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第40話〜神鎖、一陽来復を齎して〜


「…ここは?」


私が身体を起こすと、そこには、大きな城が聳え立っていた。


「これは…かつての帝城だね。」


アンサスが私に手を差し伸べながら答えた。


私は立ち上がって、改めて帝城を見上げる。


荘厳な雰囲気の帝城は、人の気配を感じず、しんと静まり返っている。


「この中にありそうだね。」


アンサスと私は、帝城に足を踏み入れた。














「…誰も、居ないのね。」


帝城内はとても清潔で、誰も居ないのが不思議なくらい。


「…この空間は恐らく、《皇帝の手記》が創り出した空間だと思う。―――何もないと思うけど、念のため罠に注意して進もう。」


アンサスと私は慎重に一部屋ずつ見て回る。


「…見つからないわね。」


かれこれ1時間は歩き回っただろうか、まだ《白金の鎖》は見つけられない。


「うーん。残るは地下…かな。」


そう言ってアンサスは、廊下にある大きな姿見をちらりと見上げて、その鏡部分にそっと手を触れた。


「【鏡よ、その道を示せ】。」


アンサスが呪文を唱えると、鏡がすぅっと消えて地下に続く階段が現れた。


「現在の帝城も鏡が隠し扉になっているんだ…これは王族だけの秘密だよ。」


そう言ってアンサスは、にこっと笑いながら人差し指を立てて唇に添えた。


「…じゃあ、言ってはいけないんじゃない?」


私がそう返すと


「いいんだよ…フィーリアはね。」


とアンサスは愉快そうに答えた。















階段を降りた先は、美しい庭が広がっていた。


「ここは…?外に出てしまったのかしら。」


私がきょろきょろと辺りを見渡すと、天井は空―――ではなく…城の天井とシャンデリアがあった。


でも目の前に広がるのは…明らかに外の景色。


色とりどりの花が咲き乱れ、心地よい風が吹いている。


庭園の中央では、石像の天使たちが持つ甕から水が流れ落ち、その水は小さな池を作っていた。


アンサスは、ふふっと笑って


「ここは室内だよ。室内に庭を作るのはよくあることさ。…ここのどこかにありそうだね。」


と言って、また右手をかざして呪文を唱えたが、何も変化が起こらない。


「…ここでは魔法は使えないみたいだ。」


とアンサスは残念そうにそう呟いた。


「じゃあ、自力で探すしかないわね。」


私は、ようやく自分の出番が来たと思い、張り切って探し始めた。









「…見当たらないわね。」


私は池を取り囲む石の上に腰掛ける。


「何か見落としているはず…。」


アンサスの表情にも疲労の色が見えた。


私は何気なく手鏡を取り出して見つめた。


【私は始まりの地を繋ぐ


私は風の中に戴かれ


私は泡沫で満たされる


虚像は実像


記憶の中から取り出して】


「―――虚像は実像!」


私は思わず叫んだ。


「…何かわかったのかい、フィーリア。」


アンサスは私の声に驚き振り返る。


「ええ…!【虚像は実像】なのよ!…鏡の中に《白金の鎖》があるんだわ!」


そう言って私が手鏡を持って立ち上がると…私の肩越し―――天使が水を注ぐ真下に女神像が見え、その女神像に美しい白金色の鎖が巻き付いているのが見えた。


「あったわ…!」


私が鏡の中に手を伸ばそうとすると、アンサスは優しくそれを止め


「何かあったら大変だ、僕が取り出そう。」


と言って、アンサスが慎重に手鏡に手を近付けると、アンサスの手はどんどん手鏡の中へ入っていった。そして


ジャララララ…


アンサスの手は、白金色の鎖を持って帰ってきた。


「これが…《白金の鎖》。」


それは、丁度私が両手を広げたくらいの長さだろうか、錆や曇りが一つもないその鎖はキラキラと輝いている。


「そうだよ。…さあ、帝城に戻ろうか。」


ドクンと私の心臓が鳴った。


そうか…いよいよ身体を元に戻すのね。


「え、ええ…戻りましょう。」


ちゃんと…元に戻りたいと思わないと…。


私は、いよいよ身体が元に戻るという現実を突きつけられ、複雑な気持ちで一杯のまま帝城に戻ることとなった。














