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宮永源三の大バカ領主様 宮永楓の幸せな一時

今回も時代劇を書かせて頂きました。


それではどうぞ!

 此処は城下町の売り物市場。殆どの店が繁盛しており、お客の数もかなり高い市場の一つ。そんな場所に一人の青年が歩いていた。


「全く。あの二人には困ったものだ」


 ぼやきながら城下町を歩く青年は家老。領主の宮永源三……ではなく、宮永楓より休暇を取るようにと言われたので、久々に売り場に行って何か良い物があったら買おうと市場に来ていた。


 だが家老は休みを満喫しようにも、ついつい問題児二名の事について考えてしまう。その問題児とは領主の源三と絵梨の事についてだ。


「領主様は元からアレですが、絵梨姫様は私が出した学問の課題を全然やりもせずに来牙様と遊んでばかり……はぁっ。あのじゃじゃ馬姫が……!」


 絵梨の行動にかなり呆れて悪態を吐く家老。注意しても最初は反省している様子を見せるが、結局はすぐにほっぽりだして遊んでしまう。


「来牙様に言っても、あの方は絵梨姫様を甘やかしてしまうし……はぁ。絵梨姫様があんな知識不足で嫁がれてしまったら、宮永家の恥晒しになってしまう。そうならない為にも絵梨姫様には何としても学問をして頂かなければ」


 再び溜息を吐く家老はどうすれば良いかと再び考える。決して意地悪をする訳でなく、それだけ絵梨の将来の事を考えているのだ。


「こうなったら絵梨姫様がまた逃げ出した時には懲罰部屋に押し込むとしよう。そして見張り役には先日雇ったローズを配置させておくか。よし、そうしよう」


 家老は今後の事を粗方決めると、市場で何か買おうと店を見て商品を見始める。


「お、これは中々美味そうだな。店主、これはなんと言う食べ物ですか?」


「この食べ物は南蛮から伝わった菓子でカステイラって言います。試しに食べてみますか?」


「良いんですか?」 


「構いません。買って頂く前に先ずは試食してから決めて欲しいので」


「では……(モグモグ)……ほう、これはこれは」


 家老は店主から一口くらいの大きさのカステイラ (現代ではカステラ)を食べると笑みを浮かべる。


「ふわふわしてて美味しいですね。店主、よろしければ二つ頂けませんか?」


「かしこまりました」


 カステイラが気に入った家老はすぐに購入。相当気に入った様子に店主も笑みを浮かべてすぐに用意し、何故か三つ渡す。


「? 店主、私は二つ頼んだ筈ですが?」


「試食してすぐに買ってくれるお客様には私からのおまけです。その代わりと言ってはなんですが、今後もご贔屓にお願いします。このカステイラはこの店しか売っていませんので」


「………成程。ではまた寄らせて頂きますよ」


「またのお越しを」


 店主の行動に思わず家老は苦笑気味に言って去り、笑顔で見送る店主であった。


「う~む、流石に一人でこのカステイラを食べるのは無理だから……よし、明日の休憩時に楓さまと一緒に食べるとするか」


 楓と一緒に食べようと決めた家老は次の店を見ていると、


「ん? あの店だけ客が誰もいないな」


 かなり寂れた雰囲気を持つ店を見つけて客が誰も来ない事に少し疑問を抱いた。


 宮永領の家老としては見過ごせないと思い、家老は立ち寄ろうと決めて店に入る。


「……何だこの怪しさ満載な雰囲気は……。これじゃ客も入らないのも頷けるな」


 薄暗い店内に家老が思った事を言ってると、


「ククククク……いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」


「うわっ!」


 突如背後から声を掛けられてビクッと驚いて後ずさった。背後には着物姿で顔を黒の前髪で隠している女性がいた。


「な、なんだアンタは!?」


「驚かせてすいませんねぇ……ククククク……おや? お客様、ひょっとして家老様ではありませんか?」


「な、何故私を……ってその声はもしや、お寮さん?」


 聞き覚えがある声に家老はジッと女性を見る。その女性は先日、源三の側室選びの際に呼ばれた残念美人の寮だった。


「ククククク……そうですよ。私は寮ですよ、家老様………ククククク」


「これはこれは……まさか貴方がこの店にいたとは知りませんでしたよ」


 家老が側室候補を城下町で募集してる際に見つけたから、寮が店で働いている事は知らない。家老としては別に美人だから問題無いかと思って、そこまで深くは聞いてはいなかった。


「此処は私が経営してる店でしてねぇ。けど全然お客が来ないんですよ。どうしてですかねぇ………ククククク」


(そりゃこの店と貴方の雰囲気によって客が近付きたがらないからでしょうが)


 寮の台詞に家老は内心突っ込む。いくら寮が美人でも、妖しげな雰囲気全開名な残念美人な行動をしてては客が一人も来ないのは明々白々。


「で? 一体この店で何を売ってるんですか? 確かお寮さんは医学を学んでいると聞きましたが……」


「はい。私は薬を売ってるんですよ……ククククク……どれも効能な薬ばかりですよぉ……ククククク……。例えばコレは媚薬と言いましてねぇ。コレを飲むと性欲が盛んになって発散しない限りは効力が収まらない代物です。どうです?」


「そんなの要りません」


「そうですか……ではこの精力増強剤はいかがです? 飲むと文字通り精力が増強されて女を抱き放題になります……ククククク。私で試してみますか?」


「お寮さん、それ以上ふざけた事を言うと家老権限でこの店を潰しますよ?」


「…………失礼しました」


 頭に青筋を浮かべて本気だと言う雰囲気を見せる家老に、怪しげな薬を紹介していた寮はすぐに謝った。


「この売り物市場でそんな如何わしい薬を売らないで下さい……(もしあのスケベ爺の領主様が知ったら絶対に立ち寄るのが目に見える)」


「……ククククク……でも効力は絶大ですよ?」


「とにかく、ソレ等の薬はもう売らない様に。良いですね? でないと……」


「………分かりました。家老様がそう仰るのでしたらこの店(・・・)ではもう売りません」


「ちょっと待て。この店って他にも売ってるのか?」


 聞き捨てなら無い台詞を言った寮に家老はすぐに問い詰める。


「……ええ。宮永領から少し離れた所でひっそりと売ってますよ……クククク……それは別に構いませんよね?」


「……………領内で売っていたら取り締まるところだが、流石に領外では無理だな」


「ククククク……ですよねぇ」


 無理だと分かった寮は勝ち誇るかのように不気味な笑みを浮かべる。明らかに分かっていたような感じだ。


 悔しそうな顔をする家老に、寮は別の薬を出そうとしていた。


「……ククククク……では家老様。次にこの薬は如何でしょうか? 今度はさっきまでのような薬ではありません」


「……一応訊こうか」


「はい。これはですねぇ……ククククク……擬人化薬って言います」


「擬人化薬? 何だそれは?」


 聞いた事も無い薬に不可解な顔をする家老に、寮は分かりやすく説明しようとする。


「……ククククク……これを動物に飲ませると人間になるという大変不思議な薬でございます……ククククク……」


「動物が人間に? バカバカしい。そんな非論理的な薬がある訳無いだろう」


「……信じられないのでしたら試してみますか? ほら、あそこにいる犬とか……ククククク……」


「犬?」


「バウバウ! バウバウバウ!!」


 寮が指した方向を見ると、そこには丸々太った犬が檻の中に入っていた。(注:この犬はブルドックの長嶋三番です)


「ん? あの犬は確か市場の食べ物を食い荒らしてる迷惑犬じゃないですか。ここ最近姿が見えなかったと思えば……」


 それと同時に市場で買った客からも食べ物を盗んですぐにトンズラすると言う非常に迷惑な泥棒犬でもある。


 数日前には市場の代表が『迷惑泥棒犬を何とかして欲しい』との要請があって捕まえようとしたのだが、全然姿を現れず手詰まり状態となっていたので断念せざるを得なかった。


「……ククククク……私の店に忍び込んでいたので捕まえたんですよ。とは言っても、餌をぶら下げただけで簡単に引っ掛かってくれました……ククククク……凄く間抜けな犬でしたよ」


「このブサ犬は食い意地が張ってますからね」


「バウバウ! バウバウバウバウ!!」


 寮と家老の台詞に犬が怒鳴るかのように吠えた。だがそんな迷惑犬に二人は気にも留めていない。


「……で、どうします? アレで擬人化薬を試して良いでしょう? 何しろ人に迷惑を掛けている犬なんですから……ククククク……」


「………まぁ良いでしょう。あの犬は市場に散々迷惑を掛けましたからね」


 実験動物にするのは少々頂けないと思った家老だったが、あの迷惑犬が人の為に役立てるなら良いかと思って見過ごす事にした。


「……ククククク……さあワンちゃん。このお薬を飲んで貰いましょうか……ククククク……」


「ババウ!」


 誰が飲むかという風に背を向ける迷惑犬だったが、


「……クククク……ここに焼いたお肉があるけど食べたく無いかい?」


「ばうばう~♪」


「……本当に食い意地の張った犬だな。アレに薬が含まれているのを知らずに食べてるし」


 寮はどこから出したのか焼き立ての豚肉を檻の中に放り投げるとアッサリと食べてしまった。ガツガツ食べる迷惑犬に家老は呆れながら見ている。


 そして迷惑犬が豚肉を食べて少し経つと異変が起きる。


「ウウウウウウ………ウウウ……」


「ちょ、ちょっとお寮さん。本当に人間に変身するんですか? 何やら苦しそうな声を出していますが……」


「……ククククク……まあ見てて下さい。そろそろ……」


 心配そうに言う家老に問題無さそうに答える寮。


 その直後、


「ウウウ……バウ~~~!!」



ボボンッ!!



 突如、迷惑犬の周りから白い煙が爆発するように出た。


「ぺっぺっぺっ! 何だこの煙は!?」


「んなっ!?」


「……ククククク……ほぅら家老様、私の言ったとおりでしょう? クククククククク………」


 そして煙が晴れるとガラの悪そうな中年の男が座っていた事に家老は驚き、自慢げに言う寮であった。

次回は家老があの猫に擬人化薬を飲ませます。


お楽しみに!

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