素晴らしき妹の園
※氷菓と縹花。そう言えば音同じだなぁと今更気が付きました(/・ω・)/。ただし縹花の方は大体、お姉さまがついてきます(´艸`*)。
※妹萌えVS妹好き
「今日は騒がしかったな」
交流会が終わり、寝室に戻れば、布団に座り込んで鬼灯がふぅっと溜息をつく。
「でも、楽しかった」
私が微笑めば、鬼灯がいつものように頭をぽふっとしてくれる。
「お姉ちゃん、お待たせー」
暫くすると、杏子ちゃんがお部屋に帰ってきた。今まで菫ちゃんのところに行っていたらしい。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。さっき縹花お姉さまから女子会やろうって誘い受けたんだけど、お姉ちゃんもくるでしょ?」
「女子会?」
「女の子同士で集まるんだ!浅緋お兄ちゃんにお願いして、お部屋用意してもらったって。あとお菓子とかお茶もでるって!縹花お姉さまがお菓子をたくさん持ってきてくれたんだって」
「た、楽しそう!」
「おい、何だその催しは。聞いていないぞ」
鬼灯が口を尖らせる。
「別にいいでしょー?だいたい、お兄ちゃんは明日長の会議に参加しなきゃいけないんでしょ?」
「まぁ、そうだが」
「その間、お姉ちゃんはフリーなんだから!お姉ちゃんをひとりにしておくつもり?」
「いや、それは氷菓が」
「氷菓もついているけど、女の子同士で楽しむのだっていいじゃない!」
「まぁ、確かに。篝も、行きたいのか」
「う、うん。ダメ?」
「いや、その。まぁ、わかった」
鬼灯は何だか照れながらも頷く。
「それじゃぁ、決定ね!」
「その代わり、杏子!」
「なぁに~?お兄ちゃん」
「篝に余計な虫がつかないようにしておけ」
「いや、女の子同士の集まりに虫なんてつかないでしょ」
「縹花のやつがいるだろうがっ!」
その、氷菓も“縹花お姉さま”も“ひょうか”なのだけど、今回のは縹花お姉さまのことなのだろう。
でも、鬼灯の言葉は一体どういう?
「と、とにかく。明日に備えて寝るぞ。早く寝ないと、明日起きられないぞ?」
そう、鬼灯が杏子ちゃんを見やれば。
「もうそこまで子どもじゃないも~んっ」
そう言いつつ、杏子ちゃんも布団に入るのだった。
「鬼灯もお兄ちゃんだね」
そう、鬼灯に微笑めば。
「んなっ」
何故か驚いた顔をしていた。
「杏子は手がかかりすぎる」
「どこが~~~っ!」
そんな鬼灯の言葉にむきーっと杏子ちゃんが声を荒げるが、そんな風景も何だか微笑ましく思えたのだった。
***
「それじゃぁ、か~んぱ~いっ!」
翌日、鬼灯は長の会議に出席するということで、私と杏子ちゃんは縹花お姉さま主催の女子会に参加していた。他にも、萌黄ちゃんと菫ちゃんが参加しており、氷菓がお茶を淹れて出してくれた。
「あぁ、いいわね。妹の園!」
「お、お姉さまったら」
萌黄ちゃんが苦笑する。座布団で囲んだ中心には、様々な菓子が用意されていて、どれも美味しくてついつい手が伸びてしまう。そして唐突にーー
「ねぇ篝ちゃん。わたくしの妹にならない?」
「えっ!?」
そう、縹花お姉さまが問うてくる。
「ウチに来ない?」
「えっ!?」
それって、海の国ってこと!?
「縹花お姉さま。お姉ちゃんを本気で連れ帰ったら、お兄ちゃんが鬼の形相で追っかけてくるよ」
「お、鬼、ですけどね」
杏子ちゃんの言葉に、菫ちゃんが呟く。
「そうなのよねぇ。全く、何であの万年仏頂面がこんなにかわいいお嫁さんをもらうのかしら。妹に欲しいわっ!いいえ、誰かわたくしの妹に来ませんこと!?」
「お、お姉さまったら~」
萌黄ちゃんが戸惑っている。
「あぁ、もちろん、みなさんわたくしの妹ですわよ!うふふっ」
縹花お姉さまが微笑んでいれば。
「縹花姉」
襖がすとんと開いたのと同時に、そう呼びながら浅緋さんが姿を現した。
「あら、浅緋さん。何の御用ですの?今、ここは男子禁制ですのよ?」
「いや、鬼灯にここに妹たちの素晴らしき楽園があると聞いたんだがっ!―――はっ!!」
浅緋さんの目が、杏子ちゃんと菫ちゃんを捉える。
「わたくしの妹に手出しは許しませんのよっ!」
「ぐはっ」
縹花お姉さまが瞬時にボディーブローを決めていた。
「縹花お姉さま、すごいっ!」
見事な鮮やかな技に感心していれば、
「浅緋お兄ちゃんってさ、強いくせにあぁいう技はわざと喰らうんだよね。妹萌えの上にドMだよね」
と、杏子ちゃんが呟く。
そして倒れた浅緋さんを外に放り出し、縹花お姉さまが静かに襖を閉じる。
「さぁ、みなさん。気を取り直してーー」
その時再び襖が開く。また、浅緋さん?
「鬼灯からここに、女子の園があると聞いてきた!!」
それは、砂鬼の陽春さんであった。
「悪鬼退散っ!!」
縹花お姉さまが見事なストレートパンチを決め、陽春さんが一瞬にして吹っ飛んで行った。
というかその技名は、本来退魔師が使う術ではなかっただろうか。でも、実際のその術とは違う気がしなくもない。
「あの、陽春さんは大丈夫でしょうか?」
見事に吹っ飛ばされたため、陽春さんが大丈夫かどうか襖の先を覗こうとしたのだが、縹花お姉さまがすとんと襖を閉じてしまった。
「今日はよく邪魔が入りますわね。―――全く鬼灯ったら」
縹花お姉さまがぼぞっと呟く。
そう言えば、浅緋さんも陽春さんも“鬼灯から”聞いたと言っていたような?―――まさかね。
「さ、女子会を続けましょうか」
縹花お姉さまが仕切り直し、女子会は再開される。こんな風に女性同士で集まったことなど初めてだったから少し緊張したけれど、とても楽しい時間を過ごすことができたのだった。
※因みに縹花お姉さまに「明日お茶ができる適当な部屋を用意してくださいまし」と頼まれて部屋を用意した浅緋は単なるお茶用だと思っていましたが、その部屋で行われる女子会について、鬼灯にそのお茶会の詳細が女子会であり、縹花お姉さまが妹の園を囲んでいると教えられて初めて知りました。




