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第32話 オルゴンの若き鷹

敵国のオルゴン帝国側の話となっております。

 オルゴン国は帝国と呼ばれ、大陸を恐怖に陥れている国ではあるが、50年ほど前は大陸の西にある、小さな遊牧の民の国でしかなかった。


 それが現国王である17代国王ゼバル・テテナ・オルゴンの時代になると、状況は一変する。

 彼は若くしてオルゴン国国王に即位すると、今まで竜退治にのみ使われていた竜鎧機の開発製造に力を注ぎ、一気にオルゴン国の領土を広げるまでに、勢力を拡大した。


 大陸のおよそ3分の1まで領土を拡大すると、オルゴン国は帝国を自称し“大陸統一”を掲げて、侵攻の手を東へと伸ばしていった。

 現在では、大陸のおよそ3分の2を支配下に治め、東の大国である“キンカラ皇国”の勢力圏であるアテルナ国の一部をその手中に収めていた。


 オルゴン帝国は、手に入れたアテルナ国の北西部にある軍事基地を改修した後、“第8東方統一軍アテルナ北西部軍事基地”と改名して、アテルナ攻略の前線基地として活用していた。

 その軍事基地に、1機の竜鎧機が飛来する。その竜鎧機とは、移動用竜鎧機“飛燕(ひえん)”である。

 飛燕は武器も持たず、装甲も薄いが飛行速度と飛行距離に優れており、要人達の足としてオルゴン帝国では重宝されている竜鎧機であった。


 飛燕の到着に、兵士達が駆け寄り出迎える。

 「敬礼!」 

 かけ声により、皆が一斉に直立して胸に手を当てる。右手を左胸に当てるのがオルゴン流の敬礼である。

 飛燕より降り立ったのは若い男。鷹のような鋭い眼差しと、抜き身の剣のような雰囲気を持った男である。


 「バロス鉄翼長(てつよくちょう)殿、我らの基地への来訪を歓迎致します!」

 畏まった兵士の口上にバロスは苦笑いを浮かべる。

 「そんなに畏まらなくていい。突然の訪問申請で迷惑をかけたな」

 「い、いえ、全くそんな事は・・・・」

 「ところで、エルネ金翼将(きんよくしょう)殿はいらっしゃるのか?」


 訊ねられた兵士が敬礼しながら答える。

 「はい!司令室にいらっしゃると思われますので、僭越ですが私がご案内致します」

 親切な申し出であったが、バロスにはそれより先に会いたい人がいた。

 「すまんが、それより先にボズン中級飛士(ひし)に会いたいのだが、案内を頼めるか?」


 バロスの頼みに兵士達が息を呑む。しばしの沈黙のあと、一人の兵士が顔を上げる。

 「ボズン殿は、第二格納庫にいると思われますので、よろしければ私がご案内致します」

 「よろしく頼む」


 兵士の後ろについてバロスが基地内を進んでいく。この第8東方統一軍アテルナ北西部軍事基地では今も改修工事が着々と進んでいる。

 その改修だけを見ても、本国がどれだけアテルナ国攻略に注力しているかが、解るというものだ。

 「こちらです」

 大きな倉庫のような第二格納庫の前で、兵士が足を止めた。

 「ああ、助かったよ。ありがとう」

 バロスが礼を言うと兵士は敬礼をして去って行った。


 格納庫の大扉は開いていて、外からでも見知った竜鎧機“夜鴉”の姿が見て取れる。

 バロスは夜鴉を弄る壮年の男に声をかける。

 「ボズン中級飛士殿!!」

 声をかけられたボズンは驚きの顔を見せるが、それがバロスだとわかると一転、髭で覆われた熊のような顔を思わず破顔する。

 「バカヤロー!誰かと思ったじゃねぇか。脅かすんじゃねぇよ、バロス!」

 バロスの方も嬉しそうに笑って答える。

 「お久し振りです、ボズンさん」


 二人は格納庫隅にあるイスに座り、往年の友人のように親しげに語り合う。ボズンは34歳でバロスは22歳。12歳の違いはあるが年齢を感じさせない関係がそこにはあった。

 「よく来たな、バロス!お前の活躍は聞いているぞ。しかし、こうして顔を合わせるのはいつ振りになるかな?」

 「もうかれこれ3年になりますよ、ボズンさん」

 「そんなになるか・・・・」

 時の流れに、年々鈍感になる自分にボズンは笑ってしまう。

 「チェルタヤさんはお元気ですか?」

 「ん?ああ、あいつなら変わらず元気にやってるよ。今日もどこかで飲み潰れているんじゃねぇかな」

 「いつも通りで安心しました」


 久しぶりの再会に、懐かしさに浸っていた二人であったが、懐かしさに一息つくとバロスが突然立ち上がり、襟を正してボズンに向き合う。

 「ロンゴさんのこと驚きました。戦死なされたと聞いても、しばらく信じられませんでした。・・・お悔やみ申し上げます」

 バロスは敬礼をして黙祷(もくとう)を捧げる。

 「ははは、そんな畏まるなよ。ロンゴの奴もあの世でどうしていいか分かんなくなっちまうよ。まっ、忙しい中お前が来てくれたことは、喜んでくれてると思うがな」


 ロンゴ、ボズン、チェルタヤの三人は“三羽鴉”で名が知られた、基地襲撃や要人襲撃の特殊任務も軽々こなす歴戦の兵士達であった。

 駆け出しだった若きバロスは、任務で彼らと組まされ戦いの中、戦場のイロハや兵士としての心構えを嫌というほど叩き込まれたのであった。

 言わばバロスにとって、彼らは戦場を共にかけた戦友であり、同時に師匠とも言える存在であったのだ。


 それが、アテルナの新型機奪取という作戦の中、三羽鴉のリーダーであったロンゴが戦死したと聞いて、バロスは急ぎ駆けつけたのだった。

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