貴族様なんて嫌いだII
「独学だと?
魔法は貴族たちが教養の一つとして学ぶのが一般的で、庶民は触れる機会はないだろう。お前のような小娘が、どのようにして学んだというのだ?」
「孤児院を営んでおりました老夫婦の....主に神父様から魔法教育を受けておりました。後は、魔法書や魔法医学書などで学びました」
「魔法書だと?そもそも、お前は文字が読めるのか?」
「初歩的とはいえ、魔法教育を受けた身です。読み書き計算の教育は受けなかったと思いますか?」
「チッ...!推薦者のトックス様との関係は?」
「何もございません。私は顔も存じません」
「ふざけているのか!!そんな話を誰が信じるというのだ!!」
「ですが、それが事実でございます」
嘘みたいな話だが、本当の話だ。
私は孤児院で育ち、そこで金とコネと魔力持ちという"体質"を持った者が受ける魔法教育を受けた。
そして魔法薬などに興味を持った私は魔法薬も販売する診療所を営んでいたら、お偉いさんがやって来て騎士団へ推薦された。
という訳である。
「これは偽物だろう。今なら役所には突き出さないから、帰れ!」
しっしっとまるで犬を追い払う仕草をする門番。
(面倒だな。本当に帰ってやろうかな)
本当なら帰りたい。
だけど平民の『門番に偽物と言われたから、帰った』という言葉と貴族の『そんな事は言ってない』という言葉。
どちらに重さがあるかなんて、明らかだ。
真偽など関係ない。
「どうした?早くここから去れ」
「…先程こちらを偽物とおっしゃいましたが、あなた様は偽物であると証明出来るのですか?」
「なに?」
「ですから、あなた様は偽物だと決めつけられるお立場なのかとお聞きしました。それともこの受験資格証明書は、ただの小娘が偽物を作成出来るものですか?」
「黙って聞いていれば生意気な!俺はマリン伯爵家の三男だそ!!」
あぁもう!!!本当に面倒臭いな!!
だから、貴族様は嫌いなんだよ