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ダメオタの愚痴と独占

スランプ以前に今年の夏が非常に暑くて執筆意欲が欠けちゃってます~。


今回は短いお話ですがどうぞ!


「それでね店長さん! 西郷は極め付けに生徒のアタシに暴力を振るうんだよ!」


「はあ……色々と大変なんだね」


 私――天城聖也はお客である里村(さとむら)有紗ありささんの愚痴を聞いていた。


 彼女は時折私の店に顔を出しては、ケーキを食べながら学校で起きた出来事を不満気に言っている。話しを聞いてるだけは主に里村さんの自業自得だと思うけど。


「エンブラ学園は自由な校風である筈なのに、西郷ったらアタシのやる事に一々口を出してきて……!」


「自由とは言っても限度はあると思うけど?」


「店長さん、そうは言ってもあの西郷はホントに酷いんだよ! 乙女を殴る時点でもう懲戒免職モノだよ!」


「まあそれは……」


 普通なら訴えると思うけど、とても里村さんの味方にはなれない。彼女は授業を受けないで堂々とゲームしたり、補習を逃れる為に抜け出すなんて色々な事をしてるからね。


「おまけに家の鬼婆もスパルタな上に暴力を振るってくるし!」


「コラコラ、里村さん。自分の母親を捕まえて鬼婆なんて言っちゃいけないよ」


 母親、か。もし妻の香奈枝が生きていたら修哉はどんな風に育っていたかな。


「あ~~! 思い出しただけでムカつく~~! 店長さん! チーズケーキもお願い!」


「はいはい」


 注文して来る里村さんに私はキッチンに行き、冷蔵庫に入ってるチーズケーキを出して皿に乗せた。そしてすぐに彼女のいる所へとチーズケーキを持って行く。


「どうぞ」


「来た来た♪(パクッ)……う~ん美味しい~♪ やっぱりココのお菓子は最高~♪」


「そう言ってくれて何よりだよ」


 私が作ったチーズケーキを食べて嬉しそうな顔をする里村さんに笑みを浮かべる。自分が作ったケーキを美味しく食べてくれるのは嬉しいからね。


「店長さんって料理だけじゃなくお菓子も作れるなんて凄いよね~。喫茶店よりレストランかケーキ屋さんの方が良いんじゃないの?」


「料理やお菓子はおまけで出しているに過ぎないよ。此処はコーヒーがメインだからね」


「おまけって言うけどさ。こんなに美味いとそこら辺のお菓子屋さんなんか目じゃないと思うんだけど?」


「いやいや。私なんか本場のパティシエに比べたらまだまだだよ」


 趣味で作ってる私と違うからね、パティシエは。


 そう思っていると、



カランカランッ



「こんにちは~聖也おじちゃん」


「ああ、綾ちゃんか。いらっしゃい」


 綾ちゃんが来た。同時に里村さんが綾ちゃんを見ている。


「あら綾ちゃんじゃない、久しぶり~」


「有紗お姉ちゃん、こんにちは」


 里村さんを見た綾ちゃんはすぐに挨拶をしながらコッチに来た。


「あ~~久しぶりに綾ちゃん成分を充電しなきゃ~(ギュウッ)」


「うわっ! ちょ、有紗お姉ちゃん……」


 綾ちゃんをすぐに抱き締める里村さん。どうやら彼女は綾ちゃんの事を知っているみたいだね。


「里村さんは綾ちゃんのお友達なのかい?」


「いやいや店長さん、友達じゃないよ。アタシは綾ちゃんのお姉さんだから」


「ふ~ん」


 どうやらまた綾ちゃんのお姉さんがいつの間にか増えちゃってるようだね。この間は綾ちゃんによく似た女の子が姉だって豪語してたし、緑髪のセミロングの女の子も同じ事を言ってた。まあ綾ちゃんは妹みたいに可愛いから無理もないか。


「有紗お姉ちゃん。ちょ、ちょっと苦しいよ~」


「え? ご、ゴメン綾ちゃん!」


 綾ちゃんが苦しそうに言うと里村さんは即座に離れて謝る。


「いつも思ってるんだけど、どうしてお姉ちゃんはアタシを見てはすぐに抱き付くの?」


「だって……綾ちゃんが凄く可愛いんだもん。それに綾ちゃんを抱き締めると幸せな気分になっちゃうの」


「そ、そうなの?」


「そうなのよ。でもさっきはホントにゴメンね。お詫びにケーキを奢るから」


「何もそこまでしなくても」


「良いの良いの。店長さん、アタシの可愛い『妹』の綾ちゃんにショートケーキを一つ」


「はいはい」


 やたらと妹を強調する里村さんだが、私はそれに突っ込まずに再びキッチンに入ってショートケーキを用意する。


『ほ、ホントに奢りで良いの? アタシは自分の分は払うけど』


『気にしないで。お姉ちゃんにそんな遠慮なんかしないで頼って良いんだから』


『あ、ありがとう、有紗お姉ちゃん。今度お礼にアタシが有紗お姉ちゃんにご飯作るね(ニコッ)』


『ああ~~もう! 何で綾ちゃんはこんなに可愛すぎるのよ~! もういっそホントにアタシの妹になって~!』


『わぷっ! ちょ、有紗お姉ちゃ~ん』


 やれやれ。里村さんはもう完全に綾ちゃんを溺愛しちゃっているみたいだね。


 そう思いながら私は綾ちゃんにショートケーキが乗った皿とジュースを置く。


「はい綾ちゃん、ショートケーキだよ。それとジュースはおまけだよ」


「ありがとう、聖也おじちゃん」


「どういたしまして」


 綾ちゃんはいつも私の店に来る大切なお客さんだから大切にしないとね。それに綾ちゃんの母親である真理奈にも頼まれてるし。


 そして綾ちゃんがケーキを食べると、里村さんは何か思いついたような顔をする。


「ねえ綾ちゃん、良かったら食べさせ合いっこしない? アタシはチーズケーキだから」


「え? でも既にアタシ口付けちゃったし」


「良いの良いの! 寧ろそうした方が……ゴホンッ! アタシはそう言うのは全然気にしないから」


 里村さんの提案に目をパチクリとする綾ちゃん。何かさっき邪な事を考えていたな、里村さんは。


「そ、そうなの? じゃあ先ずはアタシが最初に……(スッ)……はい、有紗お姉ちゃん」


 綾ちゃんはショートケーキの一部をフォークで刺して里村さんの口に運ぶと、


「あ~ん(パクッ)……う~ん♪ ショートケーキも美味しい~♪」


 そのまま口を開けて味わうように食べる里村さんだった。


 そして次に里村さんが交代と言わんばかりに、チーズケーキの一部をフォークで刺して綾ちゃんの口へと運んでいく。


「さあ綾ちゃん、あ~んして♪」


「あ、あ~ん……(パクッ)……うん、美味しいね」


 チーズケーキを食べた綾ちゃんに、里村さんは凄く嬉しそうな顔をしている。まるで何か目的を達成出来たみたいに。


「……今日は綾ちゃんの姉を自称する絵梨ちゃんと美咲ちゃんがいないから、アタシが綾ちゃんを独占しないとね……(ボソボソ)」


「? 有紗お姉ちゃん、今なにか言った?」


「いやいや何でもないよ、綾ちゃん」


 里村さんの独り言に私はちょっと危険な感じがした。これってあの二人に連絡した方が良いのかな?

綾ちゃんを独占する里村有紗でした~~!

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