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希望の日常風景

今回は秋雨さんの方の話を出しました!


それではどうぞ!

「うおおおお~~~~!! この熱き魂と闘志! 誰にも負けぬわぁ~~!!」


「やかましい竜太。お前は静かに訓練する事は出来んのか?」


 此処は美徳側である希望勢のナワバリの一つである鍛錬場。そこでは二人の少年が鍛錬をしていた。


 一人は希望の上級系譜、熱血の契約者である赤羽竜太。右手のハルバードと左手の片手剣を振るって攻撃している。


 対するもう一人の少年は希望の下級系譜、信念の契約者である神代(かみしろ)和哉(かずや)。竜太の攻撃を手に持ってる鉄棒で攻撃を防いでいる。


「声を出さねば熱くなれんではないか! お前も声を出せ! でやああああ~~~っ!」


「周りに響くから止めろ。ふっ!」


 竜太の攻撃を防ぎながら突っ込む和哉。その直後には和哉が反撃を仕掛けて、攻防の立場が変わった。


「おおう! やるではないか和哉! 自分の攻撃をこうも簡単に防いで反撃するとは!」


「普段からお前と訓練してりゃ、こんなのいつの間にか出来るっての」


 竜太の賞賛に和哉は冷静に返す。


 けれど上級系譜である竜太が下級系譜である和哉に押されて互角な戦いをする事は先ずあり得ない。本来であれば下級系譜の和哉はすぐに負けてしまう。


 だがこれはあくまで鍛錬であり、二人は契約の力を一切使わず、ただ純粋に己の持ってる武器だけで鍛錬している。上級系譜と下級系譜では力の差があり過ぎるから、こうでもしないとまともに鍛錬する事は出来ない。


 尤も、竜太としても武器のみでの鍛錬は好きであるから、この鍛錬に何の不満は持っていない。寧ろこれは自分から和哉に、そうお願いをしたのだから。


「流石は我が友! そうでなくては面白くない! うおおおお~~~っ!」


「って危な! 竜太! 契約の力を使うなって言ってるだろうが!」


「この程度の攻撃、和哉なら問題無かろう!」


「俺とお前ではまだ力の差がある事をいい加減に理解しろ!」


 最早鍛錬でなく、契約の力を使った実戦同然の戦いをしてくる竜太に和哉は防戦一方になり始める。


「くっ! こうなったら……!」


 これ以上は本当に不味いと判断した和哉は、


「どらああああ~~~っ!」



 フッ!



「んなっ! か、和哉が消え……って違う! これは『疾足(しっそく)』か!」


 竜太の攻撃を避ける為の高速移動歩法を使って姿を消した。


 いきなりの展開に驚く竜太だったが、すぐに和哉が高速移動歩方を使った事に気付いて周囲を見渡す。そして鍛錬場の出入り口に和哉がいた事に気付いて怒鳴る。


「こら和哉ぁ! まだ勝負は付いてないのに何処へ行こうとする!?」


「やかましい! これ以上お前とやったら怪我どころじゃ済まないんだよ! 悪いが退散させてもらう!」


「逃すかぁ~~! 最後まで自分と勝負しろ和哉ぁ~~!」


「勝負したかったら俺の師匠とやってくれ! じゃあな!」


 “噴射槍(ジェットランス)”を使ってすぐに捕まえようとする竜太だったが一足遅く、和哉が再び『疾足』を使って鍛錬場を後に逃亡した。


 その事に竜太は、


「逃さんぞ和哉ぁ~~!」


 逃げられたにも拘らず、絶対に捕まえようと奮起して鍛錬場から出るのであった。






 場所は変わり、


「はあっ……! はあっ……! ったくあのバカと来たら……! 一度火が点いたら止まらないのがアイツの悪い癖だ……! まぁ取り敢えず何とか撒けたから良いが……」


「和哉ちゃん、だからと言ってワタシの仕事部屋に来られても……」


「ハッハッハッハ! あのやんちゃ坊主から逃げるとはまだまだじゃのう、和哉よ」


 和哉が逃亡して辿り着いた所は医務室だった。


 そして此処には筋肉隆々である巨漢のオカマと好々爺が仲良く囲碁をしている。


 和哉ちゃんと親しみを込めて呼ぶ巨漢のオカマは希望の上級系譜、不屈の契約者であるローズ。彼は希望の勢力の中での屈指の医療スペシャリストであり、同時に前線で戦う医療兵でもある。契約者1である色欲の花柳月には劣るが、契約者になる前から医者でもあった為にそれなりの実力を備えている。


