宮永源三の大バカ領主様 Ⅰ
ちょっと気分転換としてギャグ話を書いてみました。
と言ってもまだ書き始めなのでギャグ要素はまだありませんが……取り敢えずどうぞ!
~宮永源三の大バカ領主様~
キャスト
バカ領主:宮永源三
奥方:宮永楓
領主の跡取:宮永来牙
〃 姫君:宮永絵梨
奥方の側近 (家老):?
今から数百年前。日本のとある領地を治める老人………訂正、傍迷惑過ぎて領地を好き放題してる最悪な領主である老害が、我が物顔で取り仕切っていた。
「うっひょっひょっひょ! 外で優雅に春画本を見ておると癒されるのう~」
この老人が宮永領の領主である宮永源三。働きもしないで遊んでばかりの領主で、何かある度に領民を困らせている悪の元凶。現在、庭園で設置した大き目の椅子に座り、気持ち悪い笑みを浮かべながら春画本を見ている。
「じーさん、アンタいい加減に領主としての仕事をしたらどうなんだ?」
源三の行動に呆れながら言ってる少年は領主の孫である宮永来牙。宮永領を治める時期領主。本来であれば時期領主は孫の来牙ではなく、源三の息子が領主になってもおかしくないのだが、肝心の源三の息子は宮永領の領主になりたくないからと言って出奔。それにより孫の来牙が次期領主にならざるを得なかった。来牙自身は領主になる事はあまり乗り気ではないが。
「戯け! 仕事なんて婆さんが採用した家老に任せておけば良いのじゃ! 領主であるワシの命令は絶対じゃ!」
「とても領主とは思えない台詞だな」
完全に呆れた来牙はもうどうでもいいように庭園から去ろうとすると、
「だ~れだ?」
「ん?」
突然、誰かが背後から来牙の目を手で塞がれた。その事に来牙は大して驚きもせず溜息を吐く。
「何やってるんだよ、絵梨」
「あれ? もうばれちゃった?」
「俺にこんな事をするのはお前しかいないだろうが」
来牙は目を塞がれている手をどけながら、背後にいる少女に顔を向ける。
彼女は宮永絵梨。領主の娘であり、来牙の異母妹。兄の来牙に恋愛感情を抱いてる変た………もとい、重度のブラコンである。
源三の寵愛を受けている身であるが、絵梨本人はとてもウンザリ気味。寵愛と言っても主にセクハラをされているから、父親に対して敬う気持ちはゼロだから仕方がない。
「おお~絵梨よ。ワシに何か用かのう?」
「来牙君、今からあたしの部屋に来ない? 町で話題になってる食べ物を買って来たの」
「おのれ来牙! 貴様、領主であるワシを差し置いて絵梨の部屋に行くとは何事じゃ!」
「俺に八つ当たりかよ……」
絵梨に無視された源三は標的を代えて敵意を剥き出しにする事に呆れる来牙。
「絵梨よ~、来牙なんかより父であるワシが代わりに部屋に……」
「お父さんは来なくて良いから」
「来牙! 領主としてお主に罰を与えるわい! 領主命令じゃ!」
「さ、来牙君。お父さんは放っておいて早く部屋に行こう」
「絵梨~! 頼むからワシを無視せんでおくれ~! ワシも絵梨の部屋に行きた~い!」
無視して部屋に連れて行こうとする絵梨だったが、行かせないと目の前を阻む源三。その事に二人は呆れ顔になる。
「ちょっとお父さん、そこ退いてよ」
「嫌じゃ! 絵梨が良いと言うまでここは絶対に通さんのじゃ! 来牙なんかより断然ワシの方が良いわい!」
「アンタ何訳の分からん事を言ってるんだ?」
「黙れ来牙! 領主であるワシに向かってなんて口の聞き方じゃ! そもそも貴様が絵梨を誑かしたからワシに懐かなくなってしまったのじゃ! この親不孝者が!」
「絵梨が今まで爺さんに懐いていたところなんて一度も見たことは無いけどな」
源三は絵梨に駄々っ子みたいに言っていたが、来牙相手には罵声を浴びせる。まあ来牙と言うより男相手には容赦無いと言ったところだ。
「貴様のせいでワシの絵梨が……!」
「しつこいにも程があるんだが」
そんな源三の差別的な行動に来牙はどうでも良いような感じであしらっているが、それでも源三はネチネチと言って来る事にウンザリしている。
「ねぇお父さん、そろそろそこを通してくれない? 早く来牙君を部屋に連れて行きたいんだけど」
「来牙よ、領主として命を下す! お主は今後絵梨の部屋に行かぬように謹慎を――」
スッパァァァンッ!
