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【Side:鬼灯】 法の外の裁き

※残虐描写が含まれます

※ざまぁ回


「―――で、内通者は捕らえたのか。とき


篝を屋敷まで送り、後を氷菓と叔父上に任せた俺は再び王城を訪れていた。


「あぁ、父上がせめてもの情けだと長年仕えた侍従と騎士を僻地の幽閉地につけさせようとしていたのだが、その2人が手引きしたらしい」


「ふんっ、陛下がウチの父上の怒りを必死で抑えてつないだ命だというのに、あっけなかったな」

「まぁねぇ」

鴇も長年あれには苦しめられた。だからこそ最後までバカな所業を働いたあれに情など持ち合わせていない。


「前回は王族で王太子だったからこそ、父上の懇願でせめて命だけはつなぎとめたが、今のあのひとは平民だ。その命を懇願する材料も理由も何もない。今度こそ父上も重い腰を上げた。で、鬼はどうする気だ」


「なに、最期に少しばかりお灸をすえてやるだけだ」

ニィッと口角をあげれば、鴇がビクンと肩を震わす。


「何だ、不服か?」


「いいや?別に」


「鬼の一族の怒りをこれでちゃらにしてやろうというのだ。悪い話ではないだろう?」


「ん、まぁなぁ」


「それで、あれらは?」


「この奥だ。今はその時を待っている状況だが、やるのか?」


「当たり前だ。このままでは鬼の長の後継者として示しがつかないからな。俺の篝に手を出したらどうなるかをしっかりと教えてやらんとな」

フッとほくそ笑めば、「じゃぁ、終わったら呼んでくれ」と言い残し、鴇がその場を去る。


俺は砂月を入口に立たせ、そしてその牢のある地下へと続く階段を下る。


「だっ、出してくれぇっ!お、俺は死にたくないっ!」

「と、桃矢さまに脅されたんだぁっ!!」

そう喚き散らすのは桃矢を姫さまの宮に手引きした2人の侍従と騎士だったものたち。


「どうでもいい。貴様らが鬼の魂の伴侶に手を下すことに加担した。それだけで十分だ」


「なっ、お、鬼っ!?」

「ひいぃぃっっ!バケモノめっ!」

全く。鬼が人間に手を貸しているからこそ、数多の妖怪たちから身を守れているというのに。その俺たちをバケモノ呼ばわりか。


「だが、間違ってはいないな。お前らが誰の最愛に手を出したのか、身をもって知ってもらおうか?」

光子ひかりこの蛮行を横でせせら嗤ってみていたあのクズの所業を長年知りながら止めなかったお前たちにも責任はあるからな。そして毎日面白可笑しくその様子をクズと大声で語らっていたことは調べはついている。本当に虫唾が走るやつらだ。こいつらがクズについて僻地送りになると聞いた時、まぁこいつらにとっても罰だと受け入れたが。しかしながらーー


「―――許しはしない。お前らが手を出したのは、こういうモノだ。よく見ておけ」

ガシリッと牢の格子に手を掛け、鬼の纏う霊力を覇気と言う形で解放する。その瞬間、ガタガタと青ざめた顔で震え出した2人の男たちは、泡を吹いて倒れて動かなくなる。


「少し本気でやり過ぎたか?まぁいい。加減は掴んだ気がする」

あくまでも気がするだけだ。


「次は、しっかりと処刑の時まで意識を保たせておかなくてはな」

そう言って、次は元王太子のクズが収められた牢の前に立つ。


「お、鬼めっ!やはりお前たちはバケモノだ!人間を支配しようと企んでいる!」

やれやれ、まだそうやって騒ぐ元気が残っていたか。しぶといと言ったら。

だいたい、鬼が人間を支配しようと思えばとっくにやっている。それをしないのは面倒な執政は人間に任せておいた方が楽だという理由に過ぎない。


そしてその代わりに守ってやっている。お互いにウィンウィンな関係を保っているというのに、そんなことも理解できないのか。


「お前には特別サービスをくれてやろう」

前回は父上に止められて貴様にオシオキをしてやれなかったからな。俺が牢の扉をギギっと開ければ、チャンスとばかりに元王太子が扉に向かってダッシュしてくる。馬鹿か。逃げられるとでも思っているのか?