 好々爺は希望の上級系譜、信条の契約者である宮本竜三。至上最年長の契約者で、神代和哉の師匠。老人でありながらも常に最前線で戦い、それにより周囲からは“スーパー爺ちゃん”と呼ばれている。


 若い世代が中心である契約者社会の中で、ローズや竜三は初めかなり浮いていた存在だった。だが二人は弱き者を助ける為、守る為に一切の恥や外聞をかなぐり捨てて一から努力し、今現在それらが実って上級系譜となり、希望の勢力からも信頼を得ている。


「仕方ないだろ。上級系譜のアイツが本気で来られたら、下級系譜の俺はやられるのが目に見えてるんだから」


 そんな二人に和哉は手を頭の上に置きながらウンザリ気味に言う。


 歳が離れてタメ口を使う和哉に、ローズや竜三は全然気にしていない。ローズにとっては和哉を息子のように見ており、師匠である竜三は普通に話せと言われているから。和哉自身もローズや竜三を家族のように接してるので、普段からこんな感じなのだ。


「あの猪武者の竜太をどうにかして欲しいよ、ホント」


「じゃあ和哉ちゃんは想像出来る? 冷静沈着なスタイルで戦う竜太ちゃんを」


「え? そりゃあ………(ブンブンブン!)ダメだ! アイツがクールに戦う姿は想像出来ない!」


 ローズの問いに和哉は想像してみたが、とても竜太とは思えない位の別人になってしまうので無理だった。


「まぁあの坊主は根っからの熱血じゃからのう。寧ろアレが丁度良いとワシは思うわい」


「そうは言うけどな師匠。アイツは少し加減って言葉を理解して――」



 バンッ!



「此処に居たか和哉! 見つけたぞ!」


「げっ!」


 和哉が言ってる最中、医務室の扉がいきなり開くと武器を持った竜太が現れた。それにより和哉は凄く不味そうな顔をする。


「今度は逃さんぞ! さあ勝負だ和哉ぁ~~!」


「冗談じゃない! お前と真剣勝負なんてしたら俺の身が持たん! 勝負するなら雄太と戦え!」


 そう言って和哉はすぐに窓を開け、そこから脱出して『疾足』を使う。


「むぅあてぇぇぇぇぇっ!」


 竜太もすぐに窓から医務室を出て和哉を追いかけた。


「全くあの子達は。ここは医務室なんだから騒がないで欲しいわ」


「ハッハッハッハ。まぁ良いではないかローズよ。若いのはあれ位やらねば。まぁ和哉には後でワシの方で修行をさせるかのう。ほれローズ、碁の続きをするぞ」


「竜ちゃんは本当にマイペースねぇ。それじゃ」


 竜三の台詞にローズは少し呆れながらも囲碁を再開するのであった。







おまけ



「む? 何やら騒がしいのう」


 仕事の休憩時間中に少し散歩をしている希望の契約者、鳴神王牙が周囲を見回した。


 そして、


『待てぇ和哉ぁ~~~っ! 最後まで自分と勝負しろ~~~!』


『何度も言わせるな! お前が本気で戦ったら俺が死ぬって言ってるだろうが!』


『おい竜太ぁぁ~~! 俺も混ぜろやぁ~~~!』


『何で雄太も俺を追いかけてんだよ! お前、メガホースの世話はどうした!?』


『お前が竜太と熱く滾る勝負をするって聞いて黙っている訳ねぇだろぉぉぉ~~! ってな訳で勝負だ和哉ぁ~~っ!』


『ふざけんな! お前まで混ざったら俺は確実に死ぬだろうが!』


『和哉ぁ~~っ! 自分を差し置いて雄太と勝負するとは許さんぞぉ~~っ!』


『お前は人の話しを聞いてないのか!? 少しは周りの話しを聞けこの熱血バカ!』


『それほどでもない!』


『褒めてねぇよ!』


 全速力で逃げる和哉に、全速力で追いかける竜太と雄太を見つけた。


「ハッハッハッハ! 流石は和哉だ! 二人を相手に鍛錬とは見事じゃ! これを機に更に精進せい!」


 三人の姿を見た王牙は豪快に笑いながら和哉に激励を送るのであった。

次も秋雨さんの方を更新します。

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