「ふごぉっ!」
来牙に命を下そうとしてる最中に、誰かが背後から頭を叩かれて源三は突然の痛みに変な奇声をあげた。
「ここにいましたか、お爺さん。いつまでも遊んでないで早く仕事をして欲しいんですが?」
「あ、お母さん」
「婆ちゃん」
源三の頭を叩いたのは宮永源三の奥方である宮永楓。形としては一応源三が領主であるが、この人こそが宮永家一番の権力者。
「ひ、酷いではないか婆さんや! 何もワシの頭を叩かなくてもよかろうに!」
「すみません。お爺さんが余りに子供染みた行動をして、下らない罰を来牙に与えようとしていたので」
「下らなくは無い! 来牙がワシに逆らうから――」
「それで?」
「――――すいませんでした」
低い声を出す楓にあっと言う間に降参する源三。下手な事を言うと頭を叩かれる以上の事をされるのを予知したから咄嗟に誤ったのだ。源三は楓には唯一頭が上がらなく、そして逆らう事が出来ない人だから。
「全く……。邪魔をして悪かったね二人とも。この人はアタシが連れて行くから」
「ありがとう、お母さん」
「助かったよ」
楓に礼を言った絵梨と来牙は去っていく。
「待てい来牙! ワシはまだ絵梨の部屋に言って良いとは――」
ジャラジャラジャラ!
「って今度は何じゃあ!?」
「ん? この鎖は確か……」
再び来牙を阻もうとした源三だったが、突然源三が鎖で縛られた。その事に楓は見覚えがあったかのように思い出している。
「やっと見つけましたよ領主様。さあ早く執務室に……って、楓様もいらっしゃったのですか」
鎖を持ってる青年が源三を連れて行こうとしたが、楓がいた事に気付いてすぐに頭を下げた。源三ではなく楓に向かって。
「き、貴様は婆さんが採用した家老ではないか!」
「申し訳ありません楓様。貴方様がいらしていたとは知らずに無礼な真似を」
「気にしないで下さい。寧ろ手間が省けて助かりましたよ」
家老の青年は源三の言葉を無視して楓に謝ったが、当の本人は気にしてなく逆に礼を言う。
「婆さんに謝る前にワシに謝罪する気は無いのかぁ!」
「貴方が仕事をせずに遊んでばかりいるからですよ、領主様」
「じゃからと言ってワシにこんな事をしてタダで済むと思っておるのかアアンッ! 切腹の覚悟は出来ておるんじゃろうなぁ!? もしくは打ち首じゃあ!」
家老に処刑命令を下そうとする源三だったが、
「そんな必要はありませんよ。お爺さんに手荒な真似をしても捕まえて良いと彼に命を下したのはアタシですから。文句があるのでしたらアタシに言ったらどうですか?」
「…………………………」
楓の言葉にグゥの音が出なくなった。
「文句が無いなら早速仕事をしてもらいましょうか。家老、お爺さんを執務室に連れて行きなさい」
「承知しました。ではさっさと行きましょう領主様」
「くっ……! お主、この恨みは絶対に忘れんぞ……!」
「恨み言を言う暇があるのでしたら、早く足を動かして下さい」
家老は鎖を引っ張って源三を執務室へ連行……ではなく、案内するのであった。
一応試しで書いてみましたが……どうですかね?