取り敢えず幻覚は金色の粉で何とかなったんだよな?」
おいちゃんはがさごそと腹巻の中からいつものように飴ちゃんを取出し、カイに持たせる。
「これで完璧ぃ~」
「舐めろってこと? ちょっと抵抗あるけど・・・・うぅ」
腹巻の中から剥き出しで出てきた飴を、比較的まだ体力のある同僚の口に放り込み、自分も渋々口に入れると、飴は口の中でシュワッと一瞬で溶け、カイは目をぱちくりさせる。
「なにこれ?」
「ん~とねぇ。おいちゃんの抜け殻を丸めたやつ」
「ぐほぉっ」
何気にカイにダメージ!
他の者はおいちゃんのあの抜け殻を見てなのできょとんとしている。
そこへ、おいちゃんはにやぁと微笑んで告げた。
「さっきの鱗粉は~。おいちゃんのフケ~」
「「「「ぐわぁぁぁぁぁ!」」」」
騎士兵士に痛恨の一撃!
「味方を攻撃すんな! 敵を…そうだ、敵!」
はっと振り返ると、すでに坂道の上に立っていた変態は倒されていた。
(いつの間にっ!?)
「今回はドカッともバキッとも言わなかったのに…」
と考えたところで、おいちゃんが妖精ならぬハエ姿から地上に降りる瞬間、おかしな音がしたことを思い出す。
あの一瞬でおいちゃんは変態を踏みつけて倒し、何食わぬ顔でカイの元に降り立っていたのだ!
「恐るべし、おいちゃん…」
おいちゃんが真剣な表情でナレーションしていた…。
「ナレーションすなー!」
おいちゃんを蹴り飛ばすと、おいちゃんは顔面を滑らせながら吹っ飛び、途中でばたりと倒れた。
「くそぅっ、飴の舐め損! とりあえず被疑者確保!」
バタバタと騎士達が変態を取り押さえる中、ムクリと立ち上がったおいちゃんの手には、赤い小さなリボンが付いた白い小ぶりのパンティが!
「ちょっと待てぇい!」
カイが叫ぶと、おいちゃんは顔面すりむけて恐ろしい顔をゆっくりと振り向かせ、にたぁっとほほ笑んだ。
さすがにこの顔はホラーなので見慣れないカイは一瞬すくむ。
「おぉ、あった! 今日こいつが盗んだ下着だ! …女性達には注意していたはずだったはずなのにやけに多いな…どこかの家に侵入したか?」
男達は少々訝しげに首を傾げつつも、興奮気味で、しなくてもいいのに下着を丹念に調べていく。
赤や黒のレースのきわどいものもあれば、純粋な白い物もあって、思わず男達が妄想してしまうと、カイはここにきてようやくおいちゃんの呪縛から解放され、はっとした。
「まさか…」
その時、ポンッと音がして、おいちゃんが3等身化した!
「全部おいちゃんの下着~っ!」
「「「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」」」
その時、この夜一番の悲鳴が町に響き渡ったそうな…。
こうして、今日もおいちゃんの伝説は一つ増えたのである。
「何の伝説なんだ!」
カイの叫びもまた増えたそうな…。