Phase1-1 日常、非日常
桜咲く4月6日。北原学園大学附属高等学校、通称・北附で入学式が行われた。
その放課後。
男か女か分からないが一応男の、西原リョウはこんなことを考えながら帰っていた。
(早く帰って、牛乳でも飲んで昼寝でもしておくか)
その時、後方から女子が突っ込んで来た。何かを叫びながら。
「リョォォォォォォォォォォウ!」
「うわっ!?」
突っ込んで来て、後ろから抱きついてきたのは……
「いい加減にしてくれよ……周りに人が居なかったからとはいえ、ここは学校だからな?ミユ」
北原ミユ。ここの理事長の孫にあたる。普段は普通の女の子だが、リョウが居る時は、性格が豹変する。その様は、もはや変態である。
「はぁ……はぁ……結構走ったから疲れちゃった。……リョウ、一緒にランデブーでも……」
ミユは興奮している。とにかく息が荒い。走っただけではそうならない程に。
「馬鹿なこと言うな。こんなお前を見られたら、お前どころか、学校の生徒像まで誤解されてしまうぞ」
「はーい。……あーそうそう。リョウに話があるんだった。体育館裏ね」
「はぁ……」
2人はいつもこんな感じだ。ミユの変態言動にリョウが悩まされる。これが日常茶飯事と化している。
(どうせ、『結婚しよ』とか何とかだろうな)
2人は体育館裏に来た。話というのは……
「リョウ、結婚……」
「しねーよ。どうせ、そんなことだろうと思ってたけどな」
リョウの予想通り、ミユが求婚してきた。リョウは呆れている。
そこに、誰かがやって来る。
「またあなた達ね。全く……バカップルという言葉がお似合いだわ」
東郷アヤカ。2人とは面識がある。背が女子にしては高く、髪も長い。
「バカップルなんかではない。それに、お前はどこから湧いてきた?」
「湧くとは失礼な言い方をしてくるわね。その口調、いい加減に治したらどうかしら?」
リョウとアヤカは、とにかく仲が悪い。出会う度に睨み合う仲である。
「まーまー、2人ともそのへんで。喧嘩は良くないよ?」
ミユが2人を宥める。
「そうね。こんな頑固なガキには何を言っても無駄だから」
「なっ!? ガキ!?」
リョウの声が裏返る。
「いや、その見た目……どう見ても子供でしょう?」
「お前な……」
リョウが自分の体を見た。小さい。とにかく小さい。背丈があまりにも小さすぎる。小学生と言ったら、こども料金で通りそうな見た目だ。リョウは、その見た目にコンプレックスを抱いている。だから、ガキなどと言われるのは大嫌いなのだ。
「帰ったら牛乳でも飲んでおきなさい。あと、子供らしくお昼寝でもしておきなさい。では、ここで」
そう言い放って、アヤカは帰っていった。
「考えてることがお見通し……なのか? ミユ」
『牛乳を飲む』、『お昼寝しておく』。少し前にリョウがが考えていたことである。
「いやぁ……偶然でしょ。というか、本当に帰ったら牛乳飲んでお昼寝するつもりだったの?」
「――――ああ。俺はもう帰る。付いてくるなよ」
リョウの目は死んでいる。リョウが静かに帰ろうとした時――――
「「???」」
謎の地鳴りが聞こえる。さらに、一定の感覚で揺れている。
「地震……にしては変な感じだな」
2人は、地鳴りが聞こえる方向を向く。
その2人の目線の先には、大きな、あまりにも大きな、怪獣みたいな大きさのカマキリが、学校に向かって歩いてきていた。
「リョウ!? 何コレ!?」
ミユが混乱している。何が何だか全くわかっていない。一方で、リョウは……
「持って来ておいて良かったな」
リョウが何か機械みたいなものを鞄から2つ取り出し、両腕に付けた。片方は3つの画面とボタンがあり、もう片方はレバーがついている。
「これを使う時が来るとは思わなかった。使わないだろうと思っていたけどな。ミユ、お前はここから逃げろ」
「あ……うん。分かった」
ミユは、戸惑いながらも少し離れたところに逃げ、リョウを見ていた。
「非日常的な……日々になるかもな」
左腕の機械の、3つあるボタンの内、1番のボタンを押す。すると、リョウを赤い光が包む。さらに、謎の破片が周囲に浮かんでいる。ついでに、炎っぽいものが回っている。
「すぐに終わらせる。面倒臭いしな」
右腕のレバーを倒した。破片がリョウの体に装着され、装甲などを形成する。そして、ヘルメットの透明なバイザーみたいな何かが降りてきて、目元を塞ぎ、ゴーグルを形成する。
「なにこれ……特撮モノの撮影か何かなの?」
ミユは、やはりこの状況を全く理解出来ていない。
白地に赤帯。赤い帯は、若干光っている。
リョウが特撮モノに出てきそうな姿になった。