IFシリーズ 宮本綾が中学生になったら プロローグ
今回はタイトル通り、宮本綾の中学生物語です。
すっごく短いですが、とりあえずどうぞ。
ここはとある中学校。
迎える入学式が終わって数ヶ月経ち、一年生は校内の雰囲気に慣れ始める頃だが、放課後の校門でそんなのお構い無しと言うような雰囲気があった。
「里村先輩、アンタ受験生なんだから一年の俺達に構ってる暇は無いと思うんですけど? つーか、一体俺達に何の用っすか?」
「別に受験生だからっていつも忙しいわけじゃない。それに用があるのは鬼灯の後ろにいる綾ちゃんだ」
「ちょ、ちょっと賢君、有幸おに……じゃなくて、里村先輩に失礼だよ」
中学三年生の里村有幸は、中学一年生の宮本綾に声を掛けようとするが、同じく中学一年生の鬼灯賢によって阻止されていた。それにより有幸と賢は険悪な雰囲気になっており、綾がすぐに割って入り仲裁しようとする。そんな三人の光景に、授業を終えて帰宅している生徒達は『また始まった』と内心呆れながら見ており、中には綾に嫉妬する女生徒が一部いるが無視させてもらう。
入学式で会って以来、この三人はずっとこの状態が続いている。事の発端は賢と有幸で、綾は関係無いと思われるだろうが、この二人が険悪な雰囲気になっているのは綾が原因だった。
もう大体察しが付くかと思われるが、賢と有幸はお互い綾に恋愛感情を抱いている。賢は小学校の頃からの付き合いで綾に片思い中で、有幸も去年に当時小学六年生の綾と出会った切っ掛けにより片思い中。賢はともかくとして、有幸は去年まで綾が小学生だからと言う理由で最初は可愛い妹としか見ていなかったが、入学式の際、中学生になり自分の学校の制服を着て色々な意味でまた可愛くなった綾を見た途端、一瞬で一目惚れしてしまった。
「すいません、里村先輩。賢君が失礼な態度を」
「綾ちゃん、そんな他人行儀みたいな呼び方はしなくていいよ。いつも通り、『有幸お兄ちゃん』で構わない。あと敬語もいらないから」
綾を見た途端、有幸はさっきまでの険悪な雰囲気が無くなって普通に接する。敬語で話されると妙に距離が置かれたかのような気分になって普通に接して欲しいと言う有幸に、賢はズイッと綾と有幸の間に割り込もうとする。
「そんな接し方をしたら、他の後輩に示しが付かないっすよ」
「別に構わないさ。俺はそんなのどうでもいいと思ってるからな」
「あっそ。じゃあ俺、綾と一緒に寄る所があるんで」
賢はそう言いながら綾の手を引っ張って何処かへ行こうとするが、
「もう賢君! どうして君はいつも喧嘩腰なの!? アタシいい加減に怒るよ!?」
堪忍袋の緒が切れた綾が怒鳴った。
滅多に怒る事の無い綾に賢は戸惑い、有幸も虚を突かれたような顔をしている。
「べ、別に俺はそんなつもりじゃ……ゴメン」
「アタシじゃなくて里村先輩にでしょ!?」
「………すいませんでした、里村先輩」
「あ、いや、別に俺は……」
綾の剣幕に押された賢が有幸に謝る。有幸は今までの賢の態度はもう慣れていて気にはしてなかったが、綾に怒られたとは言えいきなり謝られると少し複雑な感じだった。
「綾ちゃん、何も鬼灯にそこまで言わなくても……」
「里村先輩もですよ! いくら今まで通りに接するようにって言われても、今のアタシは里村先輩の後輩なんです! 賢君の言うとおり、アタシだけ身贔屓するような事をしたら他の後輩に示しが付きません!」
「う……す、すまない」
今度は自分にも火が飛んだが、正論故に素直に非を認めて謝る有幸。そんな光景に、帰宅しながらも見物していた生徒達も突然の展開に思わず足を止めていた。
それに気付いた綾は自分がとんでもない事をしてしまったと、さっきまで怒っていた様子から一変して有幸に謝ろうとする。
「す、す、す、すいませんでした里村先輩! いきなり生意気な事を言ってしまって……!」
「いや、別に綾ちゃんが謝る必要は……」
「綾、今そんなの後回しだ! 俺ら今完全に見せもん状態だから早く行くぞ!」
「ふぇ!? ちょっと賢君!?」
周囲に見られて居た堪れない気分になってる賢は今すぐこの場から離れる為に、綾の手を掴んですぐさま逃げようとする。賢の行動に綾は戸惑いつつも、されるがまま状態で賢と手を繋いだまま一緒に走っていく。
「おい鬼灯! お前どさくさに紛れて綾ちゃんを連れて行こうとするな!! ってかその手を放せ!!」
不意を突かれた有幸は一瞬遅れてしまい、逃げる賢と綾の後を追いかけて行った。
そして、
「……何よ、あの子。一年のくせに里村君を……!」
一部始終見ていた有幸のクラスメイトの女子が、綾に猛烈な嫉妬心を抱きながら歯軋りしていた。
「絶対に、絶対に許さないわ……!」
マロさん、もし有幸君の喋り方がおかしかったら感想ではなく、メッセージでお願いします。




