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第四十四話 拝啓、一つの決着の時です

 白い影に手が重なる。その瞬間光は収束し、世界(ひら)ける。改めて是空と繋がったことを実感する。是空の腕、足、体、そして頭。まるでそれらが、自分の体と錯覚するほどに一体感を感じられる。

 気がつけば操縦席に意識が戻る。前面画面(モニター)には見知らぬシステムが起動したことを告げている。


 System DRAGON GRAIL


 「システム・・・竜の聖杯(ドラゴングレイル)?」

 「オオオオオオオオオオオオ!!!」

 是空が吠えると同時に、周囲の炎が呼応するよう逆巻いた。

 「ユウゴ、行ける?」

 ピリカが、自分が蹴った俺の頬を(さす)りながら聞いてくる。

 「ああ、迷惑かけたがお前のお陰だピリカ。どうにかなりそうだ!」

 「はっは、気にすんな!私たち相棒だろ」

 相棒か。そうだな、もう笑って流せないほど世話掛けちまったからな。


 さあ、その竜の聖杯(システム)が何なのかは全く解らないが、今はそんなことはどうでもいい。

 目の前の敵を倒すのみだ!

 「オオオオオオオオオ!!」

 竜が(いなな)き、軀を起こす。壊れた右足を意に返さず、是空は悠然と立ち上がる。


 『な、なんだ?壊れる前の暴走反応か?』

 バロスの声にも戸惑いが浮かぶ。

 「ありがとよ、バロス。お前のお陰で少しだけ強くなれたよ」

 『な・・・?馬鹿が!つまらぬ強がりを言うな。そのポンコツを棺に、あの世でロンゴさんに詫びろ!」


 暁天(ぎょうてん)竜炎銃(ドラゴンフレア)の引き金を引く。赤い閃光が是空を撃ち抜かんと迫り来る。

 やけに遅く感じる。本来なら見て避けるなど不可能な速さなのに、まるで掴めそうなくらい遅く感じられてしまう。いや、掴まないけど。

 俺は是空の盾を突き出し構える。今までは理屈だけで出来なかったが、今なら出来そうな気がしている。

 「チャクラシールド」


 是空を包むように、盾を中心として力場を発生させる。なるほど、こうやるのか。

 赤い閃光が盾を直撃する。先ほどまではその威力に呑まれていたが、今なら問題なく弾き返せる!

 「返すぞ、バロス!」

 意識を盾に集中すると、力場が小さく収縮し赤い光を閉じ込める。そして、赤い光を奴に向けて弾くように解き放つと、竜炎銃(ドラゴンフレア)の赤い閃光が一直線に暁天に襲いかかる。


 『ば、馬鹿な!?』

 驚きの声と同時に、暁天はチャクラシールドを展開させる。咄嗟のことでシールドの張りが甘かったのか、その衝撃に吹き飛ばされる。

 俺はこの隙に、竜機銃の弾倉を交換する。さっきまでは、心許ない機銃であったが今ならその威力を発揮できる気がする。

 そうだ、今までは何も考えずに撃っていた。だが、今は違う。今は、こいつで敵を撃ち抜こうという意志がある。


 ダダダダダダダダダダダダ!!!

 竜機銃が唸りを上げ、竜の息のような煙を立てて空薬莢が地面を叩く。

 『うおおおおおおおおおおお!?』

 今までが嘘であったかの様に、一発一発の銃弾が暁天の展開したチャクラシールドを削り取る。

 俺は、機銃を左手に持ち替え右手で剣を握る。銃弾で釘付けにしつつ一気にケリを付けるべく、チャクラシールドを斬りにスラスターを吹き上げる。


 今まで空回っていた推進力が、一つになって是空を空に打ち上げる。流星が光を伴い天から地に落ちるのとは逆に、是空は光を従え地から天へと昇っていく。

 『この私を舐めるな!!』

 バロスの怒りに呼応し、暁天もチャクラシールドを最大限に展開する。力場は銃弾を周囲に弾き出し、自らを中心にあらゆる物から護るよう結界化させる。


 それでも、今の是空の剣は止められない。暁天の盾と是空の剣が交わる刹那の瞬間、稲妻のように天を駆けた是空の剣が、暁天の盾を真っ二つに斬り裂いていた。

 『くそおおおおおおお!!』

 バロスは狂ったように竜炎銃(ドラゴンフレア)を掃射する。

 だが、スラスターの白い光を纏う是空に、赤い閃光は一つとして追いつくことは出来ない。


 俺はそのまま是空を駆り、夜空を縦横無尽に天へと駆け上る。

 雲すら届かぬ高さまで昇る。雲が流れる高度は、騒がしいほどに気流を感じたが、この高さになると一転凪のように風を感じなくなる。

 「静かだな・・・・・」

 頭上には星々の輝きが、足元には雲が川のように流れている。つい何週間か前までは、考えられない光景の中に俺はいる。


 月が大きく見える。夜は更けて、月は西へ沈もうとしているのか。

 「ピリカ知っているか?月には神様がいるんだってよ。だとしたら、神様はこの戦いも月から見ているのかな」

 子供の頃によく聞いたおとぎ話だ。ピリカは大きく見える月を眺める。

 「どうかな?もう夜も遅いしね、月の神々もみんな寝てるんじゃないかな?」


 思いがけないピリカの答えに、俺はたまらず吹き出してしまう。

 「ふふ、あははは・・・ああ、そうだな。こんな夜更けに、殺し合いをしてるのは人間くらいなもんだろうな・・・」

 俺は足元に流れる雲の隙間から、暁天を見据える。遥遠くにいるはずなのだが、是空の眼は驚くほど鮮明にその姿を捉える。

 「さあ夜も明ける。そろそろ、この戦いもお開きにしようじゃないか!」

 「うん、行けぇ!ユウゴ!!」


 まるで水に飛び込むように頭から落ちる。スラスターの光が、天から垂らされる一筋の糸のように地に向かって堕ちていく。

 右手に握る剣に力を込める。握られた剣は眩しい霊輪(チャクラ)の光を纏う。

 『私は負けぬ!我が友ロンゴの為に、我が誇り高きオルゴンのために!ここで貴様を討つ!!』

 暁天の刀にも光が宿る。

 バロス、お前は強かった。だが、天から(こぼ)れ落ちる流れ星を木の枝で打ち返すつもりか?


 「はああああああああああ!!」

 『うおおおおおおおおおお!!』

 瞬間、光が交錯し是空の剣が暁天の刀ごと真っ二つに破断した。

 「終わりだ、バロス」

 『・・・・・・・馬鹿な!』

 二つに断たれた暁天が大爆発起こす。俺は振り向かず、その轟音と衝撃のみを背中で受け止めた。


 「あ・・・・れ?」

 ぐにゃりと視界が歪む。頭が真っ白になり全てが遠く感じる。

 「え・・ゆ、ユウゴ!?」

 ピリカの声も凄く遠くに遠くに聞こえる。まずい、これは・・意識・が・・遠く・・・な・・。


 そこで、俺の意識はぷっつりと切れた。

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