ずるいパフェ【親指ペロGL編】
「メイ、ここだよ!あたしのオススメパフェ!」
「そっかぁ。エリちゃんのお墨付きなら絶対おいしいねぇ」
そう笑ってメイは、名前を書くリストに、綺麗な字で自分の苗字を書き込んだ。
寒い風に吹かれてぐしゃぐしゃになった髪を軽く結んだメイは、恐ろしいほどかわいくて、魅力的だ。
おっとりと話すこの子は、最近“お友達”になった転校生のメイこと、メイサ。メイはあたしのこと友達としか見てないみたいだけど…あたしはメイが好きだ。
今日ははじめての寄り道。「放課後にパフェってお友達っぽい!」というメイの提案だけど、これって実質デート…だよね?
「エリちゃん、呼ばれたよ。中入ろ?」
「うっうん!」
ドキドキしてるのはあたしだけだと思うけど。それでも楽しい。やっぱり片想いって楽しい!
「私チョコにするけど…エリちゃんはどうする?」
「あっ、えぇっと…」
やばい。テンション上がりすぎて考えてなかった。オシャレなメニュー表を開くと、季節限定と大きく書かれたパフェが視界に入った。そこには、大きな苺がたくさん乗ったパフェが写っている。
どれもこれもおいしそうだなぁなんて目移りしちゃうけど、結局限定と文字に囚われて、つい苺のたくさん乗ったちょっとお高いパフェを選んだ。
数分後、きたパフェには、真っ赤で美味しそうな苺が何段も重ねられて、赤く艶めいていた。
「すごいねぇ」と笑うメイのパフェには、小さなふたつのチョコブラウニーと、チョコクッキーが付いていた。
「いただきます」
お上品に手を合わせたメイが、チョコクリームと器用に半分に切ったブラウニーの乗った小さなスプーンを口に運んだ。
美味しそうに、にっこりとほっぺを膨らませるメイは、すごくかわいい。
目の前のメイも最高だけど、苺につられて、スプーンに苺とピンク色のクリームを乗せて、口の中に放り込む。
口いっぱいに、苺の甘酸っぱさと甘いクリームが広がった。これ、すっごく美味しい!
甘いスイーツにかわいいメイはすごく幸せだ!
「あ、エリちゃん。ここにクリームついてるよ」
呑気に幸せに浸っていたら、メイが自分の口の端を指してあたしを見つめた。
見られたと思うと急に恥ずかしくなって、すぐに鏡を取り出す。
「あ…ほんとだ」
自分の親指でピンク色のクリームを拭う。その瞬間。
「ん。あ、苺クリームおいしいねぇ」
いつも変わらないおっとりとした表情で微笑むメイは、あたしの親指を取ってペロリと舌で舐めた。
「………は」
咄嗟のことに頭が追いつかない。
「え…あっごめんね!普段弟にやってるから…。…嫌、だった?」
上目遣いすらもプロ級にかわいいメイ。
ああ、やっぱり。先輩は…。
「ずるいぃ……」
「えっ、なにが?やっぱり嫌だった?」
そんな答えが決まり切った問いに、全力で頭を横に振った。一気に顔が赤くなっていたことがわかる。
メイは「よかったー」と安心そうに、また切ったブラウニーをスプーンに乗せて、あたしに差し出した。
どこか頭の片隅で弟さんいいなぁなんて思ってる自分が居ることに、あたしはとっくに気づいてた。
意識すらしてくれないメイに翻弄されてばっかで、なんか悔しくなったあたしは、そのブラウニーの乗ったスプーンを口に入れた。全力で頬張るあたしを見て笑うメイ。
「エリちゃん、美味しそうに食べるねぇ」
にっこりと笑うメイはやっぱりかわいい。
メイには勝てないなぁなんて考えてたら、あることに気づいてしまった。
「あ」
あれ、間接キスじゃん。
そんなことに気づいてまた顔が真っ赤になったのは、ここから3秒後の話。