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独立エンブラ学園 緊急事態発生!

今回は来牙達の通う学園に一波乱が起きます。


それではどうぞ!

 ここは独立エンブラ学園。


 2-2の教室にいる二人の生徒がこう呟く。


「悪夢だ。俺様の自由が……あいつ等に奪われやがった……!」


「何でよ……このエンブラ学園は自由な校風なのに……どうしてあんな連中がこの学園に来るのよ……!」


 遊佐(ゆさ)(かける)里村(さとむら)有紗ありさはこの世の終わりみたいに絶望しきった顔で席に着いていた。


 そして、


「さあ皆ぁ~、今日も授業をやるわよぉ~。言っておくけど脱走なんておバカな事は考えちゃダメだからねぇ~」


『嫌だぁ~~~~~!!!』


 一人の教師が2-2に入って来た事により、教室にいた生徒の大半が悲鳴を上げるのであった。


「はあっ……よりにもよってアレ(・・)が俺達の副担任とはな……」


「あの先生が副担任だって知った時は最初嫌だったけど……意外と授業は分かり易いのよね」


 悲鳴を上げていない宮永(みやなが)来牙(らいが)沢渡(さわたり)美咲みさきは思った事を口にする。


 何故この二人がこんな事を言ってるのかは………全ては一週間前の出来事から始まった。







~宮永来牙視点~




「朝っぱらからいきなり校長の呼び出しで全校集会とはな」


 俺達は朝のHR(ホームルーム)で担任に全校集会があると言われて体育館にいる。


「いいじゃねぇかよ来牙。授業より楽だからよ。あのピエール校長の事だから何か面白い事をやるに違いないぜ」


「けどアタシとしてはゲーム出来ないのがちょっとね」


 俺の呟きに翔があの西洋かぶれの校長に何か期待しており、有紗はゲームが出来ない事に残念がっている。


「けどあたしとしては全校集会があっても全然構わないよ。来牙君と一緒にいられるからね」


「あのね絵梨ちゃん、ここは二年生の列なのよ。貴方は一年生の列にいるべきなんだけど」


「…………………」


 俺の腕に引っ付いている絵梨に対して、美咲が顔を顰めて指摘していた。その美咲の隣にいる神埼は絵梨の行動に呆れていたが、口を出す気が無いようだ。


「良いじゃない美咲ちゃん。一年生が二年生の列に並んじゃいけないなんて決まりは無いんだから」


「貴方って人は……。来牙君、少しは絵梨ちゃんを叱ったらどうなの?」


「そう言われてもな」


 正直、俺は絵梨のやる事に口を出す気は無いんだが。


「来牙君がいつも絵梨ちゃんを甘やかしてる所為で、周りの事を考えないでこんな行動してるのよ」


「あたし誰にも迷惑なんて掛けてないもん! あたしはただ来牙君の傍にいたいだけなんだから!」


「………はあっ。もう勝手にしなさい」


 絵梨の台詞に呆れ顔になってる美咲はもうどうでもいいかのように言ってそっぽを向く。


「えへへ~。これで邪魔者がいなくなったね、来牙君」


「本当に来牙君と絵梨ちゃんは仲が良いんだね」


「相変わらず絵梨は来牙一筋だな。羨ましいもんだぜホント」


 俺の腕を更にギュッと抱き付く絵梨を見た有紗と翔がそう言ってると、


「そこにいる宮永の妹。何故お前が二年生の列にいるんだ?」


「うげっ! 西郷先生!」


 西郷の登場により絵梨が物凄く嫌な顔をした。


「お前のいる所は此処じゃない。早くあそこの一年生の列に戻れ」


「あ、あの、あたしは来牙君の妹ですからお気になさらず……」


「妹だからと言って理由にはならんぞ」


「え、えっと、ですからあたしは……」


「言い訳を考えてる暇があるなら、さっさと自分の持ち場に戻るんだな。それが嫌なら後で生徒指導室へ――」


「来牙君! また後でね!」


 西郷が生徒指導室と言った直後、絵梨は俺から離れて一年生の列へ戻って行った。流石の絵梨も西郷の説教は嫌みたいだな。


「ったく、アイツは集会がある度にいつもコッチに来る。宮永、お前も妹の行動を黙って見てないで何か言ったらどうだ」


「すいません。以後気を付けます」


 どうやらこれは絵梨に言っておかないとその内、俺まで西郷の説教をやらされる羽目になりそうだ。絵梨には悪いが、以後はちゃんと言っておくとするか。


 そう思っていると西郷は元の位置に戻り、全校集会がようやく始まった。


『え~~……おはようございます。本日皆さんを呼んだのは――』


 西洋かぶれの校長が壇上に立って言ってるが……何か様子が変だ。


「おい来牙、あの校長なんか変じゃねぇか?」


「教室で見た時とは全然違うよ」


 俺だけじゃなく翔や有紗も気付いていた。当然だ。俺達2-2の生徒は校長のおかしな登場の仕方や発言をするのは知ってるからな。それがあんな普通に演説をしているのがおかしいにも程がある。


「アタシの気のせいかしら? 何かあの校長……妙にやつれてる感じがするし」


「……何か遭ったのかな?」


 他にも美咲や神埼も校長の行動に疑問を抱いており、他の生徒達も同様に不可解な感じだった。


 そんな俺達の疑問を余所に校長は演説を続けている。


『そ、それでは……今日から一ヶ月間、臨時教師として入っていただく先生方をご紹介します』


 校長がそう言うとスーツを着た筋肉質の男二人が壇上に上がった。一人は丸坊主のダンディそうな男と、もう一人は……俺の気のせいか? 家の爺さんらしき人が壇上に立っているんだが。恐らく絵梨もあの爺さんを見て俺と同じ事を考えているだろう。


『えーあーうー……え~、私が臨時教師として入ったロー……ではなく、吉田源一郎と申します。以後お見知りおきを』


『そしてワシは宮本竜三じゃ。こんな老人じゃが宜しくのう』


 あの吉田と言う臨時教師はともかく、宮本って爺さんは家の爺さんと関係無さそうだな。見るからに家の爺さんと違って誠実で好々爺って感じがする。


「何だよ。オッサンと爺さんが来たのか。てっきり美人女教師が来ると思って期待してたにガッカリだぜ」


「それはあくまで遊佐君の願望に過ぎないでしょ」


 臨時教師が女ではないと分かった翔は首を横に振りながら溜息を吐いていると、即座に美咲が突っ込む。


「にしてもあの校長はホントにどうしたんだ? てっきり何か面白い事をやると思ってたんだが」


「確かにな。あそこまで大人しいのはかえって不気味だ」


 話題を変えた翔に俺も頷く。本当に一体何が遭ったんだ?


 そう思っていると、全校集会は終わって俺達は自分の教室に戻る。


 そして、あの臨時教師二人により、独立エンブラ学園の象徴である“自由”が崩壊していくのを俺達はまだこの時知らなかった。ま、俺にはあんまり関係無い事だが。

次回、臨時教師二人がどうなるのかはお楽しみに!

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