第45話〜賢姫、相即不離を辿りて〜 前編
「アンサス!《白金の杯》の場所だけどっ…!」
私はアンサスの執務室の部屋を開けると
「…あら?」
アンサスの隣に立っていたのは、見覚えのある銀糸の髪の女性だった。
「…コーディカスのお嬢様はお元気なのですね。」
くすっ…と口元に手を当て笑う彼女の目元は布で覆われている。
「貴女は…」
「私、カリスペラ・アステールよ。こう見えて、アンサスの婚約者なの。」
私が尋ねるよりも先に、カリスペラはそう言った。
婚約者…?
私は動揺しつつも冷静さを装い
「…先日は、継母の件でお世話になりました。」
と静かに言うと
「私は、アンサスからの情報提供によって公平に罰を与えたまで…貴女には関係なくってよ。」
カリスペラは素っ気なくそう答えると
「また来るわ…ご機嫌ようアンサス。」
そう言って私を一瞥して去っていった。
「ごめんねフィーリア。…それで、どうしたんだい?」
アンサスの問い掛けに、私はハッとなって
「そうよ…《白金の杯》、もしかして私たちが出会った泉にあるんじゃないかなって思って…。」
それを言いに来たの。という言葉が上手く出てこない。
私は、アンサスの婚約者としてマギア帝国に来たわけじゃない、のに…。
アンサスに婚約者が居てもおかしくないじゃない。だって皇帝なのよ?
それなのに…どうしてこんなに心が晴れないのかしら。
黙りこくった私を心配そうに見つめるアンサス。
「…フィーリア?」
返事をしたいのに、喉の奥がギュッと詰まってしまい声が出てこない。
すると、アンサスは私を優しく抱きしめて
「ごめんねフィーリア。…彼女は幼馴染でね、周りが勝手に婚約者って言っているだけだから。」
そして優しく身体を離すと
「…フィーリアを婚約者として迎えなかったのは、フィーリアの意志で僕を好きになってもらいたいからだよ。」
金色の瞳は、私を捉えて離さない。
アンサスの眼差しが、私の心の中のモヤモヤをゆっくりと溶かしていった。
「アンサス…。」
それ以上何も言えなかった私に、アンサスは優しく私の額に口付けた。
「…それで?《白金の杯》の場所がわかったのかい?」
そうだった。すっかり忘れてしまっていた。
「ええ…《白金の杯》は、私たちが出会った泉にあるんじゃないかなって思ったの。…詩の中で、【私は泡沫で満たされる】ってあったわよね?もしかしたら、あの泉に沈んでいるんじゃないかって…。」
アンサスは、うーんと考えながら
「確かに、僕も水中の可能性を考えて国中の湖や池、沼なんかも探してみたけど…。」
そしてアンサスは少し困ったように微笑みながら
「あの空間はね、僕とテアが創った場所なんだよ。だから、そこに《白金の杯》はないと思うんだ。」
「アンサスとテアが創ったのね…それなら尚更、可能性があると思わない?」
私は、にっと微笑んでアンサスを見た。
「…どう言うことだい?フィーリア。」
少し困惑気味なアンサスに、私は一言こう言った。
「だって、神器探しの始まりは…テアがくれたネックレスよ?」
◇
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