Phase4-3 閉幕! 文.la繧オ繝ヲ繝ェ縺ョ蜻ス
かなりの日数言い続けた、『衝撃展開』。
大したものでは無いですが……雰囲気は180°変わります。
午後4時。文化祭の閉幕宣言が、サユリによって行われる。
「お疲れ様でした。今回の行事を持ちまして、私、上村サユリは生徒会長の座から離れます。望団の活動は、続けますので。……『爆ぜろ』とか言わないでくださいね?」
とは言え、ステージの前にいる者は皆、「いいなー」だとか、「ずるい」とか言っていた。
一方で、ステージの裏にいたリョウとタクミは、向かい合って話し合っていた。
「狙ってたんだけどなぁ」
「そうか」
「ま、考えても仕方が無い。会長を乱すのも、何するのも、お前が決めることだしな」
「如何わしいことは考えていない。純粋に愛し合う。それだけだ」
「いつまでだ?」
「どちらかが死ぬまでは確実だ」
「幸せにな。くそぅ……」
「本音漏れてるぞ」
タクミは笑って誤魔化した。リョウも、僅かながらに口角が上がっている。そして……
「これ、平和に……終わるよな。非日常なんて起きて欲しくないが……」
リョウは、そう言いながらステージから立ち去った。
アヤカは、ざわつく生徒の群れの中、この光景を快く思っていなかった。
(浮かれている……西原リョウ、あなたは変わりすぎているわ。それだと、仮に会長が…………いや、そんなことは…………やはり、何が起こるかは分からない…………もう考えない方がいいわね。人の恋愛に首を突っ込むのは、気色悪いし)
嫉妬なのか、何なのかは分からないが、何かを諦めたアヤカであった……。
カスミは、木陰でこの光景を見ていた。
(私のものにしたかったから……散々弱みを握って……男子を離れさせたかったのに……後で、このことを言っておこうかな)
締め付けられるような思いの中、今までの自分を悔やんでいた。
――――文化祭が終わる。楽しい楽しい文化祭が。とても平和な文化祭が。きっと伝説となる文化祭が。
そこにいる者は、全員そう思っていた。それも、確定したような話だったからだ。それが、"日常"だから。
「なんだアレ!? カニ!?」
全ては、とある男子のその叫びから始まった。
「嘘だろ……?」
それを見た生徒は、口を揃えてそう言った。
「ここでも……か」
リョウが、その姿を確認した。
「やるしかないようですね……」
サユリも、その姿を確認した。
「何だ!? ……そういう事か」
タクミも、その姿を確認した。
団員全員が、その姿を確認した。
その視線の先には、校舎の屋上に鎮座する"非日常"があった。
『やるぞ。戦闘は俺と、サユリと、タクミで行く。他は、対策拠点室に行って装飾を退かしてから、あの機械を起動させろ』
通信で、全員にその旨を通達した。
「――――3人だが、行けるはずだ。普段よりも格段に小さい。あのムカデよりも、かなり小さい」
「ここで見せつけて、望団の凄さを広めてやる」
「素晴らしい心意気ですね。全力で、倒しちゃいましょう」
3人が、左腕のデバイスの3つのボタンの内、1番のボタンを押す。装甲が、いつものように周囲を回っている。
「「Go! RisingStreet!」」
「ちょ……」
やはり、リョウだけが掛け声を発しないが、3人が右腕のデバイスのレバーを倒した。装甲が、体に着けられていき、気付けばいつもの姿になっていた。
「タツヤ、あれは何なんだ?」
『あれはカニムシっていうね。攻撃すると、恐らく後退するね』
「アドバイスありがとな!」
タクミが、刀を呼び出してそれを構え、その巨大なカニムシへと突っ込んで行った。
が。
「ッ!?!?」
そのカニムシは、タクミを巨大な触肢で殴り飛ばした。
『え!?』
通信機から、想定外の事態に驚くタツヤの声が聞こえてきた。
「タツヤ、落ち着け。何が起こるかわからない。攻撃的になっているに違いない」
『そう……だよね。毒はないし、問題なく戦えるはず……』
「一応言っておくが、このスーツは毒は一切通さない」
『凄い!』
リョウとタツヤの会話は、どこか安心しきった雰囲気だった。
対策拠点室。そこには、戦闘中の3人以外の団員と、ミヅカがいた。
「行けるかな?」
「大丈夫。絶対」
「兄貴達ならやってくれるよ!」
勝利の確信に満ちた対策拠点室であった。
運動場には、もう誰もいない。体育館へと避難が完了している。体育館では、望団の活躍を期待する者しかいない。
「いけるかな?」
「いけるっしょ。いけなかったらヤバいよ」
そこにいる者は、既に勝利を確信しきっていた。
「こういうのは、遠距離戦が有利に働く」
運動場に誘き寄せ、攻撃を開始するリョウ。
「サユリ! 後ろからだ!」
「はい!」
斧で、背後からカニムシに攻撃を仕掛けるサユリ。
「はぁっ!」
全力で振った斧は、カニムシを200m程吹っ飛ばした。
「凄いな」
「やってやったです!」
嬉しそうなサユリ。リョウもまた、嬉しそうだった。
「大丈夫か?」
「こっちの台詞だ。全く……」
「ははは。悪いな」
タクミも戻ってきて、3人体制が戻った。
――――油断していた。この3人は。
――――異変を感じたのは、ここからだった。
「この甲羅っぽいの、めっちゃ硬いぞ!?」
攻撃が通用しない。全く。
そして……
「――――ッ!?」
その一瞬。リョウの目の前に、高速で向かってくる巨大な鋏が――――
(避けられない――!)
