あの日、流れ星を一緒に見た人は今どこにいるのかな
童話じゃないけど、よかったら、どうぞ。
18歳の冬だった。
ペルセウス座流星群が今年は凄いと、ニュースでやっていたので友人の車に乗って見晴らしのいい高台の公園に行った。
同じサークルの仲良しグループ。
気の置ける仲間たち。
春に大学に入ってから知り合ったばかりなのに、地元の友達よりも気が合った。
わくわくしながら車を降りると、同じことを考えて星を見に来た人たちがたくさんいた。
持ってきたレジャーシートを芝生の上に敷いて、四人で頭を真ん中にして寝ころんだ。
小さな流れ星が空を横切るのを夢中で数えた。
「あ、今の見た? 長かったよ」
「見た見た。こんなにたくさん見られるなんて、思わんかった」
「ね、星が流れると、人が死ぬって話、聞いたことない?」
「あ、その話知ってる」
「今の流れ星って、結構大きかったね」
そう言っているそばから、もっともっと大きくて長い流れ星が、わたしたちの上を通り過ぎて行った。
言葉を失った。
みんなも黙ってた。
――どれだけの人が死んだんだろう?
そう考えて、わたしたちは怖くなっていた。
頭に過ったのは、テレビ越しにしか知らない戦争。たくさんの死者。
(戦争がなくなりますように)
(世界が平和になりますように)
(みんなが幸せになりますように)
流れ星に必死にそう祈った。
大学卒業後、わたしたちはバラバラになった。
仕事が忙しくて、なかなか会えなかった。
会いたいね。そのうちまた会おうね。
約束を先延ばししているうちに、世界中に新型コロナウィルスが広がっていった。
たくさんの死者が出た。
わたしは、今、一人で夜空を見上げている。
流れ星を探しながら、あの日見た大きくて長い流れ星を思い出した。
あれ以来、あんなに大きな流れ星は見ていない。
今年また、大きな流れ星がいくつも見られるのだろうか。
今はもう、人が死ぬと星が流れるとは思っていないけど、あの日、一緒に流れ星を見た人たちの願い事は、ちゃんと叶ったのかなと考えることがある。
わたしの願い事はまだかなっていない。
世界のどこかで争い事が起きている。
モニター越しにしか知らない世界で。
だから、わたしの願い事は、今も変わらない。
(みんなが幸せになれますように)
星がたくさん降る夜は、わたしもたくさん祈っている。