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宮本綾ちゃんの職業体験物語 Ⅵ

一ヶ月ぶりの更新です。


それではどうぞ!

「ありがとうございました。またお越し下さいませ……ふうっ。やっと終わった」


「コラ綾ちゃん。その台詞はちゃんと閉店時間になってからだ。まだ五分前だよ」


「あ……ゴメンなさい」


 客が出るのを確認して終わりだと安堵していたウェイターの格好をしてる綾ちゃんに俺が注意すると、すぐに気付いて申し訳無さそうに謝ってくる。


「ちょっと天城君、何もそこまで言う事は無いと思うわよ? さっきのお客さんで最後だったんだから、もう閉店も同然じゃない」


 綾ちゃんを注意した事に、臨時ウェイトレスとして雇っている沢渡が顔を顰めながら俺に指摘した。


「確かにそうだが、閉店時間前だからと言って安堵してる最中に客が突然来る事もある。その油断で客に不快な思いをさせるからな」


「アタシは別に職業体験してる綾ちゃん相手に言う必要は無いって言ってるだけよ。綾ちゃんはまだ小学生なんだから」


「綾ちゃんが小学生だからと言っても、AMAGIの従業員として接客している事に変わりはない。それに俺としては、以前俺が仕出かしたミスを綾ちゃんにやって欲しくないから注意しただけだ」


「え? 俺が仕出かしたミスって……」


「まだ俺が父さんに教えてもらって多少慣れていた時に、綾ちゃんみたいに気を抜いた直後客が来てミスをしてしまってな」


 その後は言うまでもなく、俺の態度を見た客は不快な顔をして、それを見た父さんがすぐに謝った。その後には父さんから、『今後はもうあんな事しないようにね』と怒られたのは言うまでもない。


 因みに父さんも俺と同じミスをした事があり、その時の俺を見て昔の自分を見てたような感じだったと言っていた。


「……貴方にそんな事があったのね」


「アタシ、いつもちゃんとこなしている修哉お兄ちゃんがミスをするなんて思わなかった」


「誰だってミスはするさ。ってな訳で、俺が言いたいのは最後まで気を抜かないようにって事だ」


「……確かに天城君の言うとおりね」


「はい、気を付けます」


 さっきまで不満気だった沢渡は納得し、綾ちゃんもミスをしないようにと心がけた様子だ。誰だってミスはしたくないからな。


 そして五分後には今度こそ本当に閉店時間になって、俺と沢渡は店を閉めて掃除を始め、綾ちゃんは奥で父さんと話している。


「今日は来てくれてありがとな、沢渡」


「どういたしまして。けどあのお爺さんたち、結局来なかったわね。いつでも迎撃出来るようにエアガンを用意していたのに」


「ああ、それなんだが……どうやらあの老人共は昨日から警察に捕まっているらしいぞ」


「え? 警察って……どう言う事なの?」


「俺が夕方前に休憩してる時、ケータイで錬からメールが届いてな」


 休憩室で錬からのメールの内容文には、『迷惑爺共は昨日俺が成敗しておいたから』と書かれていた。その文を見て、錬が何かしらの手を使って迷惑老人共を撃退して来ないようにしたのだろう。錬の行動に俺は笑みを浮かべながら内心感謝し、『助かった。お礼に今度店に来たらケーキ奢る』と返信した。それを沢渡に説明すると、掃除をしながら珍しそうな顔をしていた。


「ふ~ん。あの彼が人助けをするなんて意外ね」


「別に錬は女だけしか助けないって訳じゃないんだが」


 因みに沢渡は錬の事を知っている。以前に感想板……じゃなくて沢渡が客としてAMAGIに来た時に、錬は沢渡を見て早々ナンパされたのだ。当然沢渡は断り、『アタシは貴方に興味無いし、好きな人がいるからお断りよ』と言って錬は速攻でフラれた。余りのフラれ早さに撃沈された錬に俺がすぐに慰めた後、そのままトボトボと帰ってしまったが。


