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第四十一話 拝啓、分水嶺は突然です

 ベリタ隊長を先頭にして、3機の編隊を組んで北に向かう。

 だが、座標を確認すると第7基地とは進路がずれている気がする。俺が確認をとるべく、無線のスイッチに手を伸ばしたところでタグマの全体無線が鳴る。

 『隊長、俺達はどこに向かっているんですか?第7からはずれてるように思うんですが・・・・』


 『我々は第7基地へは向かわず、この空域の警戒態勢にあたる』

 思いもよらぬ隊長の言葉に驚くが、タグマの奴は驚きよりも怒りの方が先走ったようだ。

 『ど、どういう事ですかベリタ隊長!仲間の援軍に行かねぇで、こんな所で時間潰そうって腹ですか!?』


 隊長に対してとは思えないほど、剣呑な口調で問い詰める。

 気持ちはわかるが、いくら何でも言い過ぎだ。タグマが感情的になったせいで、俺の方は冷静になっちまった。

 『まさか、このポンコツ新型機のお守りの為じゃないですよね?こいつを守るために、戦場から離れるなんて許せませんぜ!』


 もはや剣呑を通り越して、挑発的ですらある。この野郎・・・ここまで来て喧嘩を売っているのか。

 だが、俺が口を開くより先に隊長の諫める声が無線に流れる。


 『いい加減にしなさいタグマ三等機士!いつまで僻み根性丸出しでやってるの。そんな遊び気分でやりたいなら、迷惑だから今すぐ嘉風から降りて郷に帰りなさい!』

 『も、申し訳ありません・・ベリタ隊長』

 思ったよりも強めの言葉が来たのか、タグマは素直に謝罪を口にする。


 『いい?これは二人に言うけど、今私たちアテルナ国はオルゴンに呑み込まれるか、()ねつけるかの分水嶺に立たされているの。

 アテルナの北西部を獲られた事は、国にとって大打撃よ』

 それはもはや、言葉にする必要もないほどの大損害。オルゴン帝国はそこを足場にして、アテルナへの侵攻を絶えず続けているのだ。

 『でもね、ここで食い止められればまだ目があるわ。北西部でのみで止められれば、取り返す機会(チャンス)は我が国にはあるの。

 でもね、裏を返せばこれ以上獲られたらアテルナはお終いなの。これ以上の侵攻を許せば、雪崩に呑み込まれるようにあっという間にオルゴンの一部になるでしょうね』


 俺もタグマも、一切口を挟むことなく隊長の言葉を聞いている。ピリカの奴も・・・と思ったが、どうやらピリカの方は普段飛ばない高度の夜景に興味を引かれているようだった。

 「あ、ユウゴ月が近いよ~」

 楽しそうで何よりだ。


 『今の我々には、新型だから大事に使おうなんて言っている余裕はないの。有る物は使う、使える物は使わなければ生き残れないのよ。だから、ユウゴ一等機士』

 「は、はい!」

 急に水を向けられるとは思わなかった。

 『その新型は貴重な戦力よ。しっかり戦ってしっかりデータを取りなさい。決して墜ちることは許さないわよ』

 「了解です」

 隊長なりの叱咤激励か。


 『タグマも理解(わか)ったわね』

 『りょ、了解しました!し、しかしですね・・・』

 タグマも、当て擦る様な言い方には反省を見せるが、本筋の疑問が解決されていない事には納得がいかないらしい。

 『あのね、貴方が余計な口出しをしなければ、説明するつもりだったわ。聞きなさい!オルゴンから24機の竜鎧機が飛び立ったと言う報告、どう思った?』


 『大部隊だと思いますが・・・・・・』

 タグマの素直な感想も解る。が、俺の意見は少し違う。

 「第7基地を落とすには、かなりギリギリの戦力だと感じます」

 そうなのだ。アテルナ国も馬鹿ではない。前線に相応の戦力は注ぎ込んでいるのだ。援軍も周辺基地から続々と集まることであろう。

 そう考えると、オルゴンにしてもかなりギリギリの戦いになると思う。

 『ええ、そうなの。仮にオルゴンが基地を落としても、その戦力でそれを維持できるとは思えないの』


 『次から次に、竜鎧機を送り込んでくるんじゃないですか?』

 タグマの意見は少しムキになっている感がある。

 『オルゴンは強大な帝国よ。でも、戦っているのはアテルナ(うち)だけじゃないわ。各方面で様々な国と戦っているのよ。

 そんな状態で、こちらに竜鎧機を無尽蔵に送れるかしら?私は難しいと思うわ』

 オルゴンの戦線が、大陸を囲むほどに伸びているとはよく言われることだ。そして、専門家の中にはいくらオルゴンでもこの戦線維持は厳しいとの見方もある。


 「では、この空域の警戒にどんな意味があるのですか?」

 色々あったが結論が聞きたい。

 『オルゴンの作戦の意図が読めないため、防衛は他の戦力に任せ、我々はこの空域で待機します。

 おそらく、オルゴンから何かしら別の動きがあると思われ、私たちは全力でそれを潰しに向かいます。いい?これは私の独断ではなく、命令の一環よ。上層部も大部隊は陽動で、別の思惑があると考えているわ。つまり、一番厳しいのは私たちって事!わかった?』

 『「了解です!!」』


 やだやだ、大部隊を動かしての陽動?何を狙っているのか知らないが、恐ろしい話だよ、まったく。

 「話は終わった?」

 ピリカは先の話を何一つ聞いていなかったらしい。もはやそれも才能だな。

 「ああ、終わったよ。何も起きないことを祈って待機だと」

 「何か起きた時のための待機でしょ?」

 「・・・・何だ、聞いてたのか」


 しばらくの間、空域警戒を名目としたの待機がしかれた。

 静かだな。どうやら第7基地の基地の方でもまだドンパチは起きていないらしい。ふとピリカを見れば、何やら操縦席の機器をじっと見ている。

 「何を見ているんだ?」

 「ん?これ、霊輪探知機(レーダー)ってヤツでしょ?さっき何か点滅したよ」

 「霊輪探知機(レーダー)に?」

 俺は急いで確認する。画面(モニター)には、これと言った物は何も映ってはいない。


 「・・・・何もないぞ」

 ピリカの奴驚かせやがったなぁ、やめてくれよ。

 「えー、でも確かに映ってたって!」

 ピリカとの言い合いの中、突如として無線が鳴る。

 『防衛部隊との交戦が始まったみたい!』

 戦いが始まったか・・・。俺は遠く見えないはずの方向に自然と目を向けてしまう。その時、何の気なしに霊輪探知機(レーダー)に映る光点を目の端で捉える。


 その光点はもの凄い速さで近付いてきて、また突然消えてしまう。尋常じゃない!霊輪探知機(レーダー)の故障でなければ、明らかに異常な存在だ。

 「隊長、タグマ!こちらの霊輪探知機(レーダー)怪しい影を捉えた。高速で近付いてくる。そちらで確認は取れるか?」

 『あ?怪しいって・・・こっちじゃ何も・・』

 『私の方でも・・・いえ、え?すぐ消えた・・マズい!これは妨害煙幕(ジャミングスクリーン)だわ!敵機よ!数は3機、高速でこちらに近付いてくるわ!』

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