びしぃっっ!!


「ぎゃふっ」

瞬時に霊力で練った鞭で元王太子を叩き飛ばす。


「さぁ、もっと遊ぼうか?」

二イィィッッ


バシィンッッ


「ひいいぃぃっっ!」


憐れな元王太子の悲鳴が牢内にこだまする。


「こんなのでは足りないがな」

篝が味わってきた苦しみに比べればっ!


そうして泣きじゃくり、鼻水を垂らしながら元王太子が「やめてくれ」と俺に縋ろうと手を伸ばす。


「汚い。触れるな。クズが」

思いっきり霊力をぶつけて壁にめり込むくらいに圧を掛ける。


「がっはぁっ!!」


そして泣き啜りながらぐったりと動かなくなった元王太子の牢を後にし、再びカギをかければ。


「あ、ついでにあれもシメておこうか」


俺が地下室を抜けると、砂月が声を掛けてくる。


「あぁ、終わったのか」

「いや、ついでにもう1匹」

「もう1匹?」

「積年の恨みをただで済ますわけにはいかないだろう?」

俺がにやりと笑みを浮かべると、砂月はふぅっと息を吐きながらも俺の後ろに続いてくれる。ま、砂月もまた俺の側で見てきたからな。特に反対もしなかった。


そして王城から少し距離のある離れに着くと、認識疎外の術を使ってその最深部へ忍び込み、術を外せば、その奥に幽閉されているとはいえ、未だに自分の立場を理解していない着飾った女の前に立つ。


「ひっ!?どうやってこんなところに!離宮の周りには鬼除けがっ!?」


「は?バカな野良退魔師にでも騙されたか?そんなものあるはずがない」

「なっ!だ、誰か!誰か!侵入者がっ」


「誰も来ないさ。音を遮断する結界を張ったからな」


「んなっ」

途端に女は恐怖の表情を浮かべる。


「そうだ、その表情。いい表情だな」


「な、何をっ、妾を誰だと思っておる!」


「あぁ、知っているさ。その昔鴇と姫の母親を毒殺し、ときの命まで狙った」


「ひっ、そ、そんな証拠、どこに?」


「そうだな、ないからお前は今までそうやって贅沢をして生きて来られた。だが今一度、お前が手を出したものがどんなものなのか、その身を以って知るがいい」

ニヤリ、と口角をあげれば、女の声にならない悲鳴が響いたが、それに駆けつけてくるものは誰もいない。


俺がひとり離宮を後にし、外で待っていた砂月とともに、王太子となる鴇に与えられた執務室に向かえば。


「まぁ、やると思ってたけど」

そう、鴇が皮肉交じりに苦笑する。


「何だ、知っていたのか」


「これでも幼馴染みだぞ?いつものはツンデレだったのか」

「誰がツンデレだ。とにかく、こちらとしての処理は済んだ。滞りなく行えよ。鬼と人間のより良い関係を続けるためにも」


「父上にも伝えておく」


「そうか」

短く答えると、俺は砂月と共に城を後にした。早く篝に会いに行ってやらないとな。


その後の話だが、元王太子の桃矢、他今回の件を手引きした2人の元侍従と元騎士の処刑が執り行われた。また、直接手を下していない正妃はその身分と権力を全て没収されて僻地に幽閉されたが、かつての美しさは失われ、彼女は日に日に錯乱してやつれていき、果ては廃人のようになってしまったというが、俺には関係のないことだ。


そして国民に祝福されながら鴇の立太子の儀が執り行われ、新たな王太子の誕生に国中が湧いたのは言うまでもない。



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