宮永源三の大バカ領主様 Ⅲ
「むふふふふふ~。婆さんや~、家老は一体どんな美少女をワシの元に連れてくるかのう~?」
「さあ? 詳しい事はアタシも分かりませんので……。家老、楽しませてもらいますよ(ボソッ)」
側室を迎えると進言した二日後。家老は源三に領主の間で待って頂くように言われ、領主として威厳のある座り方をしていたが、下品な顔になっていてとても領主とは思えない雰囲気丸出しだった。完全に下心丸出しなエロ爺その者である。
源三の隣にいる楓はどうでも良いような感じで言い返していたが、周りに見られないように不敵な笑みを浮かべて独り言を言っていた。
「それにしても家老は随分と思い切った事をしたな。爺さんに側室なんて……」
「ねえ来牙君、側室って何?」
そして源三と楓の右脇には来牙と絵梨が正座して見物していた。二人にとってはあんまり興味無いが、一応は領主の側室迎えと言う事もあって出席している。
「早い話、二号ってところだ」
「あ、そうなんだ。だからお父さんがあんなに喜んでいるんだね」
源三のにやけ顔に漸く納得する絵梨。普通は絵梨の歳であったら知っててもおかしくないのだが、普段から学問をサボって遊んでばかりいるせいで頭がわ……もとい、知識不足である。
そんな絵梨に家老が見るに見兼ねて、無理矢理部屋に連れては強制的に学問をさせている。普段から源三の監視をしてる家老としては、隙あらば逃げようとする絵梨を捕まえるのは造作も無い。
ガラッ
「領主様、準備が整いましたので、お目通りをお願い致します」
襖を開けて領主の間に入った家老は出入り口の少し右辺りに座り礼をする。
「あい分かった。いつでも良いぞ」
「「「……………」」」
ここは領主らしく威厳のある振る舞いをやろうとする源三に、何を今更と呆れた顔をする楓達。
「………それでは先ず、最初の者をご覧下さいませ」
パンッパンッ! ガラッ
家老も楓達と同じく呆れた顔をしていたが、取り敢えず一人目の側室候補を呼ぼうと手を叩く。その直後に二つの襖が開き、そこには正座をして顔を伏せている着物姿の女性がいた。
「苦しゅうない、面を上げい」
源三が笑顔でそう言って着物姿の女性が顔を上げる。
「お初にお目に掛かります。ワタシ、安代と申します。今年で52になります(ニッコリ)」
「………………………」
中年のオバサンと分かった途端、笑顔から一転して信じられないかのように目をぱちくりしていた。見間違いかと思って一応目を擦る源三だったが、結局は何も変わらず中年のオバサンである。
「…………くく」
「……ぷっ……!」
「これは……」
楓と絵梨は顔を横に向けて着物の袖で口元を押さえて笑い、来牙は苦笑いをしている。
「あの、領主様。こんなワタシを側室に迎えて下さるなんて、凄く嬉しいです」
「(ヒクヒク)………………家老よ」
「はい」
「ちょっとお話があるからワシと一緒に来いや」
中年のオバサンの言葉に目を引き攣らせてる源三は家老を呼び、隣の部屋に移動させた。
「何でしょうか領主様? 態々部屋を移動しなくても良いのでは?」
「あのなぁ~家老よ……(ガシッ!)貴様はワシを舐めとんのか! アアン!?」
ヤクザみたいな口調で家老の胸元を掴む源三。
「滅相もありません。それに領主様は年下が好きだと仰ってましたから、領主様より年下の者を連れて――」
「あんなの論外じゃ! いくら年下好きのワシでも50代のババアなんぞ微塵も興味無いわ! ワシが一番好きな年下は10代の美少女と20代の美女じゃ! それくらい分からんのか大戯け者が!!」
「いや、領主様の年齢を考えますとそれは犯罪の様な気がしますが……」
「犯罪が何じゃい! 偉い領主のワシが良いと言ったら犯罪にはならんわい!」
「………はぁっ」
好き勝手な事を言う源三に家老は溜息を吐く。
「さっさとあのババアを帰して来い! まさか他の側室候補たちもあんなのだったら……!」
家老は絶対にそう言うだろうとは予想はしていたようで、
「大丈夫ですよ、領主様。他にもちゃんと領主様の仰るとおりの若い者を連れて来ましたから」
