それでは、お茶に致しましょうか?〜昭和異文録・鳳凰司華子の異能譚〜プロローグ
此処は現代であって現代ではない、そんな昭和の時代の物語。その少女は旧華族の生き残りで、父親が戦死、一族は謂われのない冤罪を被り華子一人だけが生き残った。絶望の中、華子に出来たことは祈る事のみ。
「神様………」その時、祈りと同時に彼女には不思議な力が宿ったのである。それは、そんな少女と少女を取り巻く者達との物語。
【被告人鳳凰司家、長女華子。鳳凰司家の天下転覆の罪、一族郎党の罪となし、一族最後の貴女に刑の執行を命じる!!】高らかな木槌の音、裁判長様の厳格なるお声、傍聴席の記者のカメラのシャッター音…呆ける私には、裁判長様の仰ることが何一つ理解できませんでした。
「……ハァ、詰まりはどういう事ですの?」【……詰まり、君の父親が天皇陛下を殺そうとしていたのだ‼】「……まぁ、怖い……何故、父はそんな事を?証拠とかは御座いますの?」【それは先の審判で散々議論した。君に言い聞かせる理由はない。恨むなら、君のお父君の仕出かした事の重大さを知りもせずのうのうと生きた己の半生を恨め!以上、これにて閉廷を申し渡す!!!」無常にも木槌の高らかな音が、場に様々な感情を渦巻かせた。
しかしながら当の鳳凰司華子は、取り残された様に頬に手を添えて困り顔で溜息を着いた。「………困りましたわねぇ・・・これでは嘘も真も判断しかねますわ……」人は善も悪も嘘をつく、それが母からの教え。
【真実とは、己の目と耳で見聞きしたものを判断の基準にするのです。…そう、代々受け継がれてきた、それが鳳凰司家当主の使命なのです。】
母は良くその言葉を口にしていた。(……当主……お父様亡き今、私がそれを行使しなければならないということ?困りましたわねぇ……)ともかく小難しい事は何もできない、箱入り娘であることは自負しているつもりである。チラリと裁判長から視線をそらし、横の後れ毛を人差し指に絡めながら考えに耽る。
(……私なら、こんな殺風景な場所でお話など出来ませんわ。)ツンと澄ませば、どこからともなく声が聞こえる。
【……汝、命の際に何を望む……】
問われてまたも考え込む。(……そうですわねぇ……お茶を片手に心解れるまでお話したいですわ♪)それはもう色取り取りの花に囲まれたその中央で、心晴れるまでゆっくりと・・・そこまで考えを纏められれば、後は主催者の号令一つである。
ーーー小さく華奢な両手のひらを打ち合わせて音を鳴らす。「・・・それでは皆様、お茶にいたしましょうか?」その瞬間華子を中心に後光が降り注ぐ。すべての邪な心は各々の身を包む衣装と変わり、花畑の中央には華子が香しいお茶の匂いを堪能しつつゆっくりと微笑むのであった。ーーー
【プロローグ。定め。】
いやぁ、注意一秒怪我一生とはよく言ったものです。皆さんも怪我にはお気をつけて………。おっと……何処からか柏手の響く声が聞こえますなぁ…貴方方はご存知で?では、どうぞ。




