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浄化の炎

※シリアス回

※ゲス姉注意

※ヒロインが浄化の炎で焼かれる描写があります

※ラブコメまでもう少々お待ちくださいまし


ここは、人間と鬼と妖怪が住まう世界だ。


このさくくにでは、人間と鬼が共に住まう。人間の王族が治めるこの国の中でも、鬼は特別な存在であった。鬼は鬼で国内に多くの居住区を作り、そしておさを中心にして纏め上げられている。


人間の王政の国が何故それをゆるしているのか。それは、人間だけの力では数多の大妖怪とは渡り合えないからである。人間の退魔師たいましも存在する。だがそれでは足りない現状がある。


だからこそ、国と言う括りの中で暮らさず、長を中心として暮らす鬼に特権を与え、国で暮らしてもらい、その分守ってもらっているのだ。


鬼は人間たちの国々の中には、今やなくてはならない存在なのである。


しかしながら、人間の退魔師はそれをよしとはせず、時に鬼に尋常ならざる嫉妬を抱いている。私、かがりが暮らしているこの春宮はるみや家もその退魔師の一族のひとつで、咲の国の人間の退魔師一族の中では随一の実力と権力を誇る。


その当主の娘として暮らしながらも、使用人のように、いや使用人からも卑下される私は、いつものように雑用をこなしていた。そんな時、不意に高笑いが聞こえ、今日も来たかと溜息をつきたくなったが、溜息はつかない。つけばまた()()の逆鱗に触れてしまうから。


私はげっそりしながらも、彼女に向かって平伏する。


「相変わらずみすぼらしいこと」

鈴の音のような声でせせら嗤う彼女は、私のアッシュブラウンの髪を乱暴に引っ張り、頭を上に上げさせた。


目の前にあるのは、ダークグレーの髪に紫色の瞳を持つ絶世の美女。この春宮家の長女で、春宮家一の霊力を持つ特別な存在・光子ひかりこだった。


私と目が合った彼女は、次の瞬間その美しい顔をゆがめる。


「誰が私と目を合わせていいと言ったの?霊力もないすっからかんの役立たずが」

そう言って光子は私の腹を足で蹴り、突き飛ばした。


痛みで腹を押さえるが、痛がる声を必死に抑えた。勝手にしゃべれば、またオシオキをされるから。


彼女の言動は理不尽だ。だが、この家では彼女が一番で、彼女が至高の存在なのだ。春宮家の当主の娘として暮らしていながら、霊力を微塵も持たない私が、口答えすることなど許されない。


「ははは、もうよさないか。光子。また使えなくなったらどうするんだ?」

彼女の隣に並び、そんな呑気な声を発したのは、光子の婚約者。この咲の国の王太子の桃矢とうやであった。


輝かんばかりのブロンドヘアーに金色の瞳。更にはその端正な顔立ちは世の女性たちを魅了する。そんな美青年の桃矢は、プライドの高い光子にとって至高の婚約者であろう。


彼はいつもそうやって、姉の光子の隣で笑いながら飄々とするだけ。決して私のことは助けない。彼にとって大事なのは、光子の美しい顔とそして春宮家の優秀な退魔師の血を王家の中に入れることなのだから。


万が一プライドが高く我儘な光子が婚約なんて嫌だとごねれば、春宮家の力なら無理矢理婚約解消や、王家に不利な条件を飲ませることもできるのだから。それほどまでに春宮家の力は()()()()()()強かった。無論鬼には遠く及ばないが。


「そうだ、今日はいいものを見せてあげるわぁ、役立たず」

そう、光子がにやぁっとほくそ笑む。その瞬間、光子の掌の上に青い炎が顕現する。な、何をされるの?ビクビクと身体が震える。


「脅えなくても大丈夫よぉ、役立たず。これは浄化の炎。この私自らがその役立たずを浄化してあげる。さぁ、燃えよ」

そう、光子が唱えた瞬間、掌の上の浄化の炎がふっと消え、そして目の前が青い炎に覆われた。


「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁ――――――っっ!!!」



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