「おおっ! ソレはホントか!? 今度は40代のババアとか出したら、いくら温厚なワシでもキレるぞ?」
後の事を言うと源三は嬉しそうな顔になって手を放し、疑うかのように問い掛けてくる。
「ご心配なく。ちゃんと10代の女子を連れて参りました」
「ほほ~う。ではその者はムッチリしておるか?」
「はい、それはもう」
「うっひょっひょっひょっひょ~~♪ そうかそうか~♪ ムッチリした10代の美少女か~。楽しみじゃのう~。頼むぞ~家老よ~」
機嫌が良くなった源三は気持ちの悪いにやけ顔をしながら、再び領主の間へと戻る。
二回目
「それでは領主様。続いての者をご覧下さい」
「うむ」
パンッパンッ! ガラッ
気を取り直して次の側室候補を呼ぶ為に手を叩くと襖の扉が開く。その奥には着物姿の女性が正座をして頭を伏せている。
「苦しゅうない、面を上げい」
今度はちゃんとした美少女だと思って気分良く言う源三だったが、
「初めまして領主様。オラは遠い田舎から参りました田奈と申すます。歳は今年で15だす(ムチムチ)」
「………………………」
相手が凄い田舎臭い訛りがある方言で体全体がふっくらとした少女であると分かった途端、笑顔のまま固まった。
「あらあら。真面目で中々可愛らしい子ではありませんか、お爺さん?」
笑みを浮かべながら源三に言う楓。内心では固まってる源三を見て楽しんでいるが。
「見て見て来牙君、あの子すっごむぐっ……!」
「絵梨、お前はちょっと静かにするように」
思った事をすぐに言おうとする絵梨に、来牙が絵梨の口を即座に手で塞ぐ。
「どうしただすか、領主様? 気分でも悪いだすか?」
「領主様。いつまでも固まってないので何か仰ったら如何です?」
「………ふ、ふふふふ………」
ふっくら少女と家老が声を掛けると源三は固まった笑顔のまま笑い声を出し、そのまま家老の方に顔を向ける。
「……家老や~、ちょっと来て~♪」
「はい?」
妙に明るい声で呼ぶ源三に、家老は不可解な顔をしながらも言われるままに源三の後を追った。
「今度は何ですか、領主様?」
「ふっふっふっふ~………このバカたれが!!(ブオンッ!)」
「おっと(ガシッ!)」
突然の源三からの拳骨に家老は問題無く受け止める。
「いきなり何の真似です?」
「それはこっちの台詞じゃボケェ! 何じゃあのブスは!? しかもデブではないか!!」
「ですから領主様の仰られた通り、10代でムッチリした女子を――」
「ムッチリ以前の問題じゃ! ってかあんなブサイクデブなんぞ願い下げじゃ!」
「領主様、人を見た目で判断してはダメですよ。あの子はそこら辺の女子と違って、誠実で思いやりのある凄く良い子です。将来は凄い美人に――」
「ワシは将来なんかより今が良いんじゃ! さっさとあのブサイクデブを帰して次の者を呼べい!」
諭す様に言う家老だったが、源三は全く聞き入れてくれなかった。
「………はあっ。分かりました。では次の者を読んで参ります」
まあ家老としてはこうなる事は大体分かっていたので、特に反論はせずに次の側室候補を呼びに行こうと部屋から出ようとする。
「ちょっと待て家老。呼びに行く前に確認させてもらう。次はどんな奴を呼ぶつもりじゃ?」
「20代の女子を呼びに行こうかと」
「………訊くが、さっきのブサイクデブみたいな奴じゃなかろうな? もしそうであるなら、ワシもいい加減にお主を打ち首にしようと考えておるんじゃが」
「ご安心を。次はちゃんとした美人な女子でございますので」
「………本当かのう?」
家老の言葉を信じられない源三は再度問うと、
「では領主様の思った通りの美人でなければ、後ほど私を遠慮無くお斬り下さい。それならばどうです?」
「ほう、死を覚悟か……。良かろう」
本気だと分かって見逃す事にするのであった。
(まあ、美人なのは確かだけど)
「むっふっふ~、どんな美女か楽しみじゃのう~♪」
家老が内心次の側室候補者の事を考えながら部屋から出ていくと、源三はスキップしながら領主の間に戻って行った。




