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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

すばらしい異世界召喚

作者: 朱花 梧依

 金目かなめ幸人ゆきとが目を覚ますと、そこは知らない場所だった。

 いや、正確には“目を覚ます”という表現は不適切かもしれない。

 目を閉じたときに映るまぶたの裏側の真っ暗な世界とは違う、真っ白な世界。どこに視線を向けようとしても、カラダが動くことはなく、その自らのカラダすらも認識ができない。


『なんだ……これ……?』


 いつもであれば、聴覚が自分が口に出した言葉を聞き取るはずなのに、今はそのような感覚がない。そもそも口を開いたという感覚すら感じられなかった。

 ――カラダがない?

 幸人がありえないような考えに至ったとき、どこからか声が響く。


『識別名、カナメユキト。あなたは異世界に召喚されました』


 に直接語りかけているかのような女の声。


『は……?』


 彼女が発した内容に、幸人は思わず言葉を失った。


『召喚に際し、あなたにはいくつかの特別な贈り物ギフトが与えられます――』


 困惑する幸人をよそに、女は無機質な声で淡々と話し続ける。

 ――異世界召喚って、あの異世界召喚だよな……?

 ブラック企業にこき使われながら、うだつの上がらない生活を送っていた幸人は、日々の疲れを癒す娯楽として、ネット小説で流行っている異世界召喚モノの話をよく読んでいた。そのため、彼は現在の状況をなんとか受け入れることができた。まさかこんな物語のような展開が自分の身に降りかかるとは思っていなかったが。

 幸人は何度か女に質問をしようとしたが、一切聞き入れられることなく、一方的に説明が為されていった。


『――肉体の再生後、しばらくのあいだは感覚に違和が生じる可能性もありますが、一過性のモノなので問題はありません。では、これより異世界召喚を開始します』


 長いようで短い説明が終わり、いよいよ召喚の段になった。

 これが夢なのか、それとも現実なのかはわからない。しかし、夢であれ現実であれ、幸人が望んでいたことが目の前で起きている。このまま望んでいる通りになっていけば、ネット小説の展開をなぞったような流れになってくるはずだ。異世界では幸人が好きなエルフ美少女などが出てくる確率は高いだろう。

 もしかしたら、ブラック企業で死にそうなぐらい働かされていた幸人に、神様が慈悲を与えてくれたのかもしれない。などという考えが頭に浮かび、自然と幸人の期待感は高まる。

 ――地球では散々こき使われたんだから、もう誰かの下で働くのなんてまっぴらだ。向こうの世界では美少女を嫁にして、どこか静かな土地でスローライフでも送ろう。せっかくチートも貰ったしな。


『あなたの冒険に、幸あらんことを』


 女が無感情にその言葉を発した瞬間、幸人の視界が開け――。


 

 遠くのほうから聞こえてくる、鳥の鳴き声のような甲高い声で、ユキトは我に返った。

 そこは、森のなかだった。

 うっそうと茂った木々に囲まれ、あたりは暗澹とした暗さを醸し出している。


「たしか、東のほうに行けば街があるって言ってたな」


 繰り返し手を握ったり開いたりして、自分の両手の感触を確かめながら、ひとりごちる。日本で暮らしていた時と同じような細腕。あまり自分のカラダが強くなっているとは思えない。

 ――まあ、いきなりムキムキになっていても困ったけど……。

 ユキトは東を目指して歩き出す。

 方角はなぜかわかる気がした。なんの道具もなしに方角を察知できるのも、女が言っていた能力ギフトの一つなのかもしれない。人間方位磁石といったところか。

 なんて地味な能力だ! と突っ込みたくなったが、実際役に立っているので、ユキトは何とも言えない気分になる。

 他には何かあるだろうか。と、歩きながら思案をめぐらせる。


「あ! そういばあれを試してなかった」


 小説なんかで主人公が異世界に行ったら必ずやっているお約束。

 手を前に突き出し、ユキトはお決まりの文句を唱えた。


「ステータスオープン!」


 …………。

 格好をつけたまま固まる幸人。

 しかし、一向にステータスウィンドウが現れることはない。


「ま、そういう世界ってことか」


 気恥ずかしさをごまかすようにそう呟いていると、視界の端に何かが映った。

 それは、鹿のようなナニカだった。

 だが普通の鹿と違って、幾重にも枝分かれした巨大な角が何十本も生えていて、明らかに人間よりもカラダがでかい。


「魔物か? ちょうどいいや。魔法を試してみよう」


 少し距離を置いてこちらの様子をうかがうように見つめる魔物に手のひらを向けながら、ユキトは『ファイヤーボール』とつぶやく。

 ステータス画面が出なかったこともあって、あまり期待はしていなかった。どうせ魔法もないんだろう。そんな投げやりな考えで、思いついた魔法を言ってみたのだが――。

 カラダから腕を伝って、力が抜けていく感覚に襲われる。と、同時に、視界が光に包まれ――、

 ドンッ!

