常識人と優等生?の会合
今回はマロさんが執筆している『優等生?にダメオタ!に後色々』とのコラボです。
それではどうぞ!
此処は喫茶店『AMAGI』。
「しかしまぁ自由な校風である学園だって聞いていたが、話しを聞く限りでは色々大変そうだな」
「全くだ。自由とは名ばかりの無法と言ってもおかしくない」
俺――天城修哉は客と世間話をしている。
その相手は宮永来牙。『AMAGI』の常連客であり俺の友人でもある。
「ま、来牙の腕にくっ付いてあたかも恋人のような雰囲気を出してる妹も無法な事をしているがな」
「ちょっと天城君。なんで君はいつもあたしを見てそんな言い方をするの?」
俺の台詞にもう一人の客である宮永の妹の宮永絵梨が顔を顰めている。
コイツは宮永の実の妹なのだが、重度――いや、末期的と言って良いほどのブラコンだった。
店に来る時も必ず兄の側にいてくっ付いており、あたかも恋人のように振舞っている。兄の方も満更でも無さそうに妹の行動を咎めていない事に俺は呆れているが。
以前から常識的な指摘をしているんだが、本人達は改める様子が全然無いので俺はもう何も言わないでいる。
「事実だろ。兄に恋愛感情を抱いてる時点で」
「妹がお兄ちゃんを好きになるのは至極当然な事だよ」
「あのなぁ絵梨。常識的に言ってるつもりだろうが、お前の言ってる好きは恋愛感情まで抱かないぞ」
絵梨の台詞に俺は即座に突っ込む。
因みに宮永兄妹に対して俺は名前で呼んでいる。苗字で呼ぶと紛らわしいからな。
「まぁそれは良いとしてだ。来牙、お前のところの爺さんをいい加減どうにかしてくれ」
「また家の爺さんが何かやらかしたのか?」
「あの爺さん、変な集団を連れて来ては騒いだり他の客に迷惑を掛けているんだよ。何度言っても懲りなくて困ってるんだが」
確かグレートレンジャーとか言ったか? あの集団は店に来てドンちゃん騒ぎを起こしては女性客にセクハラをするわ、咎めても都合の言いように『あれ? ワシは何かしたかの?』とか言ってボケた老人を演じるわで傍迷惑にも程がある。
流石の父さんもあんな酷い客でも一応老人なので強く出れずに困っている。かと言って俺が力付くでつまみ出そうとしても、老人虐待で訴えるとか何とかほざいて来るので手に負えない。
「ったく。あの爺さんと来たら……」
「はあっ……お父さんッたら……」
「頼むから本当に何とかしてくれないか? いつまでもあの集団が店に来られると、客が減る上に営業妨害されているから」
「それに関しては本当に済まない」
煩わしそうに言う俺に来牙が謝ってくる。
「こうなったら婆ちゃんに何とかしてもらうとするか」
「そうだね。お母さんならお父さんをどうにかしてくれるし」
「是非そうしてくれ。ってかその爺さんの奥さんってどんな人なんだ?」
来牙と絵梨の言い方を察するに、爺さんみたいな破綻した人じゃないのは確かだが。
「爺さんが悪さをしたって分かったら遠慮無くぶっ飛ばす」
「その上、お父さんはお母さんに頭が上がらないんだよ」
「それなら安心だ」
そんな心強い人なら問題無いな。
「だったらそのお婆さんを今度店に呼んでくれ」
「ああ、そうするよ」
「任せて」
「頼むぞ。ここ最近あの爺さん達のやってる事はエスカレートしてるからな。この間は、小学生の綾ちゃんにセクハラをして――」
「ちょっと天城君、それ詳しく聞かせてくれない?」
俺が言ってる最中に突然絵梨が真剣な顔をして訊いてきた。同時に殺気立っているような気もする。
「詳しくって何をだ?」
「お父さんが綾ちゃんにセクハラをしたって事だけど、それってあたしの可愛い宮本綾ちゃんのこと?」
「あたしのって……」
そう言えば絵梨って髪型は違うが綾ちゃんにそっくりだったな。中身は全然違うがな。
ま、恐らく絵梨が何処かで綾ちゃんと知り合って妹のように可愛がっているんだろう。でなければ、絵梨がこんなに殺気立って無いし。
「絵梨は綾ちゃんといつ知り合ったんだ?」
「そんな事はどうでもいいからさ。早く教えてクレナイ?」
何か前以上に殺気が篭っているのでここはさっさと教えた方が良さそうだな。
「えっと……先日綾ちゃんが家の店に来て俺と父さんが目を離してる時、あの爺さん達がやってきて早々ちょっかいを掛けてきたんだ」
「……………………」
「で、爺さん達が好色な目で綾ちゃんの体を触ったり酌をされたり、挙句の果てには膝枕を強要を――」
「………ふ、フフフフフフフ……お父さ~ん、あたしの綾ちゃんに何て事をしてるんだろうね~♪」
「………おい来牙、絵梨が物凄く黒くなっているんだが抑えられないか?」
「悪いがこればっかりは俺でも無理だ」
真っ黒なオーラ全開になってる絵梨に俺は来牙に止めるように頼むが、即座に無理だと言われた。
「お母さんもね~、綾ちゃんを自分の孫のように大切にしてるから是非とも連絡しないとね~♪」
絵梨は携帯を出すと、
「もしもしお母さん? お父さん家に帰ってる? どうしてそんな事を聞くのかって? それはね、あたしたちの可愛い綾ちゃんがお父さんにセクハラされて――うん。帰ってきたら速攻で……え? 今帰ってきた? だったらあたしもすぐに戻るよ。お父さんぶちのめすから♪」
「「………………(汗)」」
お婆さんに電話してとんでもない会話をしていた。ってか絵梨、父親相手に平然とぶちのめしても良いのか?
