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憎まれっ子、仲間が出来る。

――カルミア 街中――

路地裏を出た俺と獣人の少女は、会話も無いまま冒険者ギルドへ向かうも、営業時間が終了しており開いていなかった。そりゃそうだよな。24時間営業なわけないもんな。今で体感的に18時だからそんなもんだよな。と考えていると、隣が臭う。やはりお風呂に入らせて貰えてなかったせいか、かなり臭う。ちらっと獣人の少女の方を見ると、何やら哀しそうな顔をしている。小さいながらも女の子だから、お風呂には入りたいよな。「よし、お風呂に入れる所を探そうか!」と少女に言うと返事は無く、頷くだけ。なるほど、確かに口数が少ない子だ。

俺は通行人の男に声をかけた。「すみません。この辺りでお風呂に入れる所を探してるんですが…」

「あぁそれなら、冒険者ギルドの向かいに宿があって、そこなら日帰りで風呂に入れるぞ。地下から湧き出るお湯だから格安だぞ。」温泉か。格安なのは有難い。

「ただ…その獣人の嬢ちゃんはどうだろうな。獣人ってだけで差別する様な輩が居るから、気を付けてな。」この世界では獣人は差別されているのか…だから格安で奴隷にされていたんだな。

「色々とありがとうございました。それでは失礼。」

俺は通行人の男に軽く会釈をし、宿へと向かった。


――カルミアの宿 アウベージ――

宿に着いた。ギルドの向かいにあるっていうのは便利だから、このまま何も問題がなければ暫くはアウベージを拠点とするかもしれないな。

受付は…14歳くらいの少女に見える。

「とりあえず一泊と、入浴を頼みたいんだが」

「アウベージへようこそ。ご利用ありがとうございます!一泊と入浴ですね!お2人合わせて1600Gになりますがよろしいですか?」安い。とてもよろしい。

「あぁ頼む。えっと…同じ部屋でいいか?」

獣人の少女はまたこくりと頷く。

「お二人様一部屋ですね!タオルやバスローブ等はお部屋にありますので、ご入浴時にご利用ください!それではご案内します!」足軽に階段を上がっていく少女に着いていく。「こちら101がお客様のお部屋になります!朝食は机上のベルを鳴らしていただければお持ち致します!」朝食まで付いているのか。それで1600G。安い、安さが爆発し過ぎている。

「ありがとう。俺は冒険者のユウ。こっちは…えっと…」獣人の少女に目をやると、初めて目が合った。

「わたしは…リン…。」そして初めて口を開いた。

「そう!リンだ。これから暫く世話になると思うからよろしく頼む。」

「私はセーラです!ユウさん、リンさん、こちらこそよろしくお願いします!では失礼します!」セーラは軽く会釈をして扉を閉め、トットットッと軽やかに階段を降りていった。

「若いのにちゃんとしてるなぁ…」うわ。今のおじさんくさいな。俺も若いのに気を付けないと…。

「さてリン。とりあえずお風呂に行こうか?」

ふと俺は思った。(他人の少女と混浴?いやいや有り得ないだろ。第一リンが嫌がるだろうし…でも聞いた話では獣人は差別があるって聞いたしな…あぁ心配だ…)

「わたしはご主人様と一緒がいい。」

「ごごごごご主人様!?え!?いいの!?」

とても気持ちの悪い反応をしてしまった。そうだよ。リンが差別に遭ったら誰が助けるんだ。一緒に居ないと危険だよな。

「わかった。一緒にお風呂に行こう。それとご主人様っていうのはちょっと照れくさいな。何とかならないか?」

「わたしはあなたの奴隷。だからご主人様。」

「俺はリンの事を奴隷なんかじゃなくて、仲間だと思っている。だからそういうのはよしてくれないか?」

「うーん、じゃあ…ご主人?」それはそれでどうなんだ。呼び方セールスのおっさんみたいだぞ。

「うんまぁ好きに呼んでくれ…じゃあ行こうか…。」

何とも言えないコレジャナイ感を抱きながら俺はリンの手を引きながらお風呂へ向かった。


――アウベージ 風呂場――

(流石に混浴ではないのか。いや期待はしてなかったけどね?ほら文化の違いとかあるじゃん?ワンチャンあったらいいなと思うじゃん?おや?背後から何やら冷たい視線を感じる。)