 何かが爆ぜるような、大きな轟音が響きわたる。肌を焼くような熱風が吹き上がり、辺りを土煙が覆った。

 ユキトは土煙が晴れた先を呆然と見つめる。地面を深くえぐりながら進み、魔物がいたところに巨大なクレーターを作り出したそれは、ファイヤーボールというよりは、バトル漫画に出てくるビームのようだ。

 あまりの威力に立ち尽くすユキトの傍らに、ぼとっと何かが落ちた。ソレを見て、ユキトは思わず顔をしかめる。

 ぷすぷすと肉が焦げたようなにおいを漂わせる魔物の頭部。何本も枝分かれして立派だった角はいくつかが無惨に折れてしまっている。


「南無」


 何が起きたのかわからない、と言うように目を大きく見開いたまま絶命している魔物に手を合わせ、ユキトは角を掴んで頭部を拾い上げる。

 ――街に冒険者ギルドみたいなところがあれば、高く売れるかもしれないしな。それにしても、あんなヤバい魔法だとは思わなかった……。

 いろんな意味で心臓をバクバクと高鳴らせながら、ユキトは街を目指す。

 彼が歩いた地面には、魔物の巨大な頭部を引き摺った跡がまっすぐに伸びていた。

 


 ユキトがたどり着いたのは、石の外壁に囲まれた、小さな街だった。

 ――やっぱ、冒険者ギルドってあるんだな。

 彼は大きな石造りの建物を見上げる。


「すみません、わざわざ案内させてしまって」


 魔物の頭を引き摺って森から歩いてきた彼は、街の入り口を守っていた衛兵の若者の案内で、冒険者ギルドの前まで来ていた。


「いえいえ、気にしないでください! あなたは街の冒険者たちが手を焼いていた森の主を、たった一人で倒された英雄なのですから」

「ははは……、ありがとうございます」


 ひっそりとスローライフを送るつもりが、いきなり英雄扱いされてしまった。ユキトは内心で肩を落としながら、持ち場に戻っていく兵士を見送る。

 地球では草食動物で被捕食者だった鹿が、まさか異世界では森で一番強いモンスターだとは思っていなかった。腰を抜かすほどびっくりしていた衛兵たちの反応を見る限り、ギルドでも同じような展開が待っているかもしれない。

 しかし先立つものがなければ生きてはいけない。せっかく棚ぼた的に手に入った高額換金アイテムをその辺に捨ててしまうのはもったいない気がした。

 ――やれやれ、あまり目立ちたくないんだが。

 大きなため息を吐いて、ユキトはギルドの扉を開いた。

 酒場のようになった薄暗い室内には多くの人がたむろしていた。テーブルに座る人々の視線が、一斉に入り口に立つユキトへ向けられる。がやがやと賑やかだった室内の空気は、一気に殺伐としたものへと変わる。

 ユキトは刺すような視線を無視し、奥のカウンターに立つ受付嬢のもとへ歩を進めた。


「冒険者ギルドへようこそ。本日はどういったご用件でしょうか」


 ふわふわとカールした長い茶髪の上に、ちょこんと小さな帽子をかぶった可愛らしい受付嬢が、保護欲を誘うような笑みを浮かべながら訊いてきた。

 こわもての男たちに埋め尽くされたギルドの中でも自然な態度でいられるなんて、よほど肝の座った美少女だな、とユキトは思う。


「冒険者登録をお願いします。あと、これの買い取りも」

「これは……森の主っ!?」


 台の上にどんっと置かれた魔物の首に、少女は驚嘆の声をあげる。様子をうかがっていた冒険者たちも「マジかよ!? あいつが……?」だとか「あんなひょろい奴が倒せるわけあるかよ……」と、ひそひそと会話をする。

 受付嬢は「で、では鑑定のほうをさせていただきます」と言って、カウンターの奥から出てきた何人かの職員と一緒に魔物の首を持って、別の部屋へ行ってしまった。

 その予想通りの事態に、内心でやれやれとため息を吐き、ユキトは受付のカウンターを離れて、空いていたテーブルの席に座って待つことにした。


「よう兄ちゃん、良いもん拾ったな」


 森の主の生首にいまだ騒然とする中、一人の男がユキトの肩に腕を回しながら話しかけてきた。

 男は耳元で囁くように言葉を続ける。


「で、誰がやったんだ?」


 男の口から洩れるアルコールのニオイに、ユキトは思わず顔をゆがめる。


「自分で倒しましたよ」

「嘘をつくんじゃねえよ。コイツには俺もさんざん痛い目見せられたんだ。おめえみてえなヤツが殺せるはずねえ。盗んだんだろ? お?」


 回した腕でユキトのカラダを揺すりながら、男はニタニタと薄ら笑いを浮かべる。


「何が言いたいんですか?」

「なに、悪い話じゃねえよ。きっとお前さんはこれからたいそうな金を抱えることになるわけだが、そんな金を持ってちゃあ良からぬことを考えてるやつらに狙われちまうだろ? だから、分け前を半分貰う代わりに、俺が守ってやるって言ってるんだ」