そう内心突っ込んでいると絵梨は電話を終えて来牙を見る。
「ゴメン来牙君。あたし至急家に戻らないといけないから先に帰るね」
「あ、ああ……」
「天城君。情報ありがとね。お父さんを遠慮なくぶっ飛ばせる口実を作ってくれて本当に感謝するよ」
「そ、それはどういたしまして……」
本気でやるつもりだな。今日はあの爺さんの命日になってしまうかもしれないな。
「じゃああたしはこれで。天城君、店長さんにケーキ美味しかったって伝えておいて」
そう言って絵梨は俺に金を払って店から出て行った。
「………なぁ来牙、絵梨ってあんなキャラだったか?」
「……まあ絵梨は綾を自分の妹のように溺愛してるからな」
「そうか……ってかお前等っていつの間に綾ちゃんと知り合いになったんだ? お前も何気に綾ちゃんの事を名前で呼んでるし」
「ああ。綾とは以前に……」
話題を綾ちゃんの方へ移すと、来牙は綾ちゃんと知り合った経緯を話し始めるのであった。
所変わって宮永家。
「さあお爺さん達、覚悟してもらいますよ」
「ま、待ってくれ婆さん! ワシ等が何をしたと言うんじゃ!?」
「俺達は婆さんに何もしてねぇぞ!」
「源三はともかく何でミー達もシバラレテるんだ!?」
「拙者達は無関係でござる!」
リビングでは一家の偽大黒柱の宮永源三とお供であるグレートレンジャーの面々が、源三の妻である宮永楓によって縄で蓑虫状態にされていた。
「関係なくありませんよ。貴方達もお爺さんと同罪なんですからね」
そう言って楓は台所から持って来たフライパンを持つ。
「同罪って俺達が何をしたってんだよ! 痛めつけるなら源三だけにしやがれ!」
「納得イカナイぞ! やるなら源三だけにシテクレ!」
「源三殿と同罪だなんて心外でござる! 早く源三殿を始末して欲しいでござる!」
「お主等! 何故ワシを平然と見捨てるのじゃ! 助けようとする気は無いのか!?」
源三達のやり取りを余所に、
「ただいま、お母さん」
「絵梨かい。随分と早かったねぇ」
「うん。全速力で帰ってきたからね」
絵梨が帰ってきた。
「おお絵梨よ! 何故か知らんがワシは婆さんに殺されるんじゃ! 助けておくれ!」
「絵梨! 助けるなら先に俺を助けてくれ!」
「頼むからミーを先に!」
「いや、拙者からお願いするでござる!」
助けを懇願する源三達に絵梨は無視してメリケンサックを装着する。
「ねぇお父さん達、あたしとある人から聞いたんだけどさ。綾ちゃんにセクハラをしたそうだね」
「しかも綾ちゃんが行ってるお店では営業妨害をしてるみたいですね」
「「「「………………」」」」
絵梨と楓の発言に源三達は滅茶苦茶顔を青褪め、そして恐怖した。絵梨と楓の真っ黒なオーラを見て。
「あたし言ったよね? 綾ちゃんにセクハラをしたらいくらお父さんでも許さないって」
「あの子は優しくて手を出さない事を良い事に、体を触ったり膝枕をしたそうで……これは大変許し難いですよ」
二人がそう言うと源三達は言い訳を始める。
「ま、待つのじゃ二人とも! 誰から聞いたのかは知らんが、それは全くの出鱈目じゃぞ!」
「そ、そうだぜ! 俺達は綾ちゃんに大人の付き合い方をだな……!」
「ミー達が綾ちゃんに教育をシタマデデ……!」
「け、決していやらしいことは何一つもしてないでござる!」
「「…………………」」
源三達の言い訳に絵梨と楓は白けた顔をしている。最初から信じていないみたいだ。
そして、
「お父さん、見苦しい言い訳は良いからさ……」
「そうですよお爺さん、先ずは……」
「「綾ちゃんにセクハラをした罪は万死に値するよ(しますよ)!!」」
ドガッ! バキッ! ドゴッ! ゴバンッ! グシャッ!
「「「「ウギャアアア~~~~~~~!!!!!」」」」
絵梨と楓は悪の元凶である源三達をボッコボコにぶちのめしましたとさ。
マロさん、企画協力ありがとうございました。




