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希望の日常風景 Ⅱ 後編

 試合が始まるかと思いきや、いきなりローズが待ったと手を王牙の前に出した。


「あ、ゴメン王牙ちゃん。この姿じゃまともな試合が出来ないから、元の姿に戻るわ。だからちょっと待って」


「む? そうであったな。ならば早く元の姿に戻るがいい」


「それじゃ………ふんっ!」


 ドスッ! ドスッ!


 ローズは両手の親指で左右の胸のツボを押すと、


「ブルワァァァァァァ~~~~ッ!!」


 全身が見る見るうちに大きくなっていき、筋肉もムキムキと更に膨れ上がっていた。


「ふぅぅぅぅ~~~。待たせたわね王牙ちゃん。さて、始めましょうか」


 先ほどまで身長190cmあったローズは、王牙と同じ3m以上まで伸びた。否、これが今のローズの本来の身長だと言った方が正しく、パワーを存分に発揮できる状態だ。


 ローズは契約の力を得た事により3m以上まで大きくなった。だが医者の仕事もしている事によって何かと不便な事もあり、それを解消する為に契約の力を使って身長とパワーを押さえていた。ちょっとした一種の変身とも言える。


「うむ。さあ掛かって来るが良いローズよ!!」


 元の姿に戻ったローズを見た王牙は、王者の風格を示すかのように待ち構える。


「それじゃあ遠慮なく行くわよぉ~っ! ぶるわぁぁぁぁ~~っ!」








 試合が開始されて五分後、


「ヌウウウウウウウウッ!!!(グググググググ!!!!)」


「ぬおおおおおおおおっ!!!(グググググググ!!!!)」


 ローズと王牙はタックルで相手を倒して技を仕掛けようとしたが、倒れてはくれずお互い抱きついた状態になっても倒そうと必死になっている。


「ウウウウウ!! やるわね王牙ちゃん!!」


「ガアアアア!! お前もなローズ!! 少し見ない内にまた腕を上げたなぁ!」


 2人は共に汗を掻いて血管を浮かび上がらせながらも相手を賞賛する。


 もうついでに二人の全身からは闘気と言うべきか、熱い魂と言うべきか、燃え上がるようなオーラを発生させていて、リングの周囲はサウナと呼んでも良いくらいに暑かった。


『うおおおお~~~っ!!! 凄い試合だ~~~~っ』


『頑張ってローズ様ぁ~~~っ!』


『親方~~~~っ!』


 試合を見てる観客達は暑さなど気にせずに両者の応援をしており、一段と熱気が広がっている。


「凄いな。そろそろどっちかが仕掛けるかと思っていたんだけど、まだ続いているな。ローズさんも王牙さん相手にあそこまで互角にやるとは』


「当然じゃ。ローズは王牙に勝つ為、こっそりと秘密特訓をしておったからのう。因みにワシもその特訓に付き合ったぞ」


「へぇ。それはどんな特訓なんだ?」


「それは内緒じゃ。秘密特訓と言う意味がなかろう」


「そう言わずに教えてよ。俺もやってみたいから」


 竜太や雄太との鍛錬を嫌がる和哉であるが、師匠である竜三との修行だと話は別であり、何とか聞き出そうとする。


「うおおおおお~~~っ! 親方~~~っ! 我等に更なる力を見せてくだされ~~~っ!」


「ローズのオッサ~~~ン! アンタの滾るところも見せてくれ~~~っ!」


 和哉が竜三に聞きだそうとしてる中、観客席側にいる竜太と雄太は力一杯二人の応援をしていた。


「もはや此処にいる観客の全員は、司会の俺や解説役の師匠は不要みたいだね」


「ま、ワシ等はあくまで建前上の役じゃからのう。それにこんな熱い試合を見せれば誰だってああなるわい」


 以前の大会でも、こう言った展開になるのはもう当たり前になっているから和哉や竜三はもう何も言わないで静観している。仮に中継と解説をした所で、観客達は誰も聞こうとしないから。


 そんな時、


「ブルワアアアア~~~!!!!」


「ぐっ!!(バタンッ!!)」


 王牙がほんの一瞬気を抜いた隙に、ローズはすぐさま全力で王牙を床に倒して寝技を仕掛けた。それも自慢の大胸筋での王牙の顔を圧迫して。


「ウウウウウウウ!!! さあ王牙ちゃん!! 貴方の敗北が近づいて来てるわよぉ!!(グググググググ!!!)」


「ヌウウウウウウ!!! この程度で負ける俺ではないぞぉぉぉ~~~~っ!!(ググググググ!!!)」


 必死に王牙の両肩をマットに付かせようとしているローズであったが、王牙は逃れようと必死に抵抗している。


「あら素敵ねぇ! この状態でも熱い魂を見せてくれるなんてぇ!! ワタシ嬉しいわぁ!(グググググググ!!!)」


「いつ如何なる時も熱き魂を見せるのは鉄則だぁっ! 負けんっ! 負けんぞぉ~~~~~っ!(ググググググ!!!)」


「グッ! 流石はワタシ達の主ね! でも負けないわよぉ!(グググググググ!!!)」


「それはこっちの台詞だぁ!! ぬおおおおぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~(グググググググ!!!)」


