表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

宮本綾ちゃんの職業体験物語 Ⅳ

「妙だな。もう昼過ぎだと言うのに、あの迷惑老人共が何故未だに来ない……?」


 昼食を終えて数時間経ち、既に夕方頃になっているにも拘らず、来店してこない迷惑老人共が来ない事に俺は疑問を抱いていた。


 今は客が大していなく、今はレジで綾ちゃんが対応してる客だけしか店にはいない。


「ちょっとちょっと天城君。あのお爺さん達がまだ来ないってどういう事?」


「それはコッチが聞きたい位だ」


 あの迷惑老人共が来てもすぐに対処できるように、里村を所定の位置に座らせているのだが来る気配が全然無いので一応カウンター席で待機させていた。


 因みに綾ちゃんは今も問題なく接客しているので見てる必要はなく、何か遭ったときにすぐ駆けつける事にしている。


「ま、来ないなら来ないで別にそれで良い。下手に警戒でもして来られたら嫌だし」


「そうだね。アタシの妹の綾ちゃんが穢れずに済むしね」


「いつから綾ちゃんはお前の妹になったんだよ……?」


 けどそれは里村だけじゃなく絵梨や美咲、そして紫苑さんにも言える事だ。今名前を出した四名は綾ちゃんを実の妹の様に可愛がって……いや、様にじゃなくて本当に自分の妹みたく大切にしているんだったな。


 綾ちゃんは一人っ子なんだが、あの四人曰く『綾ちゃんには妹萌え属性がある』だそうだ。妹は分かるが萌えってのが良く分からん。まぁ取りあえず綾ちゃんはそう思うほど可愛くて魅力があるって証拠なんだろう。大抵は年上の相手に好かれるが、な。


「修哉お兄ちゃん、アタシ休憩に入るね」


 カウンターに来た綾ちゃんが俺に声を掛けてきた。


「ああ、分かった。休憩は二十分で良いよ」


「は~い」


 返事をした綾ちゃんは奥の休憩室に行くと、


「綾ちゃん、アタシも一緒に――」


「お前は此処にいろ、里村」


「何で!? アタシは綾ちゃんの護衛役なのに!」


 付いて行こうとする里村に俺が襟首を掴んで阻止した。


「お前の事だ。休憩室の扉に鍵を掛けて誰も入らせないよう、閉店時間まで綾ちゃんと遊ぼうって考えてるんだろ?」


「(ギクッ!)………な、何を言ってるのかな~? アタシがそんな綾ちゃんのお仕事の邪魔なんか――」


「ならゲームやマンガが入ってる鞄を持ってきて休憩室に置いたのは何の為だ?」


「テメェ! 人の鞄の中を見たのか!? プライバシーの侵害だぞコラァ!」


「………適当に言ったつもりだったんだがな」


 コイツが此処に来た時に妙に少し大きな鞄を持って来たなぁと思っていたが、まさか本当にそんな物を持ち込んできたとは。コイツは本当に綾ちゃんの護衛をする気はあるんだろうか? 別に持って来るなとは言わんが、限度があるっての。 


「里村、やっぱチェンジさせてもらう。明日は別の相手を呼ぶ」


「何でだよ!? アタシはちゃんと仕事してるのに!」


「確かにそうだが……お前俺に何回注意されたと思ってるんだ?」


 綾ちゃんが接客してる客の中にはナンパやセクハラをしようとするのがいて、それを里村が引き離しているのだが……問題はその後だ。話し相手になって欲しいかのようにずっと引き止めるわ、俺が近くに通りかかったにも拘らず何か注文しようとする度に必ず綾ちゃんを指名したりで、ハッキリ言って少しばかりイラッとしていた。


「綾ちゃんの仕事の邪魔ばかりしてるようじゃ、これ以上お前に任せるわけにはいかないからな」


「冗談じゃ無いよ! 天城君が何を言おうがアタシは絶対に明日も来るよ! ってかアタシの綾ちゃんに他の護衛役が来てたまるかぁ!」


 と言って断固反対する里村に、


「五月蝿いぞ里村! 店の中で騒ぐんじゃない!(ボゴッ!)」


「痛っ!」


 突然里村の背後から大柄の男性が現れて、里村の後頭部に拳骨をお見舞いした。


「誰だコラァ! 乙女の頭を殴る不届きヤロウ……げっ! 西郷!」


「西郷先生と呼べ!(ボゴッ!)」


「イダッ!」


 再び里村に拳骨をお見舞いする男性。


 俺はどう反応すれば良いのか正直分からず、取りあえず今まで通りに接客をする事にした。


「え、えっと……いらっしゃいませ。一名様のみでしょうか?」


「む? ああ、驚かせてすまない。生憎私は客ではなく、そこの女子に用があってな」


「お、お知り合いなのですか?」


「知り合いもなにも、コイツは私がいる学校の生徒だ」


「それはそれは」


 だとすれば里村が一番苦手な人だろうな。


「ゴラァッ! 何度人の頭を叩くんじゃあ! アタシの脳細胞が無くなっただろうが!」

 