「アイツのおかげで迷惑老人共が来ないだけじゃなく、沢渡だって何事も無く綾ちゃんと一緒に仕事出来て良かったろ?」


「まぁ、そこは認めるわ」


「お前も錬に礼をする為にデート位してやったらどうだ?」


「お断りよ。アタシは好きな人としかデートしないの」


「……そうかい」


 やれやれ、ちょっぴり錬が気の毒に思ってきたな。


 そう思っていると、奥にいた父さんがコッチに来た。


「沢渡さん。息子の修哉からの頼みとは言え、今日一日ウェイトレスとして働いてくれてありがとう」


「気にしないで下さい。アタシが好きでやっただけですから」


 よく言うよ。最初ウェイトレスの仕事はあんまり乗り気じゃなかったのに、俺が綾ちゃんの護衛と言った直後すぐ了承しただろうが。おまけに休憩の時には綾ちゃんと二人っきりの時間を楽しんだ上に、自分の家に来るようにさり気なく誘ってもいた。


 沢渡も絵梨や里村と同様に綾ちゃんの事となると迷いもせずに即決断するんだよな。ま、それだけ綾ちゃんの事が大好きだって証拠だ。何たって自称“綾ちゃんの姉”だし。綾ちゃんってホント色々な人に愛されているな。殆どが綾ちゃんより年上だけど。


 俺がそう思っていると、父さんは沢渡に自給を渡そうとしていた。


「一日分の自給だけど、臨時で来てくれた分の色を付けておいたから」


「ありがとうございます」


 って事は一日分の自給より少々上って事か。そう言えば里村は……ウェイトレスとして雇ってないし、綾ちゃんの仕事の邪魔ばかりしてたから必要ないか。


「それと良かったら、今日は家で夕食を食べていかないかい?」


「いや、アタシは別にそこまでは……」


 丁重に断ろうとする沢渡だったが、


「綾ちゃんも仕事を手伝ってくれたお礼として、君に料理を披露したいと言ってね」


「仕方ありませんね。ではお言葉に甘えさせて頂きます」


(切り替え早っ!)


 今日の夕食が綾ちゃんの手料理だと分かった瞬間に撤回するのであった。


 そして、


「はい、美咲お姉ちゃん。シーフードカレーを多めに作ったからおかわりはいつでも良いよ」


「ありがとう綾ちゃん。こんな美味しいカレーを食べれるアタシは幸せよ」


「修哉、あの二人は姉妹みたいに凄く仲が良いね」


「綾ちゃん限定だけどな」


 リビングで綾ちゃんが作ったシーフードカレーを味わって食べており、父さんと俺は二人を見ながらカレーを食べた。


 その後、綾ちゃんが家で学校の宿題として提出する職業体験レポートを書いている最中に沢渡が手伝って夜遅くまでかかってしまい、此処に綾ちゃんが泊まる事になり、更には沢渡も綾ちゃんと一緒に泊まる事になった。その時の沢渡は滅茶苦茶幸せそうな顔になり、沢渡は後日『綾ちゃんと一緒にご飯食べたり風呂に入ったり、そして一緒に抱き合って寝れたのは幸せの一日だった』と言っていた。


 して翌日の夕方には、


「テメェ天城! よくもアタシを見捨てやがったな!」


「天城君!! 何であたしを呼ばなかったの!?」


「……里村と絵梨。お前等はいきなり店に来て何を訳の分からん事を言ってるんだ?」


「惚けないで! 美咲ちゃんから聞いたよ! 昨日は綾ちゃんが此処で職業体験する為の護衛役をしたって! しかも綾ちゃんと一緒に寝泊りもしたそうじゃない!?」


「美咲ちゃんの自慢げな顔を見てアタシ達、物凄く殺意を抱いたぞコラァ!」


 沢渡から話しを聞いた里村と絵梨がAMAGIにやって来て俺に文句を言ってきた。


 余りにも五月蝿すぎる二人に俺はさっさと帰らせる為にある偽情報を教えようとする。


「沢渡から話しを聞いたんなら、今日の放課後にアイツが綾ちゃんと一緒に街に行くって事も聞いたのか?」


「「……え?」」


「ああ、よく考えてみれば沢渡が二人に教える訳がないか。悪い。今の話は聞かなかった事に――」


「するわけないでしょうが~~!!」


「待ってて綾ちゃん!! アタシ達がすぐに綾ちゃんを助けに行くから!!」


 俺の偽情報に二人はアッサリと信じてしまい、AMAGIからさっさと出て行った。


「………アイツ等って綾ちゃんの事となるとホントに単純だな。正解は沢渡が綾ちゃんを自分の家に招いているんだよ、おバカさん達」

一先ずこの話はこれで終わりです。

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