独立エンブラ学園 緊急事態発生 絵梨が!
タイトル通り、今度は絵梨です。
それではどうぞ!
~絵梨視点~
はぁ~、やっと三時間目の授業が終わったよ。次の四時間目の授業が終わる少し前に教室から抜け出して来牙君の教室に行かないとね。愛妻弁当を持って。
でも四時間目なんてやらなくていいから、早く来牙君に会いたいな~。あたしとしてはこんな教室にいるより、来牙君がいる教室にいきたいし。
そもそもあたしは来牙君の妹なんだから、来牙君の教室にいても良いと思うんだよね。ここは自由な校風な学校なのに少しは融通を利かせて欲しいよ。
『おい猿彦! 勝手に僕の机の上にバナナの皮を捨てるなって言ってるだろうが!』
『すまんだがや~裕生。バナナを食ったオラは何故かついやってしまうんだがや』
『そんなの知るか! とにかくさっさと皮を捨てるんだ!』
何か上田君が羽鳥君……って言ったかな? その猿顔の人とコントっぽい事をしてるし。そう言えば上田君って来牙君から聞いた話だと『ジェダイ育成部』に入ってるって言ってたね。
もう関わりたくないって来牙君が言ってたから、あたしも上田君にはあんまり関わらないようにしておいた方が良いかも。
そう思っていると、四時間目の授業が始まると先生が入ってきて……え? 何でお父さんが此処にいるの?
「今日の授業は全校集会でご紹介されたお一人である宮本先生も一緒に授業をする事になった」
国語担当の先生が説明を聞いて、あたしは朝の全校集会の事を思い出した。
確か臨時教師で入って来た人だったね。にしてもあの宮本先生って人、間近で見ると本当にお父さんそっくりだね。てっきりお父さんがこの学校で何か悪さをするのかと思っちゃったよ。
「と言う訳で、こんな年寄りじゃが宜しくのう」
やっぱりお父さんとは違うね。だってあたしのお父さんは宮本先生みたいに、あそこまで礼儀正しい人じゃないし。
もしお母さんが見たら絶対に驚くだろうなぁ。それに何か気が合いそうだし。
あ、そう言えば綾ちゃんはどうしてるんだろう。綾ちゃんの苗字は宮本だったから、つい綾ちゃんを思い出しちゃったよ。
「おい上田と羽鳥! お前達はいつまで遊んでいるんだ!」
「い、いえ! 僕じゃなく猿が勝手に……!」
「こら裕生! オラのせいにするんじゃないだがや!」
あの二人、まだコントっぽい事をやってたんだね。
「そんな事はどうでもいいからさっさと席に着け! 申し訳ありません、宮本先生」
「ほっほっほ。ワシの事はお気になさらず」
あの宮本先生って何か器が大きいね。普通は指摘しても良い筈なのに。
もしお父さんだったら無茶苦茶な事を言ってるんだけどね。
「そう言ってくれると助かります。では授業をお願いします」
「分かりました。え~、ではワシが先生の代わりに授業をやらせてもらうわい。こんな年寄りの授業を聞きたくない者もおるじゃろうが、出来れば最後まで付き合って欲しい。では先ずお主達の顔と名前を一致する為に出欠確認をさせてもらおうかの」
宮本先生はそう言って隣の先生が持っている出席簿を借りて出欠確認を始める。
「宮永絵梨さん……は誰かのう?」
「あ、はい。あたしです」
「おお、お主か……ん?」
何か宮本先生があたしの顔をじっと見ている。
「………………むぅ……あの子はワシの孫の綾にそっくりじゃのう……」
「あの、何か?」
「あ、いや、何でもないわい」
気にしないように言って来る宮本先生に、あたしは妙な感じがした。一体どうしたんだろう。
あたしが疑問を抱いてると、出欠確認は終わり宮本先生は授業を始めようとする。
「さて、出欠確認が終わったところで……早速じゃが今から簡単な小テストをやってもらうわい」
『ええ~~~!!』
な、何でいきなり小テストなんかやるの!?