(ご主人、心の中にぎやか。スケベ。)

リンは心を読める能力を持っていた。しかし、心を読める事を両親に話すと気味悪がられ、奴隷として売られてしまった過去がある為、心を読めるという事は誰にも言わないと誓っている。


服を脱ぎ、産まれたままの姿でといいたいところだが、少女が横にいる為タオルで股間は隠す。いざ入浴!の前に洗体だな。これはマナーでありモラルだ。欠かしてはいけない。リンは…まじまじと見る訳にもいかないから隣に居るだけでいいだろう。俺の動きで洗い方も分かるだろうしな。

ここは…石鹸しかないか。シャンプーなんてもんないわな。とりあえず石鹸を手に取り泡立て、頭から洗う事にした。うん?石鹸なのにゴワゴワしない。シャンプーよりも泡立ちが良くて髪にもいい気がする。これなら困らないな。(リンは…髪が長いから大変そうだな。)身体は洗ってやる訳にはいかないが、髪くらい良いだろう。「リン、良かったら頭洗ってやろうか?」

「いいの?ご主人。じゃあお願い。」リンにはユウに邪な気持ちが無いのが読めているから、素直に頼んだ。

「あぁ任せておけ!痛かったら言ってくれよ?」

俺はリンの髪に泡をつけ、まずは表面の汚れを落とし、一旦流す。「お湯、熱くないか?」「うん、大丈夫。」確かにここのお湯は熱すぎずぬる過ぎず丁度いい。40℃くらいになっているようだ。

髪の表面の汚れを落としたら次は頭皮だ。優しく包み込むように手のひらで覆い、撫でる。「んお…おぉ〜。」リンが何とも間抜けな声を出している。その後、指の腹で円を描くように摩擦する。「おぁ〜…んんぅ〜。」さらに間抜けな声を出す。余程気持ちがいいんだなヨシヨシ。俺の特技に頭皮ケアを追加しよう。

すすぎ残しのないようにリンの髪と頭皮を洗い流した後は、身体は自分でやるように促した。

「身体は自分で出来るな。じゃあ俺は先に洗ってお風呂に浸かってくる。」爆速で洗体を終わらせた俺は湯船に浸かる。(戦闘の後の銭湯は身に染みるなぁ〜。)

洗体を終えたリンが、寒そうにしてやってきた。

「なんだ、寒いのか?ほら早く湯船に浸かりな。」

「ううん、一瞬だけ寒気がしただけ。うぃ〜。」

喋りながら湯船に浸かると、おっさんみたいな声を出すリン。(こいつ中身おっさんじゃないのか?)

(ご主人、とっても失礼。わたしまだ10さい。)

丁度いい温度の温泉に満足した2人は、着替えて自室に戻った。


――アウベージ 101号室――

今は…20時くらいか。寝るには少し早いがどうしたものか。「リン、何かしたい事はあるか?」「ご主人、お腹空いた。」そうだった。昼にリンと出会ってから俺も何も食べていなかった。だが外に食べに行こうにも、リンが着る服がない。せっかく身体を綺麗にしたのに、汚れた奴隷服を着るのは良くない。そうだ。セーラの昔の服を売っては貰えないだろうか。まだ受付にいるだろうか?行ってみよう。「よし、わかった。その前にちょっとセーラの所に行ってくるから待っててくれ。」「うん。」善は急げだ。足早に向かう。


