表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/56

【Side:鬼灯】 成年の部

※お酒は20歳になってから※

※飲み過ぎにはご注意!※


縹花に頼んでいた通り、いつの間にか杏子や夕緋たちと一緒にどこかへ出かけてしまった篝を縹花が連れ戻してくれて、菫や萌黄、柊も交えてジュースで乾杯しだせば。


浅緋が俺の手を引っ張り上げた。


「おい、どこへ」

「いいじゃんいいじゃん。最終日なんだからぁ~。未成年組はこっちで楽しんでもらって俺たちは俺たちで楽しみに行くよ~っ!」

全く。最終日はいつも強引にあちこち巡りだすのだから。去年まではジュース瓶だったが、今年からは酒瓶を抱えている。そう言えば、20歳になってから会いに来た時はよく持ってきていたなと思い出す。


まぁ、今日くらいは付き合ってやるか。

浅緋に手を引っぱられて行けば、縹花と一瞬目が合う。そう言えばコイツは成人しているがーーまぁいいだろう。酒よりも妹なやつだから。緑鬼の連中と篝が顔を合わせるのを父上が渋っていたからな。緑也さんならいいと許可を出してくれたが。だからこそ、篝が顔を合わせないように縹花には頼んでいた。

まぁ、アイツはアイツで妹たちと戯れられて満足そうだから、お互いに有益な取引だった。


「やぁ~、白夜!挨拶回り終わったみたいだね~」

浅緋が酒瓶を掲げながらどこに連れて行くのかと思えば、挨拶回りを終えた白夜のところだったらしい。最後の挨拶は星鬼ほしおにのところだったらしく、そこには灰斗かいとが座っていた。


代理で長を務めていた白蓮はくれんさんが「後はみんなで楽しんで」と手を振ってその場を後にした。


「ほら、せっかくの白蓮のじいちゃんの気遣いなんだから、白夜も飲もうか~」

そう言って、いつの間にやらさかずきに酒を注いだ浅緋が白夜に差し出す。


「あぁ、うん」

んくっ


一口飲んだ白夜はーー


バタンッ


「え、ちょ。浅緋!?何飲ませたの!?」

さすがに灰斗が立ち上がり、浅緋から酒瓶を取り上げる。


「泡盛じゃねぇかこれ!こらぁっ!!」

ボカッと灰斗が浅緋の頭を叩く。


「白夜、そんなに酒が弱かったのか。鬼なのに」


「鬼灯は冷静すぎるぞ。おーい、白夜の介抱して」

灰斗がひとを呼べば、星鬼のお付きの侍従たちが白夜を会場の隅に運んでくれて、介抱してくれるようである。


「他にも、これとか、これとか」

浅緋がどこからか次々と酒瓶を取り出す。


「あ、これ珍しい!って、何でこんなに持ち込んでんだっ!」

灰斗が叫べば。


もみの国はスイーツだけじゃなくて、酒も有名だから~。今回の会合に合わせて酒屋からいろいろ買い付けてきた~!」

そう言えば。篝や杏子たちは、縹花と一緒にスイーツを楽しんでいたが、酒蔵も有名だったと思い出す。


「さぁさぁ、飲もうかー」

「まぁ、しょうがねぇな」

灰斗と浅緋と、酒を注ぎ合って飲んでいれば。


「あれ、もう始めてたの?そう言えば白夜はーー」

椿さんが桜鬼さくらおにが暮らす花の国のお酒を持ってやって来て、早速盃に注いでくれる。そして周囲をちらほら見やれば。


「白夜、潰れちゃったの?もう、無理させちゃダメでしょ?」

と、椿さんが浅緋に告げれば。


「一杯だけだったのに」

「でも泡盛だろ」

浅緋と灰斗の言葉にーー


「鬼なのに、―――ううん、弱い子もいるからね。これからはあんまり飲ませない方がいいかもね」


「そう言えば、俺と鬼灯で会って飲むことはあっても、白夜と飲んだことないかも!」

今更ながら浅緋が思い出す。


「そう言えば」


「明日、薬湯作ってあげなくちゃ」

まぁ、だが椿さんが薬湯を作ってくれるのなら大丈夫か。


よにんで酒を飲み比べていれば。


「あれ、もう始めてた~」

ようやく陽春が現れたのだが。


「あれ、もう酔ってるの?」

そう椿さんが問えば。


「うんー!ナンパしながら飲んでたー」

相変わらず、コイツはお付きで来た女性たちに声を掛けていたらしい。そう言えば今回も氷菓に声を掛けていたな。全く。


「あ、こんなところにも、美人が」

そう言って陽春が椿さんの手を両手で包めば。


ゴッ


「おい、灰斗。陽春も潰れたから、頼んだ」

「いや、今お前がーー」

「え゛?」

「あぁ、分かった分かった。俺らの椿ちゃんをナンパした罰ね」

そう言って灰斗が手を叩くと、星鬼のお付きたちが陽春も運び出す。


「もう、ふたりしてダウンしちゃうんだから。陽春も飲みすぎちゃダメだよね」

「え?椿さん。そこなの?陽春のは鬼灯がーー」


「ほら、飲め」

「ぐふっ」

浅緋の口に盃を押し付ける。


「あぁ、美味しぃ~っ!もう一杯!」


「あぁ、俺はもう静かに飲むわぁ」

と、灰斗がしみじみと飲み始める。


「そう言えば、緑也さんは?」

「俺飲ませてくる―――っ!」

椿さんがきょろきょろとあたりを見回せば、浅緋が緑鬼の席へと駆けだして行く。


―――3分後。


「ひぐっ、えぐっ。俺、静かに飲みますぅ」

何故か泣き上戸になった浅緋が緑也さんに連れられてきた。


「お酒は飲んでも飲まれるなって、言うでしょう?」

そう、緑也さんが告げる。まぁ、浅緋はある意味別なものに飲まれている気がするが。


「ほどほどにね」


『は、はぁい』

浅緋と灰斗がしくしくと盃を啜っているのを見てしみじみとしながらも、俺は緑也さんの盃に静かに酒を注ぐのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