お休みの予定
朝食が終われば鬼灯にお父さんのお屋敷まで送ってもらう。鬼灯はお仕事に向かい、私は氷菓に付き添ってもらい、お父さんにお勉強を教えてもらう。
今日は鬼の社会のことを教えてもらっていたのだが。
「お姉ちゃんっ!」
そこに杏子ちゃんが飛び込んできた。
「杏子ちゃん?」
「お姉ちゃんもここで勉強してるって聞いて、飛んで来たの!」
そう言って、杏子ちゃんが隣に座り、腕にぎゅっと抱き着く。
「杏子ちゃんもここでお勉強をしてるんだよ。他の習い事もあるから週3くらいかな」
と、お父さん。
「お姉ちゃんがいるなら毎日でも来たい!」
「こらこら、他の先生もいるんだから」
「でもー、う~ん。他のとこだとお兄ちゃんが独占するんだもんっ!叔父さまのところなら、お兄ちゃんが文句を言っても堂々と独占できるでしょ!」
独占?まぁこうして仲良くしてくれるのは嬉しいのだけど。
「ふふふ、確かにそうだね。まぁ、こちらとしてはお勉強にやる気を出してくれればいいのだけど」
「はいはーい、ありますっ!」
杏子ちゃんが元気に手を挙げると、お父さんが苦笑気味に頷いた。
お父さんのところでは、杏子ちゃんとも一緒にお勉強を教わったり、一緒にお茶をしたりしながら過ごしている。
そして鬼灯の仕事が終わる時間になれば、鬼灯が迎えに来てくれる。
「篝、待たせたな」
「鬼灯」
「むっ、今日は早くない?」
杏子ちゃんが口を尖らせるが。
「いいだろう。篝と少しでもくっついたいたい」
そう言って鬼灯が私を抱き寄せる。ま、またくっついていたいって。
「お兄ちゃんばっかりずるい!」
「お前も俺のいない時間に堂々とここでくっついているだろう。知っているんだぞ」
「ふんっ、叔父さまに頭上がらないくせに!」
「あ゛ぁ゛?」
「ちょっ、ケンカはっ」
「まぁまぁ、篝。大丈夫。ケンカするほど仲が良いというでしょう?」
と、お父さんがのほほんと告げる。男兄弟がいたことがないのでわからないが、そう言うものなのだろうか?
「とにかく、篝は俺が連れ帰る」
「むーっ」
「あ、杏子ちゃん、また来週ね」
明日はお休みで、好きに過ごしていいと聞いている。鬼灯はお仕事だから自ずとお父さんのところに遊びに行くということになるかと思っているが。
「あ、そうだ。お姉ちゃん明日お休みだよね!一緒にお買い物行こうよ!」
「お、お買い物?」
「ダメだ!」
しかし鬼灯が一蹴する。
「何でよー!私がお姉ちゃんと行きたいんだから、お兄ちゃん関係ないじゃん!」
「篝は俺の魂の伴侶だ。勝手に連れ出すな」
「まぁまぁ、いいでしょう?篝にも街を見て回って欲しいと思っているし」
お父さんの助け舟に、杏子ちゃんがぱあぁっと顔を輝かせる。
「んなっ、じゃぁ、明日は仕事は」
「こらこら、鬼灯はちゃんと仕事をしなさい」
「だが、篝をひとりで外に出すなどと」
「私が一緒だもん」
「お前に何ができる」
あぁ、またふたりの間にバチバチとっ
「氷菓についていってもらえばいいでしょう?元よりそのつもりで氷菓を侍女として付けたんでしょうに」
「うっ」
確かに、氷菓が一緒なら心強い。
あ、でも。
「あの、私お金を持っていなくて」
お買い物、できない。
「金なら自由に使えばいい。なんでも好きなものを買うといい。支払いは氷菓に任せれば全てやっててくれる」
「はい、もちろんです」
いや、自由にって。その、どういう?
「まぁ、今回は市場の仕組みも学ぶという意味で、実際にお支払いもしてもらいましょう。お金ならお父さんがお小遣いをあげるから」
お、お小遣い!?
「いや、だが」
と、鬼灯が口ごもるが。
「お父さんは娘にお小遣いを上げる特権があるからね」
「ぐっ」
そう言うものなのだろうか。
「でも、お金を入れるお財布が」
持っていないのだが。
「では、最初にお財布を買いましょうか。お小遣いは私が預かりますから」
「う、うん。お願い、氷菓」
「えぇ。では明日はお買い物で」
「お姉ちゃんとお買い物ー!」
「うぐぅっ」
鬼灯は悔し気だったが、私は初めてのお買い物にドキドキしていた。