「結構。自分の身は自分で守れるから大丈夫ですよ」

「おいおい、そんなこと言っちまって良いのか? いつどこで襲われちまうかわからねえぜ? こんな軟なカラダじゃあなんも守れねえだろ」

「はあ……」


 ユキトは男が気に入らなかった。男の放つ体臭が、口臭が、頬を撫でる腕毛のごわごわとした感触が、男のすべてがユキトの感情を苛立たせた。

 だから――、


「あん?」


 ユキトは人差し指を男に向ける。


『ウィンド』


 ぱんっ!

 男は弾けた。


「うえっ、きたねえ花火だぜ」


 この世界における魔法は、イメージによって現象を操作できることを、ユキトは街にたどり着く道中で理解していた。

 今回は男の内部から空気を膨張させて爆発させた。そのため、はじけた男の臓物やら血やらがあたりに飛び散り、ユキトも少なからず被ってしまったのだ。肩に残った男の腕をテキトーに床に捨てながら、ユキトは顔をぬぐう。


「あの……」


 すぐ近くから声がかかった。


「あ! 汚してしまってすみません……」


 ユキトは先ほど建物の奥に引っ込んでいった受付嬢が、すぐそばに立っていたことに気付いた。おそらくユキトのことを呼びに来たのだろう。

 飛び散った血が彼女の頬にもついてしまっていたため、ユキトは慌てて立ち上がり謝罪する。

 頭を下げたユキトに、少女は慌てたように両手を振る。


「い、いえ、全然かまいません!」

「ですが……」

「ほんとうに、全然大丈夫なんです。以前から素行の悪さが問題になっていた方でしたし、汚れは拭けばある程度落ちますから!」

「それなら、ありがとうございます」


 ユキトが照れ隠しの笑顔を浮かべると、受付嬢の少女は「あ、あの……」とユキトに顔を近づけ、「お強いんですね……」と、上目遣いで頬を赤く染めながら言った。


「顔が赤くなってますけど」

「ひゃっ!?」


 少女が風邪でもひいたのだろうかと心配な気持ちになったユキトは、近づいてきた彼女のおでこに手をあてる。すると少女はさらに真っ赤になって飛退いた。


「大丈夫ですか?」

「な、何でもありません! こほんっ、それよりも冒険者登録の準備ができましたので、カウンターの前までお越しください」

「おお、ついに!」


 ついつい興奮してしまったユキトに、少女は「?」と小首を傾げる。ユキトは誤魔化すように笑みを浮かべ、「こっちの話です」と言った。


「では、こちらへ」


 少女は深く追求することはなく、にこやかな笑みを浮かべてから背中を向け、ユキトを導くように先に歩きだした。

 冒険者といったら異世界の定番。ここからが物語のスタートと言っても良い。

 スローライフをおくるための軍資金を稼ぎ、美少女をゲットして、幸せな毎日を過ごすんだ。もう、誰にも邪魔させない。邪魔するやつは全員チートで殺してやる。

 決意を固め、ユキトは歩き出そうとして――、


「はれ?」


 そのまま床に倒れ込んだ。

 なにかにつまずいたんだろうか? そう思って起き上がろうとするが、足が踏ん張れず、うまく起き上がれない。

 うつ伏せになったまま、なんとか足元を確認しようと顔を向けると――、


。俺の足」


 二本の足が、しっかりと床を踏み締めていた。


「え?」


 理解が、追い付かない。


「キャーッ!?」


 耳をつんざく少女の悲鳴。そこにきて、ようやくユキトは異常に気付いた。


「お、俺のあ――」


 足が。と、続くことはなかった。

 ――なんで、回ってるんだ?

