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伯父と従弟との出会い


夏宮なつみや家?」

「そうだ」

その日、私にお客さまが来ていると鬼灯ほおずきから知らされた。


「現在、退魔師の一族の再編成中だが、一段落ついたということで、かがりに是非会いたいと来ている。現夏宮家の当主と、子息だ」


「夏宮家のご当主さまと言うのは」


りんさんの、篝の伯父にあたる」

「私の、伯父さん」

つまりはお母さんのお兄さんである。


「もし、会いたくなければ断るが」

「う、ううんっ」

私は慌てて首を振る。そして着物の中に入れていた青い玉のついたペンダントを取り出す。


「お母さんの形見の、お礼も言いたいから」


「―――そうか、わかった。その場には叔父上も同席するから安心していい」

「お父さんも!うん、わかった」

それなら、とても心強い。


私の伯父さんと従兄弟、がいるんだよね。会うのは初めてだけど、うまくお礼を言えるだろうか。


「彼らと会うのは冬宮ふゆみや家の屋敷だ」

「冬宮家ーーって、鬼の」

「そうだ。鬼の術師を取りまとめる一族だ。ウチの敷地内にあるから、早速行こうか」

鬼の長のお屋敷のある同じ敷地内に、あるの!?


そしてお父さんと合流し、いつものように氷菓ひょうかも付いて来てくれる。


「実家に帰るのは久々ですねぇ」

と、氷菓が不意に呟く。


「実家?」


「冬宮家は私の実家なのです」


「えっ!?」

そう言うことは、氷菓はーー


「私も術師の一員なのです」

「氷菓も、鬼術きじゅつが使えるんだ」

鬼が使う術は人間が使う退魔術に対し、主に鬼術と呼ばれる。


「えぇ、ですからいつでも頼ってくださいな」

「その他武術も嗜んでいるから、氷菓は侍女兼護衛だな」

と、鬼灯。


「ご、護衛っ」

「えぇ」

氷菓はとても頼りになるけれど、護衛も務めてくれていたのだ。そう言えば、街に出た時も声を掛けてきた男のひとたちを追い払ってくれたっけ。


「氷菓ってかっこいい」

「あらあら」


「なっ」

素直に感想を言ったのだが、鬼灯が何故かムッとする。


「鬼灯が嫉妬するほどの実力と言うことだよ」

そう言って、お父さんは涼しく微笑んでいた。


そして鬼灯のお屋敷から徒歩数分で冬宮家のお屋敷についてしまった。


「近いんだ」

「えぇ。ですから何かあった時に本邸と互いにすぐに連絡を取り合って対処できるのですよ」

「そう言う意味もあったんだね」

「えぇ」


そして冬宮家の門をくぐれば、術師や使用人と思われる鬼たちが出迎えてくれる。氷菓に親し気に挨拶するひともいて、やはりここが氷菓の実家なのかとしみじみと感じる。


「お待ちしておりました。鬼灯さま。どうぞこちらへ」

そして使用人に通された間には、既に数人が腰掛けていた。


「どうぞ、鬼灯さまと篝さまはこちらへ」

グレーの髪にアイスブルーの瞳、青い角を持つ男性がそう言って席を示してくれる。鬼灯だけではなく、私も?

鬼灯に続いて席に着けば、お父さんと氷菓がその傍らに腰をおろしてくれる。


「篝、この親父が冬宮の当主だ」

不意に紹介され、ハッとして見やれば。


「ははは、鬼灯さまったら。篝さま、私が冬宮家の当主、氷扇ひせんです。よろしくお願いしますね」

はははっと笑う氷扇さん。でも何だかその笑みには違和感が。


「篝、あの狸ジジイをあまり見つめると目に悪いから、見ないように」

そう、不意にお父さんが告げてくる。た、狸ジジイ!?


「鬼じゃなくて、狸さん?」


「鬼だよ」

鬼なの?


「酷いなぁ、灯可とうかくん。でも篝ちゃんはかわいらしい子だねぇ」

「ほら、父さん。若い女の子に絡まないの。鬼灯さまが射殺すような目で睨んでいるから」

そう告げたのは氷扇さんを少し若くしたような青年である。


「氷扇の息子の氷月ひづきだ」

そう、説明してくれる鬼灯の目はいつものように優し気である。射殺すような目ーーではないのだけど?


「さて、そろそろ紹介しようか。彼らが夏宮家のご当主とその子息だよ」

そう、氷扇さんが示したのは、向かいに座る父子おやこだった。


「夏宮家の当主のかいと申します」

そう述べたのは、水色の髪に青い瞳の優し気な男性だ。何となくお父さんと雰囲気が似ている。


「そして鬼灯さまには先にお会いしているとのことですが、改めて。私の息子のそらです」

「その節は我が一族を救っていただき、とても感謝しております。鬼灯さま」

そう当主の海さんに続いて一礼したのは、杏子あんずちゃんと同じくらいの年ごろの男の子で、水色の髪に青い瞳を持っている。


「あぁ、お前たちが元気そうで何よりだ。今回は篝に会いに来たのだったな」

「はい」

そう、海さんが頷けば、海さんと空くんの視線が私に向く。


「彼女が篝だ」

ペコリと頷けば。海さんがホッとしたような笑みを見せてくれる。


「本当に、凜にそっくりだ」

お母さんに、私が。そう言えば前にもそう言われたっけ。


「その瞳は代々夏宮家に多い色なのですよ」

「この、瞳が」

髪はお父さん似で、瞳の色はお母さんからもらったんだ。両親からそれぞれの色をもらったことが、改めて嬉しく思える。


「篝、今まで助けてやれずに済まなかった。結局我々は何もできず、鬼に力を貸してもらうしかなかった」

そう言うと、海さんが頭を下げてくる。


「その、頭をあげてください!私は鬼灯に出会えてっ、それに」

今、とても幸せだから。きっと、海さんたちだって苦しんできたはずなのに。

「けれど」


「篝はこういう子なんです。凜に似て、優しく育ってくれました」

お父さんがそう告げると、海さんは顔を上げ、ホッとした表情を浮かべる。


「あ、あの。ペンダントっ!これ、ありがとうございました!」

そう言ってお母さんのペンダントを見せれば。


「家のものに話は聞きました。大切にしてくださいね」

「は、はい!」

胸元で、ぎゅっと青い玉を抱きしめる。


「あの、また会えますか?」

「えぇ。篝が望むのなら」

そう、海さんが言うと、空くんも頷いてくれた。


「その時は、お、お母さんの話を、聞いてもいいですか?」

「えぇ、もちろんです。篝は私にとっても大切な姪っ子ですから」

「あ、ありがとうございます!」

お母さんの実家の、伯父と従弟との出会いはとても温かいものだった。まだまだ復興途中とのことで短い対面にはなったけれど、またいつか会った時は、お母さんの話をたくさん聞きたい。そう、感じた出会いだった。




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