 ローズは更に力を加えており、王牙は意地でも両肩は付かせないと必死に死守している。


 そんな2人の熱い戦いに……。


「凄い。今はローズさんが圧倒的に有利な筈なのに、王牙さんがグイグイと押し返し始めている」


「ふむふむ。これは更に面白くなってきたぞ」


「多分、王牙さんはローズさんから逃れた後、すぐに寝技を仕掛けるだろうな」


 完全に司会と解説をほっぽり出している和哉と竜三は観戦しており、どう言う展開になるかを頭の中で思い浮かべている。


 因みに観客席では、


『親方っ! 親方っ! 親方っ!』


『ローズ様っ! ローズ様っ! ローズ様っ!』


「親方~~~っ!」


「負けんじゃねぇローズのオッサン~~~~~っ!!」


 二人の試合を見て更にヒートアップしていた。


「ローズさん! 最強の座がもうすぐです! 早くフィニッシュを!」


「言われなくても分かってるわよ和哉ちゃ~~~んっ!(ググググググググ!!!)」


「グウウウウウウウ!!!! ワシは絶対に両肩を付けないぞ~~!!!!!(ググググググググ!!!)」


 マイクを使って応援する和哉に、ローズは最後の力を振り絞って王牙の両肩をマットに付けさせようとするが、王牙が嫌だと言わんばかりに激しく抵抗している。


「ローズよっ!! お主の力はこんなもんじゃ無い筈じゃ!! お主の底力を王牙の小僧に見せ付けるのじゃ~!!」


「当然よ~~~っ! 竜ちゃんの為にワタシは絶対に勝~つわよぉぉぉぉ~~~~っ!(ググググググググググ!!!!!)」


「うおおおおおおお~~~~~~っ!!!!! 負けん!! 負けんぞぉ~~~~~~っ!!!!(グバァッ!!)」


「!!! な、何ですって!?(バタンッ!!)」


 突然王牙は固め技をしているローズの腰を片手で掴み、全腕力を片腕に集中したのかローズを持ち上げて投げ飛ばした。


 常識的に考えて普通は無理な筈なんだが、王牙はその常識を覆し、


「うおおおおおおおお~~~~~~!!!!!!!(ガシッ!!!)」


「!!! しまった!!!」


 投げ飛ばされたローズの意識が朦朧としている隙をついて、王牙はお返しと言わんばかりにローズがさっきまでやっていた寝技を使った。


 王牙の汗まみれの大胸筋がローズの顔を圧迫する。


「形勢逆転だなローズ~~~!!!!!(ググググググググググ!!!!!)」


「ヌウウウウウウウ!!!! わ、ワタシとした事が~~~!!!!(ググググググググググ!!!!)」


 寝技をしていたローズから王牙に変わると……。


「わおっ。まさか本当に俺が言うとおり、ここで王牙さんが引っくり返したよ」


「当たり前だ和哉~~~っ! 親方が負けるなんてありえないんだ~~~っ!!!!!!」


 和哉の台詞に竜太が反応して当然のように言い返す。 


 そして王牙は……。


「これで最後だ~~~!!!!!(ググググググググググググ!!!!!!!)」


「まだまだよ~~~~~!!!!!(グググググググググググ!!!!!!!)」


 勝負を決める為に残った力を最後まで出し切ってローズの両肩をマットに付けさせる。しかしローズも負けておらず、両肩を付かない為に必死に抵抗している。




 この状態が数分続き、




「意地を見せて下さいローズさん!!! チャンピオンベルトが待ってるぞ~~~!!!!!!」


「親方~~~~!!!! 決めて下され~~~!!!!!!!!」


「ローズ!! ローズ!! ローズ!! ローズ!!」


「親方っ! 親方っ! 親方っ! 親方っ!」


「ローズ!! ローズ!! ローズ!! ローズ!!」


「親方っ! 親方っ! 親方っ! 親方っ!」


 和哉と竜太は声が枯れるまでずっと応援していた。


「頑張るのじゃローズっ! ここで熱き男の魂を見せるのじゃ~~~っ!」


「おっさん~~~~~っ! 頑張ってくれぇぇぇぇぇ~~~っ!」


 竜三と雄太も同様に応援をしており、会場全体もローズ、親方コールが響いていた。


 そして、


「ウオオオオオオオオオオ~~~~~~~~!!!!!!!!!!(グググググググググ!!!!!)」


「ギギギギギギギギ!!!! も、もう……!!)」


 王牙はでかい雄叫びを上げながら渾身の力で押し切り、ローズは限界に達したのかマットに両肩を付こうとしている。


 だが、



 ブ~~~~ッ! ブ~~~~ッ! ブ~~~~ッ!



『!!!!』


 突然のでかいアラーム音に観戦していた観客達が何事かと思い周囲を見回した。


「た、大変です親方~~~っ! テロリスト集団、大地の賛美者が俺達のナワバリの一部に襲撃してきました~~~!!」


 慌てて会場に入って司会席に来た希望の系譜の一人がマイクを使って報告した途端、王牙たち契約者達は直ちに会場を出て本部へと戻った。

旅人『ってな訳で、今回の試合はテロリストの横槍が入った事により中断です』



次回はマロさんの方の更新をします。

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