第二十三話 拝啓、じゃじゃ馬乗りは大変です
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」
是空が雄叫びを上げる。その音圧で壁が軋み部品は滑り落ち、工房全体が震えているようだ。
作業員達も、あまりにも急な是空の雄叫びに、逃げることを忘れて立ち止まり見上げるしか出来ずにいる。
「まさかここに来て“暴走”!?クレン君、操縦士の状況は?」
ルテアの悲痛な声が聞こえる。
「駄目です!少し前からモニター出来ません。生命反応はありますが、魂魄状態と精神状況は不明のままです!」
「何てこと!・・・・仕方ありません、このまま是空を爆破します!!必要作業員以外は早急にシェルターに避難して下さい!」
・・・・暴走、爆破!?やれやれ、ようやく現世に戻ってきたと思ったら、ホントの意味であの世に送られちまう!
「ルテア止めろ!暴走じゃねぇ。同調は成功だ!!」
「ユウゴさん!?え、あ、それじゃ・・・」
「全員をどかせ!是空が外に出たがっている。出口を教えろ!!」
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」
クソッ!!同調したってのに、こっちの操作に従わねぇ。とんだじゃじゃ馬竜鎧機だ!
「8番搬入口から外に出られます!作業員は、即刻是空から離れなさい!8番搬入口、扉緊急解放!急いで」
工房内を引っかき回しながら、獣のように暴れ回る。その上、尻尾が鞭のようにしなり周りをたたき壊している。作業員が頭を抱えながら逃げていくのを、押し潰さないようにするのがやっとだ。
8番搬入口の扉が動くのが見えた!
「あっちだ、是空!いい加減にしろ、このバカ竜鎧機が!!」
傀儡籠手を力一杯押し倒して、是空を搬入口へと移動させる。
是空もそこが外へと繋がっていると気づいたのか、今度は開ききらぬ扉を押しのけ搬入口に突っ込んでいく。
竜鎧機には、意志があるとは聞いたことがある。それは、死んだ竜の意志が竜鎧機に残り続けているからだと。
正直俺は、その話をあまり信じてはいなかった。そりゃそうだろ。
俺の扱う竜鎧機は量産機で、同調暗号を打ち込めば誰でも乗れる兵器体だ。意志の話も、相性程度の軽いものと深く考えてはいなかった。
それが吃驚仰天、認識を改めさせられる光景だ。こいつは俺の操縦の半分くらいしか従わない!
「意志があるのは結構だが、俺の操縦には従えって言うんだよ!」
8番搬入口は傾斜のついた大型昇降機になっている。こいつはそこを四つん這いに這うように登っていき、一心不乱に地上を目指す。
マズいぞ!地上の状況が一切わからん!
是空に潜っていたせいで時間感覚もあやふやだ。月明かりか、襲撃の炎かわからないが顔を上げた先に光が見える。
その途端、是空は狭い昇降路で翼を広げ、推進器を全開にして飛び上がる。
狭い昇降路のせいで翼は開ききらず、それでも強引に推進器の噴出力で飛び出していく。
空間が広がり、風を感じる。空だ。
操縦席で風など感じるはずもないのに、確かに俺は風を感じた。
四方には遮る物がなく、空には星空が瞬いている。外に出たのだ。
だが、そんな感傷も一瞬のこと。視界には燃えさかる炎と黒煙が、辺り一面に広がっていた。
俺が驚きの声を上げるより先に、是空に異変が起きる。翼や推進器に力がなくなり、急激に落下し始めた。
「こ、こいつ・・・急に全部の操作権を俺に渡して来やがった・・!」
「ユウゴ、ちゃんと操作して!落ちちゃうぞ!!」
え?あ、今気づいたが俺の側にはピリカがしっかり掴まっている。
「ピリカ!お前いつの間に?」
「ずっといたでしょ!それより、早く操縦して!」
俺は急いで、足元にある足鍵盤を強く踏み込む。基本操作は、嘉風とそう変わらないはず。これで、激突は免れるはずだ!
推進器と同時に姿勢装置が作動する。勢いは弱まったが、それだけでは不十分か!
俺は更に足鍵盤をいくつか踏んで、着地に備える。
ガガガと、大きな衝撃はあったがどうにか無事に着地に成功した。・・・疲れた。
もうさっさと是空を安全な所に運んで終いにしたい気持ちでいっぱいだ。
「えーと・・・無線はどこだ?ヘッドセットで出来るのか?あー・・所長との連絡は・・なぁピリカ、お前連絡の取り方知ってるか?」
「・・・ねぇユウゴ、上の方ちょっと見て」
「んー・・・悪い、ちょっとこっちも忙しくて・・えー、無線装置無いぞ?もう、オシャレに作ってわからなくするなよ・・こういうのは、ダサいくらいが丁度いいんだから」
「ねぇねぇ、ユウゴ・・・あれ」
はぁ・・・もう、うるさいな。
「上が何だよ?いったい上に何があるって・・・」
見上げたそこには、夜空に紛れた不吉な竜鎧機“夜鴉”が死体を待つ大鴉のように、悠然と俺達を見下ろしていた。
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あと、挿絵もちょいちょい追加していきます。