――アウベージ フロント――

「あれ?ユウさん、どうかされましたか?」

「あぁいや…えっと…」こういうのは単刀直入に言った方がいいな。

「セーラが昔着てた服を売ってくれないか?」

「えっ…」顔が引き攣るセーラ。またやってしまったか。

「違う!違うんだ!ちゃんと使うんだ!」

「な!何に使うんですか!?」誤解が大きくなっていき、経験値が入ってくる。2人で騒いでいると、ぶかぶかのバスローブ姿のリンも降りてきた。「セーラ、わたし、着る服ない。」

「なぁんだ。私の昔の服をリンちゃんにあげるって事でしたか…先に言ってくださいよ〜」それはすまない。とりあえず俺に変態のレッテルが貼られずに済んだようで何よりだ。

「ちょっと探してきますね〜」そう言い残し、受付の奥の扉に入っていくセーラ。

「リン、そんな姿で出てきて大丈夫か?」

「大丈夫。ご主人、困ってそうだったから。」

「そうか、ありがとうな。」

「ん。こちらこそ。」

そういえばリンに服を用意するなんて一言も言ってないんだが…年頃の女の子だもんな。服は欲しいよな。

(ご主人…にぶい。このままバレないといいけど…)

「お待たせしました〜!昔、気に入ってた服があって、同じの2着買って貰ったんですよ!成長しちゃってもう入らないので2着ともどうぞ!」

セーラが持ってきた服は白と黒で統一されたフリルがついた所謂ゴスロリの服だった。この世界では割と見掛けるからこれが普通なんだろう。それより成長…?確かにセーラは大き「ご主人。」

「な、なんだよリン?」「別に。」何だったんだ…?

「ありがとうセーラ。いくらで売ってくれるんだ?」

「お代はいいですよ!リンちゃんがこの服を着て見せてくれたら私は満足ですので!」

「助かる。今度何かお礼をするよ。」

「おっ、期待に胸を膨らませて待ってますね!」

胸を膨らませてって…むほほw えっちだ「ご主人。」

「ど、どうしたリン。」

「お部屋戻って着替える。セーラ、ありがと。」

「どういたしまして〜」

「1人で着替えられるか?」

「うん。大丈夫。」

セーラに礼をしたリンは、俺に一瞥をする事もなく部屋に上がって行った。俺はフロントで待つ事にした。


――数分後――

「お待たせ」白と黒のゴスロリ服に身を包んだリンが降りてきた。獣耳尻尾にゴスロリ服はチートだろ。(おぉ…可愛過ぎる。それにしても狐の耳と狐色の髪と良く似合う。最高じゃないか。)

「ありがと。」頬を赤く染めながらリンが言う。

「お礼ならセーラに言ってくれ。俺は何もしていない。」

「うん。セーラ、ありがと。」

「あーかわいい。とんでもなくかわいい。リンちゃん、ギューってしてもいいですか?」

「あぁいいゾ。」

「なんでご主人が むぐっ…」

リンに抱き着くセーラ。若干苦しそうなリン。それを見る俺。win-winだな(?)

「じゃあお待ちかねのご飯にしようか。セーラ、この辺りで美味しい店を教えて貰えるか?」

セーラはリンを抱き締めながら答える。

「それなら《バッケス》っていうお店がいいですよ!あそこのシチューは絶品です!シチュー以外でも、獣の串焼きとか美味しいですよ!」

バッケスか。昼食もそこだったが、そこまで言うならバッケスに行こう。リンも行ったことないだろうし、獣の串焼きも気になるしな。

「ありがとう。じゃあリン、そろそろ行こうか」

「お腹ぺこぺこ。たのしみ。」

ようやくセーラから解放されたリンが歩み寄ってくる。

「またギューってさせてくださいね〜!」名残惜しそうなセーラにリンは「…考えとく」とだけ言い残し、俺達は宿を出た。


――カルミアの酒場 バッケス――

カランカランと扉の鐘が鳴る。酒場とだけあって、昼間とは違い大盛況だ。リンに何がいいか聞くと、「セーラのおすすめ。シチュー。」と返ってきたので、おばちゃんにシチューと獣の串焼きを注文した。