 重力が失われたように、ユキトの世界がふわふわと回りだす。

 口元に手をやり、なにかを指差しながら叫ぶ少女。周囲で唖然とする冒険者たち。近づくギルドの天井。最高潮に達した浮遊感は終わりをつげ、重力に敗れて落下する視界がソレを映し出す。

 直立不動の両足。倒れ伏す胴体。その胴体の首から上は、存在しなかった。



 ――ユキトの意識は途切れた。





『こちら第二小隊。アジトの制圧、及び綴り手コンダクターの拘束に成功』

『第一小隊。勇者スレイヤーを無力化。これよりモブの掃討に入ります』


 脳内に届くいくつもの情報を精査しながら、男は指示を飛ばす。


「首だけになっても再生するケースがある。燃やせ」


 視覚共有によって網膜に直接映し出された各地の作戦映像から、旧時代的な作りの街に巨大な火柱があがったことを確認する。火の海に包まれた街並みを眺めながら、男はふところからレトロな紙巻きたばこを取り出し、火をつけた。


「燃やせとは言ったがなあ……。なにもあんな火柱をあげる必要ないだろ。祭りじゃないんだからよ」


 紫煙を立ち上らせながら愚痴をこぼすと、傍らに立っていた副官の男が口を開いた。


「久々の大規模な作戦なのですから、実働部隊の彼らにとっては祭りのようなものですよ」


 副官の言葉に、男はふんっと鼻をならす。


「これだから亜人いせかいのクソどもは」

「我々に従順なだけマシでは」

「まあ、処分された奴らよりはな」


 遠く離れた高層ビルから、実働部隊が亜人どうぞくを虐殺するさまを眺めながら、男たちは皮肉気に笑みを浮かべた。


 多元世界からの物体のテレポーテーション、いわゆる『異世界召喚』が可能となって久しい時代。

 当初この技術は、人権を持たない、消耗可能な兵士を確保できることに注目した世界各国の軍事研究機関によって飛躍的に発展していった。異世界人を『亜人』と称し、「鉄を打つがごとく、木を削るがごとく」という言葉をまことしやかに囁かれながら、召喚時に体組織の組成を組み替えることによって超人的な能力を与える技術や、前頭葉、特に理性的な働きを促す前頭前野と、闘争本能を司る扁桃体への電気刺激によってマインドコントロールを図る技術など、多岐にわたる実験が行われてきた。

 しかし、時代の流れとともに国家という枠組みが解体され、世界連邦政府が樹立するにあたって、混沌と混乱の中で多くの技術が闇市場に流れることになる。

 技術の最適化や装置の小型化によって、国家レベルでの運用が必要だった時代とは違い、金さえ積めば手に入るようになったことで、亜人は金持ちのステータスへと変わった。


 どれだけの数を有しているか、どれだけ強力な亜人を作り出せたか、どれだけの亜人を使いつぶせるか。時間と金を持て余す資産家は、様々な非人道的実験によって培ってきた技術を利用して、亜人を使った道楽にふけった。

 その中の一つに『箱庭遊戯』という遊びがある。

 広大な土地を一つの世界に見立てて作り上げ、記憶を書き換えた亜人を放し飼いにし、『綴り手コンダクター』と呼ばれる管理者が作った設定のもとに生活をさせる。その、時間と労力を費やして作り出した箱庭に、主人公役として新たな亜人を召喚することで発生する出来事を観察する遊びである。時にドラマティックに、時にグロテスクで猟奇的に、時に過激なポルノとして出来上がるこれらの映像はネットワーク上に中継され、新たな娯楽として多くの人々から楽しまれるようになる。

 その中でも、冒険系サーガと呼ばれるジャンルでは、理性を緩くされた主人公『勇者スレイヤー』が、無軌道で野蛮な行いをすることから、一部の好事家や熱狂的なファンから熱い支持を受けていた。

 だが、近年に至り、亜人が飼い主の管理下を離れて箱庭から逃げ出し、踏み入れた人間社会で凶悪な犯罪が行われる事件が多発し、社会問題となったことで状況は一変する。

 当初から言われてきた「強化された肉体や超能力まほうを有する危険生物が、人間社会を脅かすのではないか」という考えが広く世論に蔓延し、デモや暴動によって亜人の排斥を訴える気運が高まっていった。


 新暦七六年。

 個人による亜人の召喚は禁じられ、社会秩序を乱すような危険な亜人を発見次第即時殺処分を可能とする法案が世界連邦議会において可決された。これに伴い、連邦政府は下部機関である平和維持機構の外局、世界公安委員会に新たな直属組織を設立された。

 凶悪な亜人犯罪に対抗すべく、亜人によって構成された実働部隊。

 世界公安委員会直属、特殊転移犯罪対策課。通称、番犬部隊ケルビウム


「作戦終了。各部隊は速やかに帰投せよ」


 ダークウェブで行われていた『箱庭遊戯』の摘発を終え、男は実働部隊の亜人たちに撤収支持を下し、椅子の背もたれに背中を深くあずけた。

 紫煙をくゆらせながら、『勇者スレイヤー』の青年の顔を思い出す。大きく目を見開き、わけもわからないまま絶命していった、滑稽なあの顔を。

 世界の守護者という大任を背負った男は、祈るように呟く。


「主の与えられし試練に、感謝を――」


 深い、深い笑みを浮かべながら。


「すばらしい異世界に、感謝を」

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