 現にこの人から拳骨を喰らった里村が仕返しをやろうとせずに抗議だけしてるし。


「安心しろ里村。お前がこれ以上頭が悪くなる事はあるまい」


「それが拳骨した野郎の台詞かぁ! 謝りやがれよ!」


「おい、お前は先生相手になんて事を言ってるんだよ」


 キレた里村に大柄の男性教師は扱いがまるで分かっているかのように話題を変えようとする。


「そんな事より、昨日俺が土日の内にやるようにと言った補習の課題を、ちゃんと終わらせているんだろうな? 里村」


「(ギクッ!)………ちゃ、ちゃんと終わらせてるから、今ここにいるじゃんか!」


 里村は痛い所を突かれたかのように少し焦った表情をしていたが、すぐに問題ないかのように言い返す。


 課題って……そう言えば昨日の電話で里村は、『土日は問題無いよ。凄く暇だし』と言ってたが、どうやらアレは嘘のようだな。


 丁度良い。コイツを退場させるには良い口実が出来そうだ。本当は告げ口みたいな真似はしたくないが、綾ちゃんの事を考えればどうってことは無い。


「どう言う事だ里村? 俺が昨日の夕方頃に電話した時には、土日は何もやる事が無くて暇とか言ってたが……?」


「ちょ、天城テメェ! 何でいきなり西郷の前でそんな余計な事を!」


「ほほ~う。それは大変良い事を聞かせてもらったぞ」


「! え、えっとぉ……」


 大柄の男性教師の台詞に里村は冷や汗を流しながらギギギッ、とブリキの玩具ように首を動かす里村。


 その直後、



 ガシッ!



「お前と少し話し合う必要があるな。この喫茶店では迷惑を掛けてしまうから、場所を変えさせてもらうぞ」


「ちょっ!? 折角の休日に説教なんか聞きたくないってのに!」


 里村の襟首を掴んだ大柄の男性教師は何処かへ連れて行こうとする。


「すまないがコイツを連れて行っても良いだろうか?」


「どうぞ。学校は違えど、私も一生徒としては里村の行動は容認できませんので、遠慮なくやっちゃって下さい」


「感謝する」


「てんめぇ天城! アタシを見捨てるつもりかゴラァ!」


 俺の行動に里村はまた口が悪くなって怒鳴ってくる。


「悪いが俺としては庇いきれないな。お前がちゃんとコッチの仕事をしてくれたら話は別だったんだが」


「しただろうが! ってか、アタシはお前が困ってるって言うから来たんだぞ! なのに恩を仇で返す気かぁテメェ!?」


「所々で綾ちゃんの仕事の邪魔をしといて何を言ってるんだか……」


「里村、貴様と言う奴は店にまで迷惑を掛けているとはな。ではそれも含めて話しをするとしよう。行くぞ」


「ちょっ! ちょっとまてよ西郷! アタシはまだそこの奴にまだ用があるんだ! だから放せぇ!」


 有無を言わせないと男性教師は店を出ようとしても、里村が未だに抵抗していた。


 だがそれは僅かな間だけであり、男性教師の凄まじい力で里村の抵抗も虚しく、あっと言う間に何処かへと行ってしまった。


『天城ぃ~~! この恨みは絶対に忘れないからな~~! 覚えてろ~~~!!』


『里村! 人を恨む前に先ずは反省しろ!』


 外から二人の声が響いていたが、十秒ほど経った後はもう聞こえなくなった。


「やれやれ、今日は妙な日だったな」


「修哉、さっきから怒鳴り声が聞こえてたけど、一体何が遭ったんだい?」


「あれ? 有紗お姉ちゃんはどこに行ったの?」


 俺が嘆息してるとキッチンにいた父さん、奥で休憩していた綾ちゃんがカウンターに来る。


「ああ、里村ならさっき……」


 父さんと綾ちゃんにさっきの出来事を説明した後、二人は納得して再度仕事に戻る。


 こうして綾ちゃんの一日目の職業体験は終わるのであった。


 さて、明日は誰を呼ぶかな? 宮永絵梨か沢渡美咲のどちらかだが……どれが最良の選択と言えるだろうか?

有紗退場。


次回は誰が来るのかはお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