第4話 牛歩
サマーフォードへ向かいながら記憶を整理する。
でかい街の近くにある敵は弱い。
まぁ、泥臭いやり方になってしまうが、この周りの敵を2〜3発で倒せるようになったら、次の目的地を目指す、もしくは新しい敵に手を出す。
これでどうだろうか?
うん、悪くない気がする。
いま、周りの敵はまさに2〜3発で倒せているから、このまま倒しながらサマーフォードを目指そう。
サマーフォードが見えるようになった頃、新しい敵が目に入った。
マンドラゴラだ。
こいつは白い大根みたいな敵で、頭にある大きな双葉がかわいい。
ゲーム内で俺が一番好きな敵だ。
倒すのは心が痛むが、1匹だけ...
強さ確認のために倒してみる。
こちらから仕掛けると頭突きをされて痛い、が、これまでの敵と大差ない。
やはり3発で倒せた。
これなら問題ない。
サマーフォードは、この坂を上がったところだ。
太陽が真上にある。
今の所、野宿確定だ、急ごう。
坂を登り切ったところに大きなエーテライトがあった。
そうだ、ここにもあるんだった。
手をかざして交感しておく。
こうすることでテレポが使えるようになるはずだ。
そういえば、魔法、と言えるかわからないが、テレポはどうやってするんだ?
ゲーム内ではもちろんコマンド入力だった。
いまは、交換したエーテライトはリムサかここ、サマーフォードだけだ。
テレポのことを考えているとチラチラと景色が浮かんでいる。
試しに使えるのか、確認してみよう。
おれはリムサではなく、サマーフォードに意識を集中する。
ふわり、と体が浮かんだ、
イケそうだと思ったところで、意識を元に戻す。
キャンセルも大丈夫だった。
なぜキャンセルしたかというと、お金、ギルがかかるのだ。
冒険序盤はお金がない。
試しのテレポなんかには使えない。
世知辛いことこの上ない...。
ちなみに今の段階で稼ごうと思ったら、その辺にある困った感じの人に声をかけて「なにか助けが必要ですか?」と聞くしかない。
御用聞きだ。
しかも、先方の言い値だ。
もちろん、先方の言い値が割りに合わないと思ったら、断ることもできるんだが、今の所持金は...宿代にすらならないほど少ない。
なんでも「喜んで!」というしかない...。
さて、テレポができそうなことがわかったので、サマーフォードの責任者に声をかける。
いくつか用事を片付けたが、この時、報酬としてお金ではなく装備をもらう選択肢もある。
持っているなら別だが、今の装備より強いなら武器防具が最優先だ。
余談だが...装備の名前が揃えてあるシリーズものというのがあるが(ファイアオブ〜とかだ)これだと一式揃えた時見た目に統一感があっていいんだが、クエストで強い防具をもらうたびに見た目が変わってどんどんダサくなるのだけが残念なところだ...
まさに今のおれが、そうなんだがな...
さて、軽いお使いが終わったところで、物騒な話を聞いた。
最近この辺で人攫いが横行していると。
近くにガラの悪い男たちがたむろしていて、農夫たちが攫われるんじゃないかと怯えているらしい。
「シーソング石窟」というところで、何度もそいつらの目撃報告があったらしい。
何があるかわからない(とはいえ知っているのだが)ので、一泊させてもらって明日行くと交渉して
その日は柔らかいベッドの上で1日を終えた。