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姫さまのお茶会


「やだ!かわいい~っ!―――息子の所有欲を目一杯感じちゃうけど~」

「お姉ちゃんかわいいよ!―――お兄ちゃんったら、何か日々独占欲っての?レベル上がってるけどね」

「とてもお似合いですよ、篝さま!―――鬼灯さまも鬼灯さまですね。全くもう」


今日は姫さまのお茶会に行く日なのだが、氷菓に鬼灯が用意してくれたお着物を着付けてもらっていると、お義母さんと杏子ちゃんも来てくれた。

本日のお着物は黒地にかわいらしい鬼灯柄である。赤い帯もとてもかわいらしい。こんな立派なお着物を着てもいいのかと戸惑ってはいたが、みんなに褒めてもらえてとても嬉しい。何だか後半、所有欲とか独占欲とか言っていたけど、どういうことかはよくわからなかったけど。


「篝、仕度は終わったか」

そうしていれば、鬼灯が砂月さんと一緒に顔を出してくれた。鬼灯の着物はいつも通りの黒である。


「鬼灯は相変わらずだけど、篝ちゃんはかわいいの着付けてもらったなぁ。―――鬼灯の執着心すっごいけどな」

と、砂月さんまで。


「あの、それは」

どう言う意味なのか聞こうと思ったのだが。

「篝は気にしなくていい」

鬼灯に笑顔で告げられ、そう言うものだろうかと思う。


「うん、似合っている」

と、いつの間にかお義父さんと


「わぁ、かわいい!鬼灯ったら父子おやこだねぇ」

お父さんも来てくれている。


お父さんの言葉は一体?


「兄さんもよく着せたがったもんねぇ、蓮の模様のーー」

灯可とうか

お父さんがそう言いかけた時、お義父さんがしゅぱっとお父さんの手をとり、無言で見つめている。


「ふふふ、そう言うところもねー」

にこにこと笑うお父さんに対し、鬼灯は何だか恥ずかしそうに視線を逸らした。


「そろそろ、出発するぞ」

「う、うん!」


「私と砂月も同行しますから、安心してくださいね」

そう、氷菓が打ち掛けを肩に掛けてくれる。


「うん」

そうして、馬車に乗り早速城へと向かった。


城に行くのは初めてだから、ちょっと緊張するなぁ。


「そこまで緊張しなくていい。行くのは城の中心ではなく、姫さまが暮らす宮で、冬宮の術師もいるからな」

「う、うん!」

冬宮の術師。氷菓の実家のひとたちだよね。冬宮家に行った時も親切にしてくれたし、顔見知りがいたらいいなぁと思った。それに鬼灯や氷菓、砂月さんもいるからなぁ。


城の姫さまの宮に辿り着けば、鬼灯が手を貸してくれて、ゆっくりと降りれば。早速とばかりに姫さまのお宮の侍女たちが出迎えてくれた。緊張しつつも鬼灯にエスコートされて進んでいけば。


「お~い!ようこそ~!」

と、緊張感の欠片もなく手を振る第2王子のとき殿下がおり、思わず固まってしまった。何だか周りの侍女や、術師と思われる鬼たちも固まっている。


「あれは無視して、姫さまに挨拶しよう」

と、鬼灯がさらっと告げてくる。えっと、いいのかなぁ。


「いや、ひどない?無視せんといて。傷つくから」

「いや、今回は姫さまに招待されたわけだからな」

「でもいいじゃん!俺一応兄だよ!?お兄ちゃんも構ってよ少しくらい~~~っ!」

「え、お前を?」

「真顔で言うな、言うな。それマジなあれじゃんよ」

何だかいつものふたりのようでクスリと微笑めば、かわいらしい苦笑と声が重なって、驚いて第2王子殿下の傍らに並ぶ姫さまと思われし少女と目が合う。


「あぁ、篝ちゃんは初めてだもんね。妹の桜菜さくなだよ」

そう第2王子殿下が紹介してくれたのは、淡いベージュのロングヘアーに金色の瞳を持つかわいらしい少女だ。年齢は12歳だと聞いている。


「よ、よろしくお願いします。本日はお招きいただきありがとうございます」

ぺこりと挨拶をすれば。


「こちらこそ、お会いできるのを楽しみにしておりました。そんなに硬くなさらないで、鬼灯兄さまのように気軽に接してくださいませ」

そう、優雅に答えを返してくれる姫さまは、12歳とは思えないほどしっかりしている。


「まぁ、鬼灯の俺への扱いは気軽を通り越して雑だけどなー」

第2王子殿下はケラケラと嗤ってはいるものの、何故か目尻に涙が浮かんでいた気がした。


***


姫さまの用意してくれた席に腰掛け、早速茶菓子を出してもらう。王城で出してもらった菓子は、練り切りと呼ばれる花や紅葉を象ったとても色鮮やかなもので、見ているだけで楽しめるものだった。


「鬼灯兄さまには、いつも兄さまがご迷惑をおかけして申し訳ありません。本日はゆっくりと楽しんでいってくださいませ」

「えぇ、姫さま」

鬼灯が姫さまの言葉にこくりと頷く。


「桜菜はいい子だなぁ。でもね、鬼灯は俺に対して容赦がなさすぎるんだよなぁ。篝ちゃんは鬼灯みたいになっちゃだめだよ~」

と、姫さまの頭をなでながら、第2王子殿下がへらへらしながら告げる。その、最後のは一体どういう?


「篝、気にしなくていい」

「そ、そう?」


「鬼灯兄さまと篝さまはとても仲がよろしいのですね」

姫さまがふんわりと微笑む。年下のはずなのに、何だか洗練された所作で輝いている。王族に苦手意識を抱いてはいたものの、姫さまとは仲良くなれそうだなと感じる。


「当然です」

「鬼灯ったら」

そんな鬼灯の即答に、周囲から苦笑が漏れるが、何だか温かな雰囲気に包まれていて、姫さまの宮はきっととても過ごしやすい場所なのだろうなぁと思った。そしてこの場所を用意してくれた姫さまにとても感謝したいと思った。



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