第四十二話 拝啓、騎士道精神は要らないです
突然の敵機の襲来に浮き足立つ。妨害煙幕を使っていると言うことは、ただの敵援軍などではなく何かしら目的を持った襲撃と言うこと。
霊輪探知機に補足されたことに気づいたのか、敵方も隠れることなく強引に距離を詰めてくる。
俺は是空に搭載された主要写眼機のシステム“竜の眼”を起動させ、敵機の姿の補足に挑む。
竜の眼によって捉えた映像が操縦席画面に映し出される。暗い夜の中でも、問題なく解るほどに鮮明に映し出すことが出来る優れたシステムだ。
捉えたのは地表スレスレを高速で飛ぶ3機の竜鎧機。3機の内2機には見覚えがある。夜鴉だ。だが、その2機を従えるように飛んでいる竜鎧機には見覚えがない。
「敵は2機の夜鴉と正体不明の1機!来るぞ!!」
俺の声が響くと同時に、奴らから竜炎銃が撃ち込まれる。赤い光の帯が竜鎧機の装甲を貫くように襲いかかる。
「・・・・ぐっ!?」
夕焼けの様に操縦席が赤く染まり、俺達は紙一重に赤い光を回避する。
竜炎銃は最新鋭の銃器だ。竜の吐く炎を参考に作製された銃器で、竜が口の中で特殊な油を気化させ、それを高温高圧力で吐き出す仕組みを真似て開発した最新兵器だ。
扱いやすさや連射速度など、既存の竜機銃が上回る利点もあるが、一撃の破壊力や射程距離から徐々に戦場で普及し始めている武器である。
その間にも敵竜鎧機との距離は詰められている。この距離ではもはや後退も出来ない。下手に下がれば背後を晒すだけである。
『ユウゴ、タグマ!基地に援軍を頼んだ。我々はここで奴らを足止めする。いい?あくまで足止めをメインに、守備を固めて戦いなさい!ここでの勝利は墜とされないこと。時間を稼げば私たちの勝ちよ!』
『「了解!!」』
『来るわよ!!』
俺達の機銃掃射を物ともせずに、3機の竜鎧機が突っ込んでくる。銃弾を回避し、避けられない物は盾で防ぐ。小さいはずの盾が、前にかざすと銃弾すら弾く力場を創り出す。
「あれは霊輪シールドか!」
正体不明の竜鎧機がこちらに向かって飛び込んでくる。俺は咄嗟に盾を構えるが、敵はそんなことお構いなしに体当たりをかまし、是空は大きく吹き飛ばされる。
「くううううううううう!」
「きゃあああああ!」
くそ!とんでもなく強引な手法を取りやがる。しかも、是空をいとも簡単に吹き飛ばすその力。相手は並の竜鎧機じゃない!
空中で体勢を整え向かい合う俺と正体不明機。隊長とタグマは、どうやら夜鴉によって引き離されたようだ。奇しくも1対1の勝負になっちまった。
目の前には見たこともない竜鎧機。量産機とは何か違う、不気味な雰囲気を醸し出している。
だが、そこで突然無線から知らない男の声が流れる。
『アテルナの新型よ!この時を待っていた。我が名はバロス!そして我が愛機“暁天”が、同胞ロンゴ上級飛士の仇を今ここで討たせて貰うぞ!』
開放無線か!?しかし、仇とは何だ?時代がかった事しやがって。
「てめぇは昔の騎士か何かか?知らねぇよ、ロンゴなんて奴はよ!」
『貴様があの襲撃の夜、破壊した夜鴉に乗っていた男だ!忘れたとは言わせぬぞ!』
そうか、あの時の・・・。だが、仇?
「ふざけるな!いきなり襲撃してきて、返り討ちにしたら仇だと?寝言は寝て言え、バカヤローが!」
『ふざけても寝言でもない!これは正当な敵討ちであり、同胞がやり残した最後の作戦の遂行だ。
さあ、アテルナの兵士よ!自らの名とその新型の名を名乗り、正々堂々勝負せよ!』
アホか!何で敵側に俺の名前を教えなきゃならんのだ。バロスと名乗ったのは敵が勝手にやったこと。そんなことに、俺がわざわざ付き合う理由がないだろ。
「耳かっぽじってよく聞け!こちとらユウゴと是空じゃい!ユウゴがお前のこと、ボコボコにしてやるから首を洗って待ってろい!」
「馬鹿野郎!何でお前が言うかな!?」
「えー!言っちゃマズかったの?」
言わない方が良いだろ!教えたところで百害あって一利もない。
『この声・・・若い女?いや、妖精か!悪趣味な。だが、妖精が共にいたとしても容赦はせん!恨むのであれば、戦場に連れ出したそこの操縦士を恨むのだな!』
「連れ出しちゃいねぇよ!勝手に付いてきたんだ」
『笑止!』
暁天が空を駆るよう襲いかかる。俺は気合いを入れ直し、迫る脅威と相対した。




