娼婦暴行事件
「おい、もっと娼婦ぽくできないのか?」
「娼婦ぽくってなんですか?」
「娼婦ぽくは娼婦ぽくだ。色気がない」
魔法通信で容赦なくダメ出しをしているのは、エーブラムだ。
(無茶を言う)
それにしても、つくづく思う。
孤児院育ちの私は自分で稼ぐ術を持たなかったら、このような生活をしていたはずだ。
本当に魔法と剣、そして読み書きを教えてくれた孤児院の老夫婦には感謝しかない。
「それにしても、人通りがないな。この時間はいつもなのか?」
「いいえトックス様。見るところ、男性はいますが女性がいないです。おそらく事件を恐れているのでしょう」
「もうすぐ夜になるしな。女性を狙うなんて恐ろしい犯人だ」
恐ろしい犯人を素手で倒せると思われている私はなんなんだ。まったく。
「アメリア、人が来るぞ」
「ちょっとお嬢さん」
「はい?」
「こんな時に立っていたら危ないよ?」
「でも....」
「...なるほど。かわいそうに。
僕がお客さんになってあげよう。さぁ、おいで」
するとエーブラムから魔法通信で指示がとぶ
「確かめろ」
これが親切心から出た言葉のただの客なのか、それとも違うものなのか確かめろという事だろう。
「ぜひ」
アメリアはニコリと笑い、客に寄り添った。




