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まだなにもない  作者: M&Ms
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私と彼の数奇な運命

気づけば、いつも側に彼がいた。

私の運命の歯車に、噛み合うように…。

これは、私と彼に起こる運命のいたずらを記録した物語です。


「ハグして。」きっとこの一言が、私たちの運命の第二章を大きく動かしたんだと思う。彼は大きな心と体で私のことを包んだ。これまでの長く辛い日々と、これからの人生への不安と期待に、その体は小さく震えていた。そして、彼の体温を感じた時、私の中で止まっていた何かが動き出すのが分かった。


「明日から入院します」高校の入学式の日、クラスルームの時間にそう自己紹介した。教室の空気が少しひんやりして、何となく「かわいそう…」という雰囲気になった。彼はサッカー部で足の手術をするらしい。高校生活始まってすぐ、友達作りに重要なスタートの時期に1週間も入院しないといけないなんて…。明るく振る舞う彼の背中にかすかに不安な気持ちを感じた。


私は、この高校にギリギリで合格した。だから漠然と授業についていけるか、不安だった。だから、授業中は必死にノートを取り、家に帰ったらそのノートをさらに整理してもう一冊、ルーズリーフにまとめた…。それでも授業は難しく、辛い辛い勉強の日々が始まった。


1週間後、ギブスに松葉杖という出立で彼は帰ってきた。痛みと不便さに耐えながらハニカム横顔が、何となく気になった。手術は無事に終わったらしい。なんだかホッとした。私の心配をよそに、彼は持ち前の社交性でどんどんみんなと打ち解け、クラスでも部活でもいつのまにかみんなの輪の中心にいた。


ある日の夜、家の電話が鳴った。「授業のルーズリーフ、ありがとう。」一瞬、何を言われているのか、分からなかった。「机の中に授業のルーズリーフが入っていて、すごく助かった。ありがとう。」あ、そういえば…。授業についていけなくて復習で作ったルーズリーフをあげたんだった…。私は、担任の先生にルーズリーフを作っているから彼に渡しても良いかと尋ねて、机の中に入れておいたのだ。さすがに頭が悪くて…とは恥ずかしくて言えなくて、ちょうど学級代表だったことを口実に、「学級代表として、何かサポートしたい」と言ったことを思い出した。

それを見つけた彼が、担任の先生に聞き、律儀にお礼の連絡をくれたのだった。

「いいよいいよ。学級代表ってことで、先生に頼まれたから。」そう言って、電話を切った。何て律儀な人なんだろ…。たかがノートくらいで、わざわざ自宅に電話してきてくれた。この時はそんな風にしか思っていなかった。この一件が、私の人生に大きな意味を持つなんて。この時は全く感じていなかった。いや、感じていたのかもしれないが、意識はしていなかった。


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