「おや、あんた昼間の兄ちゃんじゃないか。また来てくれて嬉しいよ。今度は獣人の嬢ちゃんも一緒かい。気を付けなよ。酒場の男共は気が荒くて何しでかすか分かったもんじゃないからね。」

「ご忠告感謝する。気を付けるよ。」

ここでもやはり獣人差別か。でも今まで1度も遭ってないから大丈夫だろうが、リンから目を離さないようにしないと。とリンを監視していると、酒場の雰囲気が怖いのか、若干怯えているように見える。

「リン、向かいじゃなくて俺の隣に来るか?」

リンはこくりと頷き、俺の横に座る。これで安心だ。

「はい、お待ちどうさま。シチューと獣の串焼きだよ!」

「これは美味そうだ。ところで、獣って何の獣だ?」

「日によって変わるんだがね、今日は特別だよ!腕利きの冒険者が紅熊を狩ったっていうんでギルドから肉を仕入れる事が出来たんだよ!紅熊の肉は絶品だからねぇ、兄ちゃんラッキーだねぇ。」

「う、腕利きの冒険者…」

「そ!兄ちゃんも頑張りなよ!さぁお上がりな!」

ガハハと笑いながら俺の背を叩くおばちゃん。

紅熊…お前こんなに美味しそうになっちまって…。

俺は人生で1番心を込めてこの言葉を言った。

「いただきます。」

リンはもうシチューを食べ進めている。食器の持ち方はなってないが、とても美味しそうに食べていて、こちらも嬉しくなってくる。

「リン、美味いか?」

「うん!」満面の笑み。出会ってから初めて見せた笑顔に俺は涙を堪えつつ、紅熊を頬張った。美味い。

獣肉なのに臭みは無く、焼き加減も赤みがかっているものの柔らかで口の中でホロホロと崩れる。脂身は少なくさっぱりしているので、いくらでも食べられそうだ。

「リン、この串焼きも食べるか?」

「いいの?」

「あぁたくさん食え。おかわりもいいぞ。」

リンに串焼きを渡すと、うめ…うめ…と聞こえてくるかのように美味しそうに食べている。

「この肉の熊、実は俺が狩ったんだぜ?」

なんて冗談めかして言ってみると

「ご主人、すごい。つよい。」

嘘ではないが、こんなに簡単に信じてくれるなんて…やっぱり良い子だな…。

俺達は空腹もあって、あっという間に料理を平らげた。食べ終わった後に談笑していると、皮鎧を着た小太りの冒険者らしき男が突然俺たちのテーブルに近付いてきた。

「おいおい、獣人なんて連れて来てんじゃねぇよ!飯が獣臭くなるだろうがよ!」と言う。

この男、酒臭い。酔っているとはいえ言い過ぎだろう。

「この子は俺の大事な仲間だ。一緒に飯を食って、一緒に寝る。文句は言わせねぇぞ。」俺も熱くなって言い返してしまった。

「あ?お前誰に向かって舐めた口聞いてんだ?」

威圧してくる小太り。ムカついてきた。

「ご主人、わたしの事はいい。出よ。」

「おめぇは黙ってろ!!」リンの前の机を小太りが叩き、「ひっ」と声を上げ萎縮するリン。俺の堪忍袋の緒が切れた。

「リンに何しやがんだボケがァ!!」小太りの胸元に右ストレートがクリーンヒット。そのまま店の壁に激突し、気絶する小太り。1発KO。ほれみたことか。

はっと我に返ると、静まり返る店内。またやってしまったか。俺はリンの手を引き、おばちゃんに会計をしてもらい、店を後にした。ちなみに会計は800Gだった。

「せっかくの晩御飯を台無しにしてすまない。」

リンに謝罪する。元はと言えば小太りが悪いのだが。

「ううん。ご主人、わたしのために怒ってくれてありがと。」

小太りのせいで後味は悪かったが、リンの俺に対する信頼度が少し上がった気がするのでヨシとしよう。

俺達は宿まで手を繋いで歩いて帰った。


リンは狐の獣人です。

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