あたしだけでなくクラス中が嫌そうに叫ぶと、宮本先生はお見通しみたいかのように涼しい顔をしてる。
「ちょっと宮本先生! ここでそんな不意打ちは無いと思うんですが!」
「そうだがや! いきなり小テストなんか出来るわけ無いだがや! と言うかやりたくないだがや!」
ナイスだよ上田君に羽鳥君! あたしだってテストなんてやりたくないもん!
「さっきも言ったが、簡単な小テストじゃ。尚この小テストで真面目にやらなかった者に対しては放課後に補習を行うので、ちゃんとやるように」
放課後に補習! 冗談じゃないよ! そんな事されたら来牙君と一緒に帰れなくなっちゃうじゃない!
って言うかあの先生何考えてるの!? 生徒の嫌がる事を平然とやるなんておかしいよ! これじゃまだお父さんの方がまだマシ……とはあんまり言えないけど、ほんの数ミリ分だけマシだよ!
「冗談じゃ無いだがや! 自由な学校なのにテストなんかやってられないだがや! オラは抜けさせてもらうだがや!」
「あ、こら羽鳥! お前何を勝手な事を!」
羽鳥君がボイコットしようと教室から抜け出そうとする事に先生が止めようとするが遅かった。
この際だからあたしも、
「これこれ、お主は何処へ行こうとしておるのじゃ?」
『んなっ!』
………あれ? 宮本先生はさっきまで教壇に立っていたのに、何で一番後ろにいた羽鳥君をいつの間にか捕まえてるの?
「な、何で爺さんがもうオラの襟首を掴んでるだがや!?」
「そんな事はどうでもよかろう。それはそうと羽鳥よ、小テストから逃れる為に脱走とはのう」
「お、お見事です宮本先生。羽鳥! お前は脱走した罰として放課後に補習だ!」
「いや~~~! 補習は嫌だがや~~~!」
あ、先生二人が羽鳥君に意識を向けてるから今から逃げれそう。ちょっと早いけどお弁当を持って来牙君の教室に行こうっと。
「そこで弁当箱を持って脱走しようとする宮永さんや。お主はどこへ行くつもりじゃ?」
うっ! も、もうバレてるし! こうなったらもう逃げるしかない!
「やれやれ、しょうがないのう………(ギロッ!)」
「!!!」
あ、あれ? な、何で身体が動かないの? どうして?
「全く。羽鳥に続いてお主までも脱走とはのう。呆れて物が言えんわい。それとまだ授業は始まったばかりじゃと言うのに。で、何処に行くつもりだったのじゃ?」
「え、えっと……今からお兄ちゃんのお弁当を届けに行こうかと思って……」
「そうか。お主は随分と兄思いじゃのう。じゃがそれは授業が終わってからにしてもらおうか」
「と、ところで宮本先生。どうしてあたしの体は動かないんでしょうか?」
さっきから全然身体が動かないんだけど。
「な~に、ちょっとした手品を使っただけじゃよ」
手品!? 手品であたしの体を動けなくしたの!? この人あたしに一体何をしたの!?
「安心せい、時間が経てば動けるようになるからのう。まあそれはそうと宮永さん。お主も脱走した羽鳥と同じく放課後に補習をしてもらうからのう」
「いや~~~~!!」
補習なんて冗談じゃ無いよ! そんな事されたら来牙君と一緒に帰れないじゃない!
こうなったら授業が完全に終わったら速攻で、
「言っておくが補習を受けずに逃げようなんてバカな真似を考えるでないぞ。そんな事をしてもすぐに捕まえるし、補習時間を倍にするからのう」
「宮本先生の鬼! 悪魔!」
この人はお父さんとは別人だけど、人の皮を被った悪魔だよ!
ってか校長先生! なんでこんな悪魔みたいな人を臨時教師として雇ったの!? 全然理解出来ないよ!