――――リョウに直撃した。
飛ばされたリョウが背中から着弾し、運動場の砂埃が舞う。
「リョウ!?」
リョウの元へと駆け寄ろうとするタクミ。しかし。
「タクミくん! 危険すぎます!」
一瞬で振り向くカニムシは、タクミも殴り飛ばした。
タクミは、校舎に叩きつけられるも、どうにか動けていた。
「どうにかしなければ……」
ただ1人、無傷でいるサユリ。
「はぁああッ!!!」
斧を全力で振りかざすも、その硬い甲は、攻撃を受けつけなかった。
「嘘……ですよね?」
怒ったカニムシは、サユリの右腕を蹴った。
「あァッ……! 痛ぃ……です……うぐっ……」
右腕は正の方向から、90°肘から下を向いてしまっていた。痛さの余り、サユリは腕を抱えて蹲ってしまった。
今、運動場には、背中を打ちつけたリョウと、腕を折ったサユリしか居ない。
校舎に叩きつけられて落下したタクミは、デバイスの通信機能を使った。
「援護だ! 誰か来てくれ! 最低2人欲しい!」
『分かった!』
タクミは、この状況を3人だけでは乗り越えられないと察し、待機している団員に、応援要請をした。
対策拠点室。
「何がなんなんだ!? 行ってくる」
真っ先に、ハヤトが部屋を飛び出て行った。
「タクミが心配だから行ってくる」
タツヤも、走って外に出て行った。
この部屋には、女子4人しかいない。
「兄貴……!」
「大丈夫だから……リョウなら……!」
涙目になるミヅカの背中を摩るミユ。
――先程の確信は、既に不安に切り替わっていた。
「ぐぁッ……」
動けないリョウ。カニムシが、リョウのいる方へと向かっていく。
「っ…………」
睨み合いになるリョウとカニムシ。カニムシは、その触肢をリョウの頭に振りかざした。
――――割れた。
――――割れてしまった。
フルフェイスのヘルメットは、口元のあたりから上の部分が、割れてしまった。剥き出しとなった頭部。カニムシはそれを狙って、触肢を開き、頭を潰しにかかった。
動けない。動きたい。しかし、リョウのデバイスは動かなくなってしまった。リョウは、頭部の損傷があった場合、機能を停止するという弱点を思い出した。
(しまった……完全に忘れていた……。自分が作ったからと言って、油断してしまっていたな……)
何度目か分からないが、死を覚悟した。ただ、今回は『まだ生きていたい』という願いが含まれていた。
(サユリと……俺は……愛し合うって決めたのだから…………ここで死んでしまったら…………!)
目から、一滴の涙が滴る。それが、リョウの本音。
その光景を苦しみながら見ていたサユリ。
「リョウくん!?」
サユリは痛みを忘れて、属性の力で即興で作った加速器で、カニムシの元へ。
「俺は……いつもこんな目に遭うのか……!?」
迫る触肢を目の当たりにして、自分の情けなさを悔やむリョウ。
終わる。
終わってしまう。
サユリと愛し合うと決めたのに。
愛することも無く、戦いで死んでしまう。
サユリと、ミヅカと、他の団員を遺して――――
――――その思考を遮る何かが、リョウに付着した。
属性粒子ではない何か。
カニムシの体液でもない何か。
それが、リョウの視界を塞いだ。
それを拭い取る。
拭い取った手には、紅い液体が手の甲一面に付着していた。
また、何かが体に付着する。
体には、紅い液体が大量に付着していた。
さらに、何かしらの物体も、ゆっくりと体に垂れ落ちてきた。
――――その全ては、見上げた所にあった。
「嘘だ……嘘だ……嘘だ…………」
その体を貫く触肢。広げた状態だから、貫いているのは2本分に見える。
火花を飛び散らせるスーツ。
飛び散る紅き血液に、垂れ落ちる腸。
その帯の色は…………銀。
彼女は、彼の身代わりとなっていた――――――――
これで、『N5579FK』は完結。
次回は、ActDespair。Act4ではないです。
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『Despair』の意味は、『絶望』。