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宮永源三の大バカ領主様 Ⅳ

三回目



「お爺さん、さっきから家老を隣の部屋に呼んで一体何を話していたんです?」


「な~に、ちょっとした打ち合わせじゃよ」


「では何故側室候補だったあの子を帰したのです? とても良い子だったではないですか」


「いやいや婆さん、あの程度の女子ではワシの側室になれん。もっと厳しく見定めなければいかんからのう」


「そうですか……。……見た目だけで判断してるスケベ爺が(ボソッ)」


「ん? 何か言ったかのう婆さん?」


「何でもありません」


 領主の間にて家老が別の側室候補を連れてきている最中、源三は何でも無いように楓と話していた。とは言っても、楓は源三の考えてる事が手に取るように分かっているが。


「ふわぁ……まだ続くのかなぁ。あたしもう飽きて来たから、部屋に戻って来牙君と遊びたいんだけど……」 


「まだそんなに時間は経ってないんだがな」


 少しウンザリ気味になっており部屋に戻ろうと考えている絵梨に来牙が少し呆れ気味に指摘する。絵梨は基本的に来牙関連の事になると何でもかんでもすぐに首を突っ込むが、それ以外はすぐに飽きてしまう性格なのだ。


「もう少し我慢してろ。これが終わったら後で遊んでやるから」


「来牙君かそう言うなら、もう少し我慢してるね(ギュウッ)」


「っておい来牙! 貴様なに絵梨に抱き付いておるのじゃ! 離れんか!! 早く離れんと厳罰を下すぞ!」


 絵梨が来牙に抱きつくのを見た源三は、気に食わんと言わんばかりに怒鳴った。別に来牙が抱き付いたのでは無いのだが、源三にとっては羨ましい光景だから気に食わない故に八つ当たりをしている。


 既に知っての通り、以前から絵梨は来牙とずっと一緒にいる事によって父親である源三の事を大して見向きもされていない。源三は孫の来牙にはいつも目の敵にしているが、来牙本人にとってはどうでもよくて軽く受け流している。そんな来牙の態度に拍車が掛かってか、源三は何かある度に何でもかんでも来牙の所為にして理不尽とも言える罰を下す事もしばしば。


「いい加減にして下さい、お爺さん。孫相手に何みっともない事をしてるんですか」


「そ、そうは言うけどなぁ婆さん……」


 しかし、その後は楓の鶴の一言によって鎮圧されるのがお約束である。


「ったく。何でアンタはいつも俺を目の敵にするんだよ」


「黙れ! ワシの跡取りだからと調子に乗りおってからに貴様と言う奴は……!」


「別に調子に乗ってはいないんだが……」


 源三の訳の分からない発言に呆れるばかり来牙。と言うか本当にウンザリしていると言った感じだ。


 そんな中、



ガラッ



「領主様、お待たせしま………ん? お取り込み中でしたか?」


 襖が開いて家老が入って来たが、妙な雰囲気になっていたので出直そうかと思っていた。


「気にしないで下さい、家老。お爺さんのちょっとした戯言があっただけですから」


「そうですか。領主様、楓様を困らせるような事は御止め下さい」


「家老! 貴様も貴様で、ワシがいつ婆さんを困らせたんじゃ!?」


「普段からでしょうが。それより側室候補を連れて来たのですが……」


「ん? おお、そうじゃったな」


 家老の発言により、源三は思い出した顔になって落ち着き始める。


「それで家老、今度の女子は本当に美人じゃろうな?」


「左様です。それも領主様好みの――」


「うっほっほっほ~~♪ そうかそうか。ソレは楽しみじゃのう~♪」


「「「…………………」」」


 上機嫌になってスケベ心丸出し顔になってる源三に、呆れて物が言えなくなってる楓達。


「………それでは三人目の者をご覧下さい」



パンッパンッ! ガラッ



 家老も楓達と同様に呆れていたが、取り敢えず側室候補を呼ぼうと手を叩くと襖の扉が開いた。


 そこには、


「(ブツブツブツブツ)………クククク………成程。この理論で行けば良いのか……。ならば次の患者には……実験が楽しみだ……クククククク……(ブツブツブツ)」


 着物を着た美人な黒髪の女性が正座で書物を読んでいてブツブツと呟いていた。それも気味の悪い笑みを浮かべて。


 一見かなりの美人な女性に見えるが、彼女の行動によってソレをダメにしてしまい不気味な存在になっている。


「「「「……………………」」」」


 これには源三だけでなく、楓と絵梨と来牙も引き攣った顔になって無言である。


「ちょっとちょっと、書物を読むのは後にして下さいと申した筈ですよ?」


「(ブツブツ)……え? ……あ、すいません。あまりにも興味深い書物だったので。え~初めまして領主様。アタシは医学を研究してまして、(りょう)って言います……ククククク。噂通り面白そうな顔をしていますねぇ。宜しければアタシの人体実験に付き合ってくれませんかぁ……クククククク………」


「……………(ドン引き)」


 不気味な笑みと恐ろしい事を言って来る側室候補の女性に、流石の源三もメチャクチャ引いていた。


「こ、これはまた……随分と変わった人ですねぇ、お爺さん……」


「ら、来牙君。何か怖いよあの人……」


「こればかりは俺も何とも言えないな………」


 楓達もドン引き状態で正直余り近付きたくない相手と思っており、出来れば早く退散して欲しいと願っている様子である。


(家老、貴方とんでもない人を連れてきましたね)


(意外性を突いたつもりでしたが)


(それどころか度胆を抜かれましたよ)


 楓が家老を少し睨むかのように見ており、家老も答えるかのように楓に目線を向けている。お互い目だけで会話が出来る状態だ。


「領主様、この者は如何でございますか?」


「ククククククク………領主様、アタシを側室に迎える代わりに解剖させてくれませんかねぇ~……クックックック……」


「…………か、家老~。ちょっとカモ~ン」


 チョイチョイと人差し指で呼ぶ源三は家老を連れてまた隣の部屋に移動した。




「どうしました領主様。今度は領主様の言われた通りの美人な女子を連れて来た筈ですが?」


「確かにそうじゃが……このバカタレ!(ブオンッ!)」


「おっと(ヒュッ)」


 源三の拳を難なく避ける家老に源三は更に激昂する。


「あんな残念美人なんかいらんわい!!」


「でも美人に変わりありませんよ?」


「モノには限度があるわい! 第一あの女の頭イカれとるじゃろうが! ってか解剖なんて危なすぎて近付きたくないわ!」


(いやいや、アンタも充分にイカれてるよ)


 珍しくもマトモな台詞を言ってる源三だったが家老は無表情を装いながら内心呆れていた。普段からおかしな行動ばかりしてる源三であるから、家老が呆れるのは仕方が無い。


「もっとちゃんとした女子はおらんのか!? あんな残念美人は絶対に嫌じゃぞ! ワシに従順でエロい体つきをしておる淫乱な美女が良いわい!」


「……………………」


 物凄い我侭な事を言う源三に家老はウンザリ気味になって最後の手段を思索する。


「……そう言うだろうと思いまして、ちゃんと連れて来ましたよ。領主様好みの女子を」


「だったら最初から呼ばんかい! ってか今までの連中は何だったんじゃ!?」


「一応領主様の側室になりたいと仰っていたので連れて来たんですが」


「あんなの呼ばんでもワシが断るのを分かっておったろうが! ったく! お主と言う奴はホントに使えんわい!」


「……(ピキッ!)……それは誠に申し訳ございませんでした」


 本命がいると分かった途端に源三は家老に対して侮蔑の視線を送りながら言うと、米神辺りに青筋を浮かべる家老は声を抑えながら謝罪する。普段から役立たずである源三にそんな事を言われたら誰だって怒るのは当然だ。


 そんな家老に源三は全く気付きもせずに領主の間に戻っていた。


「…………あのクソ爺には本当の生き地獄と言う物を教えてやる」


 物騒な事を毒づく家老は最後の側室候補を連れて来ようと懐から何かを取り出した。





四回目 (これで最後です)




「領主様、最後の候補者を連れて参りました。ご覧下さい」


「うむ」



パンッパンッ! ガラッ



 家老が手を叩くと襖が開き源三はどんな美女かと凝視していると、


「お久しぶりですわぁ~領主様ぁ~。家老様に呼ばれて側室候補として参りましたわぁ~♪」


「ウギャァァァァ~~~~!!!!」


 そこにはパッツンパッツンの着物を着た筋肉隆々で厳つい顔を厚化粧で施したオカマがいた。それにより源三はとんでもない悲鳴を上げている。


「あらあら、どなたかと思ったらローズさんではありませんか」


「ううっ! ら、来牙君、悪いけどあたし退散するね……」


「俺も退散させてもらおう」


 楓は久しぶりの様に声をかけ、絵梨と来牙は関わりたくないのか颯爽と領主の間から退散する。


「家老~~~~!! よくもワシを謀りおったな! もうキサマは絶対に許さん! 打ち首じゃ~~!」


「ローズ、領主様は興奮していますので寝室へお連れしてくれ」


「分かりましたわ家老様……(ガシッ!)さぁ領主様、今からワタシと熱い一時を過ごしましょうねぇ~」


「嫌じゃ~~~~!!!!! 誰か助けてくれ~~~!!!」


 刀を抜いて家老に斬りかかる源三だったが、ローズと呼ばれるオカマによってほんの一瞬で捕まってしまい、寝室へと連行されるのであった。


「如何でしたか楓様?」


「少し予想外な事がありましたが、それなりに楽しませてもらいましたよ」


 そして領主の間に家老と楓しかいなくなると、不敵な笑みを浮かべていた。


「さてと、領主様は暫く使い物になりませんので、申し訳ありませんが楓様に代行を頼んでも宜しいでしょうか?」


「構いませんよ。今回の仕事はお爺さんに任せるわけには行きませんから」


 話題を変えた二人はすぐ仕事の話に入り、先程まで行っていた側室選びの事は全く気にも掛けず仕事を行うのであった。

最後辺りは無理矢理な終わり方でしたが、どうかご了承下さい。

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