「…それでは、入れ替わりを元に戻す《儀式》を始めようか。」


《儀式の間》は、宝石のステンドグラスでできており、室内は日の光で様々な色がキラキラと輝いていた。


私とアレクシスは、何やら魔法陣というものの上に立たされ、向かい合って《白金の鎖》を両手で輪になるように持たされた。


ようやく身体が元に戻るというのに、どうしても気分が晴れない。


私の浮かない表情を見て、アンサスが心配そうに声を掛けてきた。


「大丈夫かい?フィーリア。」


私は、込み上げてきた涙を堪えながら


「私…本当に自分の身体に戻りたいのか…分からないの。」


と言った。アンサスもアレクシスも、予想外の告白に思わず顔を見合わせる。


「ごめんなさい…でも…私、この身体になって…今までの人生とは比べ物にならないくらい充実してて…もし、元の身体に戻ってしまったら…また今まで通りになってしまう気がして…それが、怖いの。」


我が儘なのは分かっている。


でも、王太子として奮闘した日々はもう私のものではなくなってしまう。


私はまた、流されるだけの人生…。


私が静かにそう話すと、アンサスは私の方に歩み寄り、私の両手を取って


「フィーリア、君の功績は決して消えない。…全てはマギア帝国にある真実が書かれた書物、《魂の記録(プシュアルケィ)》に記されている。身体が元に戻っても、《魂の記録》に基づいて、君の功績は君のものになるよう働きかけよう…それで、問題ないだろう?」


最後はアレクシスをギロリと睨んでそう言った。


アレクシスは、ひっ…と声を上げて


「も、ももちろんだ…問題ない…。」


と情けないうわずった声で言った。


そんなアレクシスを一瞥してから、アンサスは私の両手を握ったまま跪き


「それに…僕はフィーリアを絶対に…絶対に幸せにする。悲しい思いなんてさせないよ。」


そう言って私の手の甲に口付けた。


私は不意のことで驚いて固まってしまったが、アンサスはそんな私の姿を見て一瞬だけ微笑み


「…よし、では改めて入れ替わりの《儀式》を行おうか。」


と言って元の位置に戻っていった。
















久しぶりの自分の身体。




今までのことが夢のよう。




元に戻った私たちは、コーディカス王国にマギア帝国の空飛ぶ馬車で戻っている途中だった。




「…フィーリア、君はマギア帝国に行ってしまうんだね。」


アレクシスには、私がマギア帝国に行くことを条件にマギア帝国との条約を締結したことを話した。


「ええ…。皇帝陛下は準備の時間を下さったわ…その間に色々と引き継ぎをしてしまいましょう。」


私が淡々と話していると、アレクシスは何か言いたげな表情でこちらを見てきた。


「…どうかした?」


私がアレクシスに尋ねると


「あ、いや…。―――フィーリアは、皇帝陛下が好きなのか?」


としどろもどろに聞いてきたので


「うん?…分からないわ。」


と率直に答えた。


「え!それじゃあ…「でも、行くことには変わりないわ。それに、私貴方に婚約破棄されたじゃない。」


何を勘違いしているのか分からないが、私はやや呆れながらそう言った。


みるからに落ち込むアレクシス。やれやれ、アレクシスにコーディカスを任せて大丈夫かしら。


でも仕方ないわね。そういう約束ですもの。


『絶対に幸せにする。』


その言葉を信じて。


いつも応援してくださりありがとうございます。

今回で第7章は終了し、次回から最終章となります。

引き続き皆様の応援よろしくお願い致します。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


ひとつでも「面白い」と感じていただけたら、

評価やブックマークをしていただけると嬉しいです。


とても励みになり、執筆続行の支えになります。


これからも読者様に楽しんでいただける展開を届けられるよう頑張ります。


どうぞよろしくお願いいたします!


本作は、毎週 月・木・土の20時に更新